【コラム】エリザベス1世と朴槿恵大統領

 対北政策や統合進歩党の解散など、朴大統領の功績もあるだろう。しかし、最高の業績は、9歳の私の娘をはじめとするこの世の女の子たちに「私が大統領だったら」という想像を何のためらいもなくさせるようにしたことだ。不幸にも朴大統領は厳しい教訓も一緒に残すこととなった。法治と公的システムに対するリーダーの不感症がどれほど大きな災いをもたらすのか、コミュニケーションの不足と独善の代価がどれほど致命的なのか、権力が衰えた瞬間自身の生計のために攻撃してくる政治家がどれほど多く、女性大統領の寝室まで掘り下げようとするゴキブリがまたどれだけ騒ぐのか、その底辺をことごとく見せ付けられた。権力の座を守るためには、蛇のように冷徹で賢くなければならなかった。国政を独占した恋人のエセックス伯爵の首をおので切り落としたエリザベス1世のように、残酷で高潔でなければならなかった。

 同文章を書いているこの瞬間にも、私の娘が質問する。「ママも大統領の悪口を言うの?」「いや霧が晴れるのを待っているのよ」。個人に振り回されて権力を乱用した大統領には憤りを覚えるが、無差別的なデマと扇動で何が偽りで何が真実なのか分からなくなっているときは、ひたすら待たなければならない。検察は大統領を容疑者として規定したものの、違法かどうかや罪の程度については法が判断を下すだろう。問題は大統領だ。何もなかったかのように持ちこたえるとすれば、キャンドルデモの火は一向に消えないだろう。不信をなくすためには謙虚にならなければならない。まずは大統領が許しを乞うべきだろう。相手は国民だ。大韓民国の初の女性大統領を残酷に追い出してしまいそうで恐ろしい。四方を敵に取り囲まれた暗黒をエリザベス1世は「国民のためには命をも惜しまない」という覚悟で切り開いていった。今からでも遅くない。

金潤徳(キム・ユンドク)文化部次長
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