市外バスターミナル近くの飲食店に入った。テーブルが20卓ほど並んだ、まずまず大きい店だったが、メニューに英語表記は全くなく、料理名は韓国語でしか書かれていない。ピエールさんが注文したのは、メニュー表の左上にあった「麦飯」。彼は「なんとなく店の代表メニューのような気がして頼んだが、悪くなかった。宝くじを当てた気分」と話した。
「落花岩」と呼ばれる岩の絶壁がある扶蘇山の散策路入り口では、危うく「破廉恥な客」になるところだった。入り口には白い建物があり、チケット売り場と韓国語で書かれていたが、2人はその意味が分からず通り過ぎようとし、案内員に呼び止められた。恥をかいた後、1人2000ウォン(約190円)のチケットを買って扶蘇山を登った。エンニさんは「最初は外国人を入れないようにしているのかと思った」と話した。
■外国人にとって地方交通機関の利用はほぼ不可能
1泊2日の旅行を終え、ピエールさんは「一番大変だったのは公共交通だった。外国語の案内がなさすぎて、バスに乗ることそのものが怖かった」と振り返った。エンニさんは「大海原に一人落ちた気分だった。周りの(在韓)外国人の友人に、地方を観光した人がなぜ一人もいないのか分かった気がする」と話した。
ピエールさんはまた、旅行前に扶余行きのバス乗車券をインターネットで購入しようとしたが、できなかったとも話した。実際、高速バスや市外バスのオンライン予約は韓国語サービスしかない。韓国国土交通部(省に相当)は今年6月にようやく、高速バスの外国語予約・決済システムを2017年3月までに構築すると発表した。
専門家は、各地方自治体が外国人のための基本的な観光インフラを構築すれば、観光客をもっと呼び込めると助言する。韓国文化観光研究院のクォン・テイル博士は「地方のKTX(韓国高速鉄道)駅と観光地を循環するツアーバスを導入するだけでも、外国人客の誘致に大きく役立つだろう」と指摘している。