国の体(てい)を成していない。国の最高情報機関のトップだった人物が一度に3人も捕らえられ、国防機関のトップだった人物が逮捕されるなどという事態は、まるでこの国にクーデターでも起きたかのような錯覚を起こさせる。
いつも言っているが、法治国家では誰であれ罪を犯せば捕まり、間違いがあれば罰を受けなければならない。大統領も弾劾されて拘置所に収容される国で、こうした元国家情報院院長や国防部(省に相当)長官の逮捕は一大事と言えるだろうか。しかし、大統領の間違いはいわゆる指揮責任だが、その部下たちの間違いは命令服従であるという点では異なる。大統領の弾劾は憲法的かつ政治的で、だからこそ民主的なものに見えるが、部下の逮捕は報復的で力の誇示であり、だからこそ稚拙に感じる。
検察が彼らを逮捕する際に示した逮捕理由を見ると、大統領府の指示に基づいて国家情報院の資金(特殊活動費)を大統領府に渡し、軍のサイバー機能を政治的書き込みに利用したというものだ。彼らは個人的に金を横取りしたり、他人の物を奪ったりしてはいない。それが間違いかどうかは法廷で判断されるだろうが、彼らは過去の担当者たちが長年の慣行のように行ってきた通りにしただけで、書き込み問題も全体のサイバー活動の0.5%にも満たないレベルだった。
文在寅(ムン・ジェイン)政権はこの逮捕・捜査劇を「積弊(せきへい=過去の政権による長年の弊害)清算ショー」のように見せ物にする前に、これが対外的に及ぼす影響を考えるべきだった。大統領の弾劾・逮捕までは「韓国が現職大統領でも引きずり下ろすことができる国だ」と畏敬(いけい)の念を呼び起こすことができたが、安保・情報担当部処(省庁)トップの逮捕に至っては「韓国はあのようにメチャクチャでデタラメな国だったのか」という蔑視(べっし)と冷笑を招きかねない。「あんな国をどう信じ、共に協力し、情報交換し、軍事に関して話し合うことができるだろうか」というのが周辺国、特に同盟国・友好国の反応だろう。国家情報院初代院長を務めた李鍾賛(イ・ジョンチャン)氏は「国際的に韓国の情報の信頼度が低下するのではと心配になる」と言った。