▲2023年8月18日(現地時間)、尹錫悦大統領が米メリーランド州の米大統領別荘キャンプデービッドでの韓米日首脳会議に先立ち、バイデン前大統領、岸田文雄前首相と話を交わしている/韓国大統領室提供
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は4日、憲法裁判所の弾劾決定により就任から2年11ヵ月(1060日)で大統領職を退いた。国会による弾劾訴追後、職務を停止された期間111日を考慮すれば、事実上任期(5年)の約半分を務めたことになる。初の検事出身の大統領として「自由」と「公正」を強調した尹前大統領は在任期間を通して国会で過半数を占める共に民主党と摩擦を起こした。民主党の反対で主な政策の実行が阻..
続き読む
▲2023年8月18日(現地時間)、尹錫悦大統領が米メリーランド州の米大統領別荘キャンプデービッドでの韓米日首脳会議に先立ち、バイデン前大統領、岸田文雄前首相と話を交わしている/韓国大統領室提供
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は4日、憲法裁判所の弾劾決定により就任から2年11ヵ月(1060日)で大統領職を退いた。国会による弾劾訴追後、職務を停止された期間111日を考慮すれば、事実上任期(5年)の約半分を務めたことになる。初の検事出身の大統領として「自由」と「公正」を強調した尹前大統領は在任期間を通して国会で過半数を占める共に民主党と摩擦を起こした。民主党の反対で主な政策の実行が阻まれ、民主党は政府が反対する法案を一方的に処理し、公職者の相次ぐ弾劾を推進した。その結果、尹前大統領は国政のまひ状況を打開するため、昨年12月3日に非常戒厳を宣言し、政治的破局を迎えた。
【表】尹前大統領のこれまでの歩み
■「私は権力者に忠誠を尽くさない」という尹前大統領、文在寅政権への捜査で大統領当選
尹氏は検事在任中の2013年10月21日に国会で行われた検察に対する国政監査をきっかけに政界の注目を集めた。当時検察で国家情報院によるコメント操作事件の捜査を指揮していた尹氏は、捜査過程で外圧を受けたと明かし、「他人には忠誠を尽くさない」という言葉を残した。その後、閑職を転々としていた尹氏は、朴槿恵(パク・クンへ)元大統領関連の国政介入事件で特別検事の捜査チーム長を務め、中央の舞台に復帰した。文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の2019年7月には検察総長に任命された。
しかし、尹氏は検察総長就任から2カ月後に法務部長官に指名された曺国(チョ・グク)元国会議員一族の不正捜査に乗り出した。その過程で文在寅政権と対立が続き、2021年3月に検察総長を辞任した。その後、政治的な挑戦を模索した尹氏は2021年6月29日、「腐敗し無能な勢力の政権延長を防がなければならない」とし、大統領選への出馬を宣言した。1ヵ月後の同年7月30日に国民の力に入党し、同年11月5日に大統領候補に選出され、2022年3月9日に行われた第20代大統領選挙で当選した。政界入りしてわずか8カ月後のことだった。
■「野小与大」の国会と対立
尹前大統領は同年5月10日の就任と同時に大統領執務室を青瓦台からソウル竜山区の旧国防部庁舎に移し「竜山大統領」時代を開いた。文在寅政権の所得主導成長政策を廃止し、自由市場経済を経済政策の柱に位置づけた。しかし、「野小与大」の国会で法案改正が必要な女性家族部廃止などの主な公約は民主党の反対に阻まれた。
巨大野党との協調よりも対決を選択した尹前大統領は、昨年4月の総選挙で国民の力の勝利を目指した。しかし、民主党が171議席を確保し、108議席にとどまった国民の力に圧勝した。総選挙の過程では、李鍾燮(イ・ジョンソプ)元国防部長官の駐オーストラリア大使任命強行などが悪材料になったと評された。
巨大野党優位の構図がさらに固まった国会で、民主党は政府が反対する法案を一方的に処理し、尹前大統領を追い詰めた。尹前大統領は25件の法案に拒否権を行使して対抗したが、民主党は公職者に対する弾劾訴追案を30件提案し、圧力を加え続けた。
■「金建希夫人リスク」「韓東勲との反目」で危機
民主党は尹前大統領夫人の金建希(キム・ゴンヒ)夫人氏もしつこく攻撃した。夫人と関連しては、ドイツモータースの株価操作疑惑、ブランドバック受領疑惑、人事への影響力行使論争が起き、民主党は特別検事の任命も提案した。国民の力の一部からは「夫人の問題をまず解消しよう」との主張が出たが、尹前大統領は妥協しない態度で一貫した。国民の力関係者は「昨年12月の非常戒厳直前にも夫人の特別検事法案問題が政治争点化するなど、問題に適切に対応できず、政権のアキレス腱になった」と話した。
政権与党だった国民の力に対する尹前大統領のリーダーシップも正常には働かなかった。尹前大統領が与党の代表をたびたび交代させ、統治基盤を揺るがしたとされる。国民の力関係者は、検事時代から側近とされていた韓東勲(ハン・ドンフン)元国民の力代表との対立が尹前大統領にとって政治的致命傷となったと指摘する。尹前大統領は総選挙を4カ月後に控えた2023年12月、法務部長官を務めた韓元代表を国民の力の非常対策委員長に就任させ、総選挙の指揮を任せた。しかし、金建希夫人問題で二人は対立し、尹前大統領による昨年12月の非常戒厳宣言で二人の関係は破局を迎えた。国民の力の親韓東勲系議員らが民主党主導の大統領弾劾の動きに加わり、尹前大統領は昨年12月14日、国会で弾劾訴追された。
■韓米日協力の強化は成果
尹錫悦政権は労働、年金、教育、医療の四大改革を推進したが、尹前大統領の弾劾で実を結ばなかった。特に医学部増員など医療改革では医療界と政府の対立が深刻化した。政府が医療現場の混乱を招いたとの指摘を払拭できないまま、問題は次の政権に持ち越しとなった。
ただ、「労組の会計決算公示」など労働改革を通じ、年間勤労損失日数を減らした点、原発産業を復活させた点、防衛産業の輸出拡大などは尹錫悦政権の成果として挙げられる。専門家は韓米同盟を正常化し、韓米日協力を強化したことも成果だと評価する。尹前大統領は、米国と核問題を扱う二国間協議体である核協議グループ(NCG)を発足させ、日本とは首脳シャトル外交を復活させた。尹前大統領は2023年に米国で韓米日3カ国首脳会議を行い、3カ国の協力を強化する内容のキャンプデービッド宣言を取りまとめた。
梁昇植(ヤン・スンシク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com