政治混乱がもたらしたさらに大きな問題は官僚のが機能しなくなったことだった。過去の日本は最高の人材が官僚になり、経済発展を率いた。しかし、政治が強力な官僚制を崩壊させた。総理と閣僚がひっきりなしに変わる状況で責任を持って働く官僚はいない。
次に韓国の現状を見よう。まず人口減少は日本の90年代初めと似ている。韓国の35-55歳の年齢層は2012年にピークに今後20年間で240万人(14.1%)減少する見通しだ。ペースは日本よりもはるかに速い。低金利でバブルが膨らんだ状況もそっくりだ。住宅景気浮揚のために留まるところなく膨らんだ家計債務はGDPの93%を占める、91年に日本の家計債務がGDPの70%だったことを考えると、バブル崩壊時の衝撃は韓国の方が大きい。政治の現実はどうか。韓国も5年ごとに政権が交代し、国家の長期発展戦略は失われて久しい。官僚が崩壊したことも同じだ。
現状が日本の90年代初めと似ているということは、韓国にも間もなく日本の失われた20年のような歳月が訪れることを意味する。それでも日本は苦しい時期を乗り切った。家計は賃金凍結、所得減少を倹約、節制で耐え抜き、企業は骨身を削る構造調整で生き残った。デジタル時代に適応できず、韓国企業に追い越されたソニーはカメラで復活し、富士フイルムは医薬品会社として蘇った。不良債権に苦しんだ金融機関は合併を通じ、総合商社は海外の資源開発でそれぞれ再生した。トヨタ、日立、パナソニックなどは海外進出に活路を見いだした。もちろん日産、SUBARU、シャープ、三洋電機など破綻したり、経営権が譲渡されたりしたケースも続出した。
次は韓国の順だ。韓国は日本のように持ちこたえられるか。韓国にとって幸いなのは、日本が未来を見せてくれたことだ。未来が見えれば、事前準備も可能だ。日本と同じ轍(てつ)を踏まないためには、遅れている人口対策、マクロ経済、福祉、労働、産業というあらゆる面で枠組みを変える必要がある。企業が健全に耐え抜くことが何よりも重要だ。企業経営者はいじめの対象ではなく、韓国の将来を担う大切な資産だ。今が歴史の変曲点だ。なすべきことが山ほどあるが、後ろばかり見ていたのでは失敗してしまう。
金大棋(キム・デギ)KDI国際政策大学院招聘教授・元韓国大統領府政策室長