犬の飼い主たちは「犬を十分に散歩させられる場所が少ないため、山に連れてくるほかない」という。大型犬のドーベルマンを飼っているというある飼い主は「普段は散歩と言っても家の前の道路を歩くのがせいぜいで、犬の精力的な活動量を満たすには程遠い。1時間ほど山登りをすると、私も犬もストレスが解消される」と話す。また、他の飼い主は「人出の少ない早朝に山へ行き、少しの間犬を放してやっていたが、今では登山客の顔色をうかがうようになった。今後は山に連れていくこともできなくなるのではないかと心配」と複雑な胸中を語った。
山では野良犬が出没し、登山客の安全を脅かしている。ソウル市鍾路区旧基洞に住むチョン・ウンジンさん(41)は最近、娘(12)と共に北漢山へ山登りに出掛けた時に、ビボン登山口付近で4頭の犬が群がって歩いているのを見た。体長が1メートルにもなる大型犬だった。首にはチェーンがつながれておらず、周りを見ても飼い主は見当たらなかった。チョンさんは「後ろを向いて逃げれば犬が付いてくるかもしれず、その場で10分以上じっと立っていた。これこそ化け物だと思った」と、当時の恐ろしい様子を振り返った。ソウル市冠岳区に住むキムさん(56)は先月、冠岳山へ出掛けたところ、少なくとも15キロはあると思われる大きな野良犬と出くわした。キムさんは、ゆっくりと後ずさりして、犬がしばらく他の場所を見ている間に慌てて山を駆け下りた。キムさんは「あの時見た野良犬は文字通り野生動物だった。今でも殺気に満ちた犬の鋭い目つきを思い浮かべると、自然と冷や汗が出る」という。
ソウル市内に生息する野良犬は、そのほとんどが捨てられたペット犬で、山に入って何代にもわたって繁殖したものだ。人の手によって育てられ、やがて捨てられた小型犬とは違って、野良犬は大型で、やや痩せている。また、2、3頭ずつ群がって行動するケースが多い。野良犬は人を見ると逃げる習性があり、すぐに飛び掛かってくることはめったにない。しかし、狭い山道で突然犬に出くわした場合、避けようとして負傷してしまうこともある。
ソウル市は、都心の野山に生息する野良犬の数を160頭以上と推定している。昨年ソウル市は116頭の野良犬を捕獲し、このうち63頭を殺処分にした。しかし、頭が良く、たやすく捕まらないほか、繁殖も早いため、個体数は減っていない。