▲慶尚南道泗川市にある航空宇宙庁(KASA)庁舎/朝鮮日報DB
韓国宇宙航空庁(KASA)の研究開発(R&D)を総括するジョン・リー航空宇宙任務本部長とキム・ヒョンデ航空革新部門長が米国側関係者との接触内容などを米司法省に報告していたことが3月30日までに確認された。2人は米航空宇宙局(NASA)出身の韓国系専門家で、昨年5月に発足したKASAに採用された。いずれも米市民権を持つ。
【表】米市民権を持つ韓国系幹部2人の申告内容
2人は1938年に制定さ..
続き読む
▲慶尚南道泗川市にある航空宇宙庁(KASA)庁舎/朝鮮日報DB
韓国宇宙航空庁(KASA)の研究開発(R&D)を総括するジョン・リー航空宇宙任務本部長とキム・ヒョンデ航空革新部門長が米国側関係者との接触内容などを米司法省に報告していたことが3月30日までに確認された。2人は米航空宇宙局(NASA)出身の韓国系専門家で、昨年5月に発足したKASAに採用された。いずれも米市民権を持つ。
【表】米市民権を持つ韓国系幹部2人の申告内容
2人は1938年に制定された米国の「外国代理人登録法(FARA)」に基づき活動内容を報告した。米司法省が管轄するFARAは外国政府の「代理人」として行った活動について、相手が米国人か外国人かを問わず報告するよう定めている。
本紙による確認の結果、リー本部長は1月31日、キム部門長は2月28日にそれぞれ司法省にこれまでの活動記録を提出した。2人の報告内容には給与、いつどこで誰に会い、どんな用件で携帯メールや電子メールを送ったのかなどが細かく記載されている。リー本部長は申告期間である昨年8月24日から1月24日までの期間にテスラのイーロン・マスク最高経営経営者(CEO)が設立したスペースXなどの関係者と接触し、協業について議論したことを明らかにした。また、KASAがある慶尚南道泗川市を訪問してくれたことに謝意を表する電子メールをNASA関係者に送り、NASAの研究者らと携帯メールもやり取りしていたという。こうした内容が実名で記載されている。国家安全保障と直結する公共機関の航空宇宙研究責任者が電子メール、携帯メールの通信内容などを相手の実名と共に外国のウェブサイト上で公開するのは異例のことだ。
■家賃からボーイングでの採用をめぐる議論まで…米国に細かく報告
リー本部長とキム部門長の活動内容は、米司法省のFARAに関するウェブサイトで、全世界の誰でも閲覧できる。ユーザー登録やログインも必要ない。FARAの報告書によると、リー本部長は対象期間の賃金や計32件の活動内容を申告した。世界的な軍需企業であるロッキードマーチン、商業用宇宙ステーションを開発するアクシオムスペース、宇宙探査会社であるインテュイティブ・マシーンズ、NASAのジェット推進研究所・応用物理研究所、コロラド大、アリゾナ大などの「複数の人物と意思疎通や協業を進めた」と接触者名簿で明らかにした。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏が設立したブルーオリジンと接触したとする内容もある。
昨年9月19日にNASA本部を訪れ、ビル・ネルソン長官に会い、同年10月、国際宇宙科学カンファレンスに出席し、パム・アンダーウッド連邦航空局長、バルダ・ケラー国務省宇宙担当局長らと面会したとの内容も含まれている。昨年11月、NASAのケビン・マーフィー最高データ責任者にKASAがある慶尚南道泗川市を訪問したことに対する感謝の電子メールを送ったとか、1月に米海洋大気庁(NOAA)のエル・タラート博士が宇宙研究協会会長に任命されたことについて携帯メールを送ったり、携帯電話で通話したりしたことなど細かなやり取りまで公開された。リー本部長がその期間にKASAから受け取った月給は10万1284ドル(約1519万円)だったと書かれている。
リー本部長に続くKASAの航空宇宙分野のナンバー2であるキム部門長も給与、米国の関係者とのやり取りを詳しく報告した。同氏は活動内訳の報告書に、昨年9月25日から今年2月28日にかけ、引っ越し費用を含め、6万9150ドルを受け取り、毎月住宅費として429ドルの補助を受けたとしている。
キム部門長は計13件の接触内訳を申告した。主に米国の大学教授と電子メールをやりとりしたり、在韓米軍宇宙軍幹部の大領(大佐)、少領(少佐)らとKASAで協業のための面会を行ったとする内容だった。一方、昨年11月28日、米国を代表する航空機大手ボーイングの韓国系技術者とKASAで会い「働き口」に関して話し合い、約2週間後にも電子メールでやり取りを続けたとする内容も実名で書かれている。この対話が採用に関連するものだったかは確認できていないが、人事に関連したやり取りが実名で報告・公開されたのは異例だ。
昨年8月、リー本部長の外国代理人登録に関連し、KASAは本紙に「内国人(韓国人)との面会は報告対象ではなく、機密などが含まれないように米国に資料を提出する前に確認する」としていた。そのためにセキュリティー業務に関する規定を整えたりした。しかし、米国が宇宙先進国であり友好国だとしても、韓国の税金から給与を受け取る韓国の公共機関の幹部が誰にいつ、なぜ接触したのかまで定期的に報告するというのは前例がないこととして受け止められている。
ある外交筋は「発足したばかりのKASAが韓国系米国専門家を採用するメリットは多いが、『宇宙強国』を目標とする世界の主要国で幹部活動がこれほど透明に公開されるケースはないだろう」と指摘した。申告内容に記載された接触相手などを見れば、KASAの関心事が明らかになり、韓米協力の協力を推定できる内容がいくつか含まれている。例えば、リー本部長は昨年7月、NOAA関係者と「ソーラーセイル(太陽光を動力に使う宇宙船)」プロジェクトでの協業の可能性に関連し、オンライン会議を行い、NASAとは月探査プログラムに関する協力の可能性をオンライン会議で打診したと報告している。
米国とは異なり、韓国には外国の代理で活動する人々を規制する法律がない。昨年、国民の力の崔秀珍(チェ・スジン)国会議員が外国などの代理で韓国で活動する人々に対する透明性を確保するための「韓国版FARA」を提案したが、議論が進展していない状況だ。国家情報院も昨年、同様の法案制定を目指すと表明したが、提案は行われなかった。さらに、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国のうち、スパイ罪の適用対象を「外国」ではなく、北朝鮮を意味する「敵国」に限定している国は韓国だけだ。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com