儒教の伝統を破壊したとされる中国の文化大革命(1966-76)がむしろ儒教的な伝統を復活させ、それが現在の「新中華主義」につながったとの研究結果が示された。
韓京大の尹輝鐸(ユン・フィテク)教授(中国現代史)はこのほど「中国文化大革命期の反伝統と伝統」と題する論文をまとめた。
文革期に儒教は「身分秩序を維持しようとする反動的思想」と見なされ、毛沢東は林彪と孔子を批判する「批林批孔運動」で儒教を否定し、中国史を儒家と法家の闘争として捉える「儒法闘争」を掲げて、法家や秦の始皇帝を擁護した。
これについて、尹教授は毛沢東が秦の始皇帝のイメージをうまく仕立て上げたと指摘する。尹教授は「プロレタリア独裁という建前の下で、個人的な専横をためらわなかった毛沢東の専制主義的政治を法家的な進歩活動として合理化し、称賛した」と分析した。
文革期の毛沢東の専横は、秦の始皇帝に似た「伝統的専制主義」の様相を帯びており、中国史の中で脈々と受け継がれた儒教的専制主義が法家という美名の下で「復活」していたとの見方だ。さらに、毛沢東個人に対する崇拝で、毛沢東と人民の関係が「父子」「皇帝と臣下」に似た関係に変質したというのが尹教授の見方だ。
尹教授の指摘によれば、儒教文化に端を発する祖先崇拝儀礼が、結局は文革時期の個人崇拝として復活しており、それは北朝鮮の故・金日成(キム・イルソン)主席が主体(チュチェ)思想を掲げ、結果的に朝鮮の伝統的イデオロギーである儒教に依存したのと同じ幻想だった。さらに、中国の専制主義的伝統を支える「忠孝」「礼」「先公後私(私事より公を優先する)」の要素は、改革開放とともに「中華民族」「中華の伝統」が強調される中で再評価され、「新中華主義」の中心的要素になった。