一方、日本のゲーム会社が昨年1月から韓国でサービスを開始したスマートフォン(多機能携帯電話端末)向けカードゲームは、朝鮮王朝時代の医学書『東医宝鑑』の著者、許浚(ホ・ジュン)と同じ名前の主人公を登場させ、その主人公が使用する武器には毒を連想させる「毒医宝鑑」という名を付けた。このほか、朝鮮王朝末期の名医、李済馬(イ・ジェマ)と同じ名前のキャラクターは、許浚と一緒に人体実験を行うという設定だ。この人体実験によってつくられたキャラクターは「派独看護部長」だ。これは朴正煕(パク・チョンヒ)政権下、失業問題の解消や外貨獲得を目的として、西ドイツ(当時)に派遣された「派独看護士」を連想させる。この漫画は結局、ネットユーザーの間で「日本が韓国の歴史を歪曲し、こき下ろした」との反発を招き、ゲーム会社側は全てのキャラクターの名前を変えた。
いくら小説や漫画だとはいえ、歴史を歪曲したり、こき下ろしたり、根拠となる史料を見つけるのも困難な内容をストーリーに仕立てたりすることで、青少年に誤った歴史認識を植え付けかねないと指摘する声が出ている。想像力によって創造された歴史上の人物のイメージを、多くの青少年が事実として受け入れかねないというわけだ。ポータルサイトで提供されている、あるウェブ漫画のアクセス者は、1カ月に460万人に達し、このうち70%程度が10-20代の青少年だという調査結果もある。「許浚」というキャラクターが登場するゲームも、サービス開始当初は100万人がダウンロードした。ソウル市内の小学校教諭(51)は「昨年、授業中に子どもたちが、許浚の著書の名を『毒医宝鑑』と答えたので、間違いを指摘したところ、逆にゲームの話を持ち出して『先生が間違っている』と言い出した」と話した。