自衛隊だけではない。民間でも旭日旗文化は何の抵抗もなく受け入れられている。野球やサッカーの競技場で旭日旗が振られるのは話題にもならない。音楽CDのジャケットカバーや子供用のゲームにも旭日旗は登場する。植民地支配に対する謝罪を主張する朝日新聞の社旗にも旭日旗の模様があしらわれているが、これも何の問題なく使用されている。旭日旗を連想させるロンドン五輪女子体操代表のユニホームをデザインしたコシノヒロコ氏は、日本のメディアとのインタビューで「日の丸を配置して太陽が躍動する力強い美しさを表現した」と述べた。つまり旭日旗は軍国主義のシンボルではなく、単なる美しいデザインに過ぎないということだ。
■帝国主義的侵略を否定する日本
ドイツなど欧州では、ナチスのハーケンクロイツ模様は厳しく禁じられているが、日本社会で旭日旗が何の制約もなく使われているのは、かつての侵略戦争を正当化する雰囲気に便乗しているからだ。戦犯をまつる東京の靖国神社にある戦争博物館の「遊就館」には、太平洋戦争当時の特攻隊員のサインが書かれた赤い旭日旗が堂々と展示されている。
かつて旭日旗の下で数多くのアジアの人たちが虐殺されただけでなく、数百万人の日本国民も死に追いやられた。ところがその事実に対する反省はどこにも見られない。逆に遊就館には「アジアの国々が独立できたのは、大東亜戦争によって日本軍が植民地の権力を打倒したため」として、アジア諸国の独立が全て日本の侵略戦争のおかげであるかのようなとんでもない主張が掲げられている。遊就館で上映される映画は「日本の戦争責任者を処罰した東京裁判は、誤った裁判だ。占領軍司令官だったマッカーサーはもちろん、東京裁判を担当した米国人検事や裁判官も過ちを認めている」などと主張し、歴史歪曲(わいきょく)も甚だしい。野田佳彦首相は議員時代「日本に戦犯はいない」と発言したが、この考え方も遊就館的な歴史認識に基づいたものだ。一部の極右勢力から始まった歴史歪曲は、すでに日本社会を大きく変えてしまった。