作品が50もの言語に翻訳されている村上氏は毎年、英ブックメーカー(賭け屋)ラドブロークスの受賞予想で上位につけている。日本では10月初めになると大手書店が「村上春樹コーナー」を設け、受賞への期待を盛り上げている。
だが朝日新聞は6日、村上氏の作品の共訳者でもあるスウェーデンのジャーナリスト、デューク雪子氏の言葉を引用し、慎重な見方を示した。デューク氏は現地での村上氏に対する見方について「大きな可能性を持った作家だがノーベル賞に値するとまだ証明できていない、との見方が一般的。少し軽く、多作すぎるとおそらく受け止められている」と伝えた。
一方、ドイツの週刊誌「デア・シュピーゲル」(電子版)が9日に掲載したインタビューで、村上氏はノーベル賞受賞の可能性について「それは僕には不相応だ」と述べた。また「読者たちが僕の小説を好きでいてくれて幸せだし、あらゆる形の賞は重荷だ」とも語った。
村上氏は30日にデンマークでハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞を授与される。「古典的な語り口やポップカルチャー、日本の伝統、夢のような現実、哲学的議論を大胆に織り交ぜる能力」が評価された。村上氏はすでにチェコのフランツ・カフカ賞、ドイツ紙主催のウェルト文学賞などを受賞している。