しかも「いずも」の上甲板を少し改造すれば、米海兵隊が保有する短距離離陸・垂直着陸(STOVL)型のF35B戦闘機を搭載できる。第2次大戦後、日本は空母の保有が禁じられていたが、「いずも」によって事実上空母クラスの海軍力を有していると評されている。ホワイトハウスのスティーブン・バノン首席戦略官が作った極右メディア「ブライトバート」は「名前だけは駆逐艦の『いずも』による3カ月の航海を、中国は挑発的な武力の誇示と感じるだろう。『いずも』は、敵国が占領した島しょを奪還する水陸両用作戦に特化している」と分析した。またCNNは「日本の平和憲法は自衛隊に交戦権を認めていないが、『いずも』は日本の軍事力を海外に投射し得る例外的な手段」と報じた。
トランプ政権発足後、南シナ海をめぐる米中の対立は激化が続いている。レックス・ティラーソン国務長官は、就任前に「中国が南シナ海で行っている人工島アプローチを防ぐ」と語っていた。中国は南シナ海で、軍事基地などを有する七つの人工島を完成させている。ジェームズ・マティス国防長官も「(中国が領有権を主張している)南シナ海でも、必ず米国の利益を守らなければならない」として、海軍力の増強を予告した。これに対抗して中国は昨年末、史上初めて自国の空母機動部隊を南シナ海へ投入し、不退転の決意を見せた。
日本はこれまで、東シナ海の尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権をめぐって中国と対立してきたが、南シナ海問題には直接タッチしなかった。その日本が南シナ海に「いずも」を送ると決めたことにより、米国と共に中国をけん制するため共同戦線を張る、という分析が登場している。米国は、南シナ海を含む西太平洋へ進出しようとする中国の試みを阻止する上で日本の役割が重要と判断し、日本もこうした機会を活用して軍事力の拡大を図っているという。
また、中国と対立している東南アジア諸国をまとめようという狙いもあるものとみられる。ロイター通信は「日本は、『いずも』がフィリピンを訪問した際、ドゥテルテ大統領が『いずも』を訪問することを希望している」と伝えた。