▲文炯培(ムン・ヒョンベ)憲法裁所長権限代行をはじめとする憲法裁判官たち。写真=キム・ジホ記者
韓国憲法裁判所が4日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の罷免を決定した。2017年の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領=当時=に続き、8年ぶりに任期中の大統領が退陣する事態となった。昨年末の非常戒厳宣布・大統領弾劾訴追以降、4カ月間続いてきた混乱と対立は、朴槿恵元大統領の時より深刻だった。だが、今回の罷免決定直後は、与党・国民の力が直ちに決定の受け入れと国民に対する謝罪文を発表し、弾劾賛成派・反対派の..
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▲文炯培(ムン・ヒョンベ)憲法裁所長権限代行をはじめとする憲法裁判官たち。写真=キム・ジホ記者
韓国憲法裁判所が4日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の罷免を決定した。2017年の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領=当時=に続き、8年ぶりに任期中の大統領が退陣する事態となった。昨年末の非常戒厳宣布・大統領弾劾訴追以降、4カ月間続いてきた混乱と対立は、朴槿恵元大統領の時より深刻だった。だが、今回の罷免決定直後は、与党・国民の力が直ちに決定の受け入れと国民に対する謝罪文を発表し、弾劾賛成派・反対派のデモも大きな衝突なしに終わった。8年前に4人が死亡し、63人が負傷するという惨事が起きたのとは対照的だ。これは実に幸いなことだ。韓国国民は分裂しており、対立も激しいが、守らなければならない線は守る賢明な国民だ。今は政争と混乱のくびきから解き放たれ、速やかに国政正常化の道を進まなければならない。
【写真】尹大統領罷免で歓呼しながら行進する市民
憲法裁判所は同日、裁判官8人の全員一致で罷免を決定した。非常戒厳の状況は全国民がテレビで見守っていた。憲法が定めた非常戒厳の要件に合っているのか、国務会議(閣議)など適切な手続きを守っていたのか、戒厳宣布後に法が定めた国会活動の自由を妨害したのかなど、核心的な問題はすべて目撃されたという意味だ。尹大統領=当時=が推薦・任命した憲法裁判官も、あらゆる主な争点が憲法と法律に違反していたと判断した。
弾劾反対デモに参加した市民たちの挫折感は大きいだろう。弾劾反対派の人々は、最大野党・共に民主党が首相や長官らに対して弾劾訴追、防弾(=保身のための措置)、立法を30回にわたり相次いで繰り出すなど暴走して国政を揺るがしている状況に怒りを覚え、街に出てデモをしてきた。共に民主党や弾劾賛成派の団体が、弾劾反対派の人々を見下したり、刺激したりして弾劾成立を喜ぶのは正しい行為ではない。これはどちらかが勝ったとか負けたとかいうゲームではなく、韓国政治の正常でない点であり、悲劇の一断面だ。喜ぶべきことではない。そうした点からすると、共に民主党の一部議員が「反憲法行為者処罰法」を発議したのは軽率だと言わざるを得ない。まず、恥ずべきなのはこうした人々だ。政党指導部や主な大統領選候補者も支持者たちを説得し、対立と分裂の修復を率先すべきだ。これ以上、対立を助長したり、扇動したりしてはならない。
これから60日以内に大統領選挙が実施される。「この4カ月間、国民は『心理的内戦状態だ』と言われるほどの対立を経てきた。大統領選挙ではやむを得ず対立が増す可能性が高いが、政界のやり方次第では対立を減らし、国政を正常化する契機にすることもできる。大統領権限代行を務める韓悳洙(ハン・ドクス)首相は、大統領選挙が公正に行われるよう、選挙管理に万全を期さなければならない。大統領選挙の候補者たちも、国民統合のため努力すると共に、過去についてではなく国の懸案と将来のビジョンについて競い合う姿勢を示してほしい。
戒厳・弾劾という事態を経たことにより、今の大統領制で国を円満に運営するのは困難だということがあらためてハッキリした。1987年の改憲後に選出された大統領8人のうち、3人は退任後に逮捕され、1人は捜査を受けているさなかに自死した。3人が弾劾訴追され、そのうち2人が罷免された。それにもかかわらず、歴代の大統領はみな当選後に自らの権力を弱めることを恐れ、改憲に背を向けてきた。 しかし、「このままではいけない」という国民たちの共通認識はこれまでになく強い。与野党の重鎮や主な大統領選候補者たちは皆、「改憲が必要だ」と声を上げている。ただし、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表だけが改憲に対して消極的な見解を変えていない。
もし李在明代表が政権を握ることになったとしても、現行の大統領制の無限政争構造の中に入るしかない。与党は大統領の親衛隊に成り下がり、専横に明け暮れ、野党は反対のための反対を繰り返すだろう。これでは極限まで対峙(たいじ)と対立、弾劾の悪循環が繰り返される。現実的に見て、60日以内に行われる大統領選挙までに改憲を推進するのは難しい。それならば、与野党と大統領選候補者たちが「与野党協議政治」を中核とする改憲案を公約に掲げ、大統領選後はすぐに国会改憲特別委員会でこれをまとめ、国民投票に付すべきだ。任期さえ保障されれば、新しい大統領が誰であれ、反対する理由はない。改憲されれば、後進的な政治が変わり、韓国もさらに一段階、飛躍することができるだろう。
私たちが政争に明け暮れている間に、国外では前例のない危機の波が押し寄せている。トランプ米大統領の強引な関税爆弾で経済危機が深刻化している。韓国企業が相次いで打撃を受ける可能性が高く、輸出は既に減っている。トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記によるイベントの可能性があることなどから、安全保障の不確実性も高い。このため、大統領選挙まで過渡期となるこの2カ月間は危険かつ緊要な期間だ。不必要な政争を自重し、与野党と政府は緊密に協力しなければならない。
今は皆、弾劾という結果を受け入れて自重し、日常を取り戻さなければならない。分裂と対立をやめ、国を正常化させなければならない。誰のためでもなく、私たち韓国人全員のためだ。
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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