「カッとなって」暴行や殺人、韓国社会で深刻化

 今月4日には、食品会社「プルムウォン健康生活」の支店管理部長P容疑者(44)と営業社員K容疑者(29)が、カラオケボックスで一緒に酒を飲んでいた同僚Hさん(29)を殴打し死亡させる事件が発生した。ソウル市江南区駅三洞にある同社の直営店で店長を務めるHさんが、P容疑者に「うちの店を冷遇しないで、よろしく頼む」と言ったところ、Hさんと同期のK容疑者が「上司に対して何だ、その口のきき方は」と怒鳴った。二人の口論は間もなく殴り合いのけんかに発展し、P容疑者も暴行に加担した。P容疑者とK容疑者に顔などを殴られたHさんは、脳出血を起こして倒れ、近くの病院に搬送されたが、脳死状態に陥り、4日後の8日午後2時に死亡した。警察は両容疑者を傷害致死容疑で逮捕した。

 ちょっとした怒りが原因となる犯罪の被害者は主に女性や子ども、高齢者など、加害者よりも力の弱い人たちだ。今月3日、京畿道水原市勧善区のコンビニの前で通行人に暴行を加えたとして逮捕された女(30)から被害を受けたのは、70台の高齢者だった。女は警察の調べに対し「じろじろ見られて気分が悪い」という理由を述べた。女は「洋品店を営んでいたが、商売がうまくいかず、イライラしていた。この世の中を生きるということにいらだっていた」と供述した。順天郷大学警察行政学科のオ・ユンソン教授は「偶発的な暴行は、力のない弱者をターゲットにするという点で、悪質な犯罪だが、大部分は単純暴行容疑が適用されるため、軽い処罰になる」と指摘した。

 専門家たちは、ちょっとした怒りによる犯罪が増加している理由を二つ挙げた。社会的に競争や対立が激しくなる状況で、いら立ちや怒りを抑えられない「間欠性爆発性障害」が犯罪に結びつくというわけだ。ソウル大学社会学科のイ・ジェヨル教授は「かつて韓国社会では『火病』になるほどまで、人々が自らの感情を表に出さなかった。文化の変化によって、感情や衝動の調節ができなくなる傾向が強まり、ちょっとした怒りによって犯罪に結びつく」と指摘した。一方、建国大学警察学科のイ・ウンヒョク教授は「『ほかの人を押しのけてこそ自分が生きていける』という強迫観念を持つ人々が、ささいな不満を弱者に対する暴力で解消しようとしている」と話した。

イ・ミンソク記者 , キム・ギョンピル記者
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