韓国軍情報部隊の「戒厳文書」はどのようなものなのか

 機務司令部(韓国軍の情報部隊。機務司)が昨年3月に作成した「戦時戒厳および合同捜査業務遂行案」は、表紙・目次を含めて計10ページほどの文書だ。文書には「衛戍(えいじゅ)令・戒厳宣布事例」「戒厳司令部編成表」「戒厳任務遂行軍編成(案)」「合同捜査本部編成表」など参考資料が添付されている。

 文書は「現状診断」の「状況評価」項に「政界が加勢したろうそく・太極旗集会など、進歩(従北)-保守勢力間の対立が持続」していると記した。「一部保守陣営で戒厳の必要性を主張しているが、国民の大多数はかつての戒厳に対する否定的認識を持っており、戒厳施行時は慎重な判断が必要」という記述もあった。

 続いて「弾劾決定宣告以後の展望」項には、「弾劾審判の結果に不服がある大規模なデモ隊がソウルを中心に集結し、青瓦台・憲法裁判所への侵入・占拠を試みる」だろうという見解、「進歩(従北)もしくは保守の特定人物の扇動で集会・デモが全国に拡散」しかねないという見解が含まれている。

 これについて韓国軍の関係者は「極端な治安悪化の状況を想定したもの」と語った。与党側は「進歩」を「従北」(北朝鮮に追従する)と表現したことを問題にしている。

 さらに文書では、衛戍令や戒厳など非常措置の類型を説明し、▲非常措置発令の要件と手続き▲衛戍令発令時の発布権限-など、措置事案を盛り込んだ。これに関して、市民団体の「軍人権センター」は「タンクや装甲車で地域を掌握し、空輸部隊で市民を鎮圧しようとしたもの」と主張した。文書にはそういった表現はないが、添付された「参考3.戒厳任務遂行軍編成(案)」を見ると、用い得る兵力として機械化師団(6個)、機甲旅団(2個)、特戦司(6個)といった部隊が示されている。

 「戒厳施行」の項目中、合同捜査本部が報道検閲団と合同捜査本部言論対策班を運営することになっている点に関して、軍がメディアをコントロールしようとしたもの、という疑惑も持ち上がった。一方、韓国軍の関係者は「これは現在の戒厳施行令にも含まれている内容」と語った。

 また文書では、戒厳司令官には「陸軍総長」を任命するとなっている。これを巡り、与党側は「当時は李淳鎮(イ・スンジン)合同参謀本部議長が戒厳司令官になるべきなのに、3士(陸軍第3士官学校)出身だから排除された。機務司は陸士(陸軍士官学校)出身者で戒厳司令部を編成し、親衛クーデターを謀った」と主張した。大統領が戒厳を宣言すると戒厳司令官を任命することになっているが、特定の職位の人物が就くと決められているわけではない。ただし合同参謀本部(合参)に関連の部局(民軍作戦部戒厳課)があるため、韓国軍内部では、戒厳時には合参議長が戒厳司令官を務めるべきという意見が支配的だ。

チョン・ヒョンソク記者
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