夏の高校野球が100年以上にわたり紆余(うよ)曲折の多い現代という時代を通して日本人と喜怒哀楽を共にしてきたのも愛着を抱かせる要素だ。夏の高校野球は日本の帝国主義時代の1915年に初めて開催され、24年には今の甲子園球場が建てられた。太平洋戦争のため42年から4年間中断されたのを除き、46年以降は1年も欠かさずに行われている。復活した高校野球はさまざまな伝説を生み、経済復興に余念がなかった日本人たちを癒やし、励ました。
夏の高校野球の観客は2009年から昨年までの9年間、毎年80万人以上を記録している。1990年には92万9000人が観戦した。これによる経済効果も侮れない。関西大学の宮本勝浩名誉教授は昨年の夏の高校野球の経済効果を年間351億円と推定している。
高校野球が人気があるのは、毎年新たな伝説と記録が生まれているからだ。つまり、高校生たちの成長ドラマでもあると言える。強打者だった松井秀喜さんは1992年の決勝戦で5打席連続敬遠され話題になった。現在、日本のプロ野球で最も人気のある選手の1人、松坂大輔投手=中日ドラゴンズ=は1998年の夏の高校野球決勝でノーヒットノーランを達成した。2004年の駒澤大学附属苫小牧高校は北海道代表として初めて優勝し、日本全国を驚かせた。同校は日本でも最も北の地方にあるという不利な点を乗り越え翌年も優勝し、過去6校目の2連覇を成し遂げた。
成人チームの野球とは違い、高校野球が純粋さや闘志で伝説を作ってきたのも甲子園人気に貢献している。『高校野球の経済学』を著した慶応大学の中島隆信教授は「夏の高校野球は最後まで勝負をあきらめないはつらつとしたプレーで観客を熱狂させる」「プロ野球選手ほどの技術はないが、(高校野球には)『高校生らしさ』というものがある」と分析した。このため、高校野球は「日本社会の縮図」という声もある。愛郷心・成長ストーリー・伝説など日本人が好きな要素がすべて含まれているということだ。