【社説】ベネズエラを模範国家と称賛してきた韓国左派

 6日に投開票が行われたベネズエラの総選挙(定数167)において、南米の左派政権ではリーダー的存在だった与党のベネズエラ統一社会党が大敗し、議席を大きく失った。ベネズエラの国政選挙で野党が勝利するのは、1998年に故チャベス氏が初当選して以来初めてのことだ。今回の国政選挙で政権与党が獲得した議席数は野党の半数にも満たなかった。

 チャベス氏は2年前に死去したが、後継者のニコラス・マドゥロ大統領によってその政策は継承されてきた。これまでのベネズエラの政策は、政府が石油関連企業を国有化することなどによって得た資金をさまざまな形で庶民にばらまき、支持を集める典型的なポピュリズムで、医療や教育の無償化なども相次いで進めた。また対外的には過激な反米主義を掲げて自由貿易を制限した。さらに原油を通じたキューバやアルゼンチンなど左派政権への支援はもちろん、ブラジルではサンバカーニバル、メキシコでは貧困層などにまで直接支援を行うなど、チャベス氏によって直接間接の支援を受けた国は30カ国以上に上った。その一方で反対派の陣営には容赦なく強権的な弾圧も行った。例えば商品価格の値上げを行う企業経営者に対しては「ブルジョアの寄生虫」などとレッテルを貼って身柄を拘束し、また政府に批判的な民間のラジオ放送局を閉鎖に追い込むようなこともあった。

 韓国の左派陣営はかつてベネズエラのような国を「世界の模範的な国」などと称賛していた。2009年に韓国の左派系野党・民主労働党(後の統合進歩党、2014年に強制解散)の姜基甲(カン・ギガプ)代表はメディアとのインタビューで「ベネズエラのように他国との共存関係を持続する貿易の仕組みを持つべきだ」などと発言した。さらに国営放送のKBSは2006年、週末に57分のベネズエラ特集「新自由主義の克服、チャベス大統領の挑戦」と題された番組を放映し、チャベス氏を「新自由主義に対抗する新たな夢であり代案」などと宣伝していた。かつての盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権を狂信的ともいえるほど熱烈に支持していた鄭淵珠(チョン・ヨンジュ)氏の社長在任中でもあったため、当時のKBSはまさに「狂っていた」としか言いようがない時期だった。

 しかしチャベス式のポピュリズムは原油価格下落の直接の影響を受け、結局は幕を下ろした。今あらためて冷静に振り返ると、ベネズエラはこの時期に国の根幹を大きく揺るがしていた。企業を育成しなかった影響で生活必需品が不足し、物価は2-3倍に跳ね上がったが、それでもベネズエラは原油があるため16年も持ちこたえた。それに対して資源があるとすれば人材しかない韓国が、9年前に左派の主張した通りの政策を進めていれば、今頃は国際社会に支援を求めるような貧困国に成り下がっていただろう。

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
あわせて読みたい