もちろん無視や誤解もある。韓国のある有名作家にCUONでの出版を提案したところ、「日本の出版社を通じて発刊する」と断られた。しかし、韓国文学そのものに関心がなく、情報もない上、自国内だけでも多種多様な文学にあふれている日本の出版界が韓国文学に目を向けるわけがない。その作家はいまだに日本で書籍を出せずにいる。しかし、キム代表はその作家の本も『日本語で読みたい…』に盛り込んだ。「結局は自分のために商売しているのではないか」という誤解を受けたくなかったからだ。
シン・ギョンリム、ク・ヒョソ、キム・ヨンス、キム・ジュンヒョク、パク・ミンギュら14冊の韓国文学を発刊する間、増刷したのは『菜食主義者』1冊にすぎないほど、量的にはごくわずかな成長でしかない。いいものを先に「味わった」者として、そのいいものを理解してくれない人々に対し、寂しさは感じないかと聞いてみた。キム代表は首を横に振った。「CUONから新しい本が出るたびに朝日新聞がレビューで注目してくれるし、韓国文学の読書シンポジウムに参加する人々の数も増えたんです。質問のレベルもアップしました。いいものを味わった人は、もう他には行けませんね」
昨年キム代表は、東京の本屋街として有名な神保町に書店「チェッコリ」をオープンした。約15坪(約50平方メートル)にすぎない素朴な空間だが、神保町で唯一の韓国書籍の専門書店だ。韓国語の原書を約3000冊、日本語で書かれた韓国関連の書籍を約500冊も取りそろえた。今も毎月350冊ずつ新たに韓国から持ち込んでいる。「私が読んだ本だけを読者にお薦めする」という原則にのっとって1日に2、3冊を読んでいる。
大学時代に文芸創作を専攻したキム代表が創作を夢見たことはなかったのか、気になった。キム代表は「永遠の読者」である過去と現在が誇らしいと言った。企画者として、編集者として、書店の運営者として、多い日には1日に2、3冊を読む多読家だ。好きだから一生懸命するようになり、一生懸命にするようになると上達し、上達すると周囲からお声が掛かるようになるという。時には努力が才能にも勝ることがあるのだ。