【コラム】自縄自縛の文在寅外交

 北朝鮮の「9・9節勝負手」は、予告済みの事件だった。金正恩委員長は新年の辞で、今年の9・9節を「大慶事」、平昌冬季オリンピックを「民族の位相を誇示するよい契機」と規定した。韓国政府を通して「非核化」の意思をちらつかせつつ、平昌に代表団と選手団を送った。北朝鮮の参加に対する好悪の感情はさておき、韓半島(朝鮮半島)の緊張を緩和してオリンピックを成功に導くことを否定はできない。今度は韓国の番だ。民族の位相を誇示させてやったのだから、自分たちの「大慶事」も輝かしいものにしろ-というのが、北朝鮮が突き付けた請求書の中身だ。

 外交とは主導権争いだ。主導権を失ったら引きずられて、捨てられる。8月13日の閣僚級会談で北朝鮮の祖国平和統一委員会の李善権(リ・ソングォン)委員長が行った「貝の殻」発言、そして韓国統一部(省に相当)の趙明均(チョ・ミョンギュン)長官が行った「内気なので…」発言が、構図を正確に表している。主導権を奪おうと思ったら、相手を上回る果敢な発想が必要だ。ひとえに国益と結び付けていかねばならない。北朝鮮の「9・9節カード」を受けて立つ韓国側の勝負手は「8・15カード」だった。北朝鮮がそうしたように、「8・15建国日」を「建国英雄の最大の愛国遺産」として金正恩委員長をソウルに招待すれば、場をひっくり返すことができた。北朝鮮が奇跡的に受けて立てば、現政権の立場からすれば大成功で、拒否したとしても北朝鮮の「9・9節カード」は無力化できた。

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