しかし韓国の外交には依然として、物事が起きてから収拾するという「その場しのぎ」の処方しか見られない。ある外交官は「戦略的思考をする訓練を受けていないのが問題」と語った。韓国の外交官は、その日その日の行事・儀典・行政に追われ、一歩離れて「大きな絵」を見る余裕がない。エリートが配属される主要な部局であればあるほど、こうした傾向が強い。総合的な分析のためではなく上司の意向に合わせるために、夜を徹して報告書を修正する。こうして育った人間が知恵を絞ったところで、戦略が出てきたりはしないというわけだ。
戦略家が天から降ってくるのを期待せず、戦略的思考を育むシステムを整備しなければならない。米国は第2次大戦後、体系的に戦略家を育成する必要性を感じ、国務省に政策企画室(PPS)を新設した。PPSはあらゆる部署の報告書に制限なく目を通し、討論し、グランドデザインを描いていった。ジョージ・ケナン、ポール・ニッツェ、ズビグネフ・ブレジンスキー、フランシス・フクヤマ、ポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・ハースなど米国現代史の名だたる政策ブレーンの多くが、PPSで戦略的思考を身に付けた。
これと合わせ、韓国の政界も、外交・安全保障戦略の樹立くらいには力添えをすべきだ。すぐに成果が出ないからといって、またすぐに党派の利害関係と合わないからといってせきたてる環境では、きちんとした長期戦略は期待できない。