来たる4日の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判宣告の行方を決める争点は、大きく分けて三つある。憲法裁判所が尹大統領の「刑法上の内乱罪」について直接判断すべきか、軍・警関係者の揺らぐ証言をどの程度まで認定するか、当事者が否認した検察調書を証拠として採択するかどうかだ。
先に憲法裁は、非常戒厳宣布の要件違反、布告令の違憲・違法性、軍・警を動員した国会封鎖の試み、政治家逮捕の試み、中央選挙管理..
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来たる4日の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判宣告の行方を決める争点は、大きく分けて三つある。憲法裁判所が尹大統領の「刑法上の内乱罪」について直接判断すべきか、軍・警関係者の揺らぐ証言をどの程度まで認定するか、当事者が否認した検察調書を証拠として採択するかどうかだ。
先に憲法裁は、非常戒厳宣布の要件違反、布告令の違憲・違法性、軍・警を動員した国会封鎖の試み、政治家逮捕の試み、中央選挙管理委員会掌握の試みという五つの弾劾訴追事由を整理したが、むしろ、裁判の過程で物議を醸した争点の方が注目されている。法曹界からは「弁論の間ずっと論争になっていた三つの争点について憲法裁が最終的にどのように判断するのかに、尹大統領を罷免するかどうかが懸かっている」という声が上がった。
■「内乱罪を撤回するかどうかが、弾劾するかどうかを分かつ」
内乱罪撤回論争は、国会側が弁論準備期日に「刑法上の内乱罪を弾劾訴追事由から事実上撤回したい」と表明したことで呼び起こされた。裁判が長引いて立証が困難な刑法上の内乱罪は省略し、憲法違反問題のみ判断してほしい―と要求したのだ。尹大統領側は「内乱罪の撤回は弾劾訴追書の80%を撤回するもの」だとし、却下すべきだと反論したが、憲法裁は「総合的に検討したい」と答えるのみだった。その後、今年2月25日の弁論終結時まで、憲法裁は具体的な立場を明らかにしていない。
法曹界では「尹大統領の内乱罪が成立するかどうか裁判官がはっきりと判断するため、評議に1カ月以上もかかった可能性がある」とし「内乱罪かどうかが宣告内容にも決定的な影響を与えるだろう」という見方が出た。内乱罪が成立するかどうかを問おうと思ったら、尹大統領の戒厳宣布と軍投入に「国憲紊乱(びんらん)」目的があったかどうか、当時の状況が「暴動」に該当するかどうかなどをきちんと見極めなければならないからだ。
黄道洙(ファン・ドス)建国大学教授は「裁判で出てきた証拠と状況だけでは、内乱罪が成立するとは断定し難い」とし「内乱罪が無罪と判断されたら、非常戒厳宣布の要件違反など、残りの弾劾事由だけで大統領を罷免するのは困難。弾劾棄却の可能性が高まる」と語った。
逆に、憲法裁が尹大統領の国会封鎖、政治家逮捕指示を認めて内乱罪を有罪と判断して罷免するかもしれない、という意見もある。国会側の主張通り内乱罪を撤回して憲法違反のみを問い、弾劾するかどうかを決定することも可能だ。
■はっきりしない証言、どこまで認めるか
11回の弾劾審判弁論で明らかになった内乱関連の中心的証言と証拠類を憲法裁がどのように判断するのか、という点も鍵だ。「尹大統領が『議員を引き出せ』と指示した」と主張していた郭種根(クァク・チョングン)前特殊戦司令官は「大統領が『国会議員』を引き出せと言ったことはない。『人員』と記憶している」と、言を翻した。
国家情報院(韓国の情報機関)の洪壮源(ホン・ジャンウォン)前次長が作成したという「政治家逮捕名簿」のメモも、信ぴょう性を巡る論争に巻き込まれた。洪・前次長は憲法裁に2回、証人として出廷したが、メモ作成の場所や時点、経緯に関する内容をひっくり返した。尹大統領から直接的・間接的に「議員を引き出せ」「政治家逮捕」を指示されたという中心的証人の証言が、全て揺らいだのだ。
ある憲法学者は「ストップウオッチまで準備して弾劾審判を拙速進行したせいで、尹大統領が国会封鎖や政治家逮捕などの指示をしたのかどうか、依然としてはっきりしない状況」だとし「食い違う証言をどこまで信用すべきかを巡り、裁判官によって考え方は違うだろう」と語った。郭・前司令官らの証言が事実と認められれば、それだけ弾劾を認める確率は高まる。裁判官8人のうち6人以上が賛成すれば、弾劾は認められる。
■検察調書、弾劾の証拠として用いるか
検察調書の証拠能力問題も、尹大統領の弾劾事件に大きな影響を及ぼす要素だ。2020年に改正された刑事訴訟法は、当事者が否認した検察調書の証拠能力を認めていない。李鎮遇(イ・ジンウ)前首都防衛司令官、呂寅兄(ヨ・インヒョン)前防諜(ぼうちょう)司令官など軍指揮部は、弾劾審判の証人として出廷した際、検察調書や起訴状の内容を否定した。現行の刑訴法を適用すると、尹大統領を弾劾する証拠や根拠が減ることになる。
しかし憲法裁は「弾劾審判は刑事裁判ではなく憲法審判」だとし、刑事訴訟法とは別個に、当事者が同意しなくても調書を証拠として採択できるという立場を固守している。検察調書の証拠採択は朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領の弾劾事件の際に確立した先例で、当事者が検察の取り調べで署名・押印したのであれば正当性にも問題はない、という趣旨だ。
だが法曹界からは「調書の証拠能力は法律によって判断すべきであって、裁判官が任意に決定してはならない」との批判が出た。朴・元大統領の弾劾審判で主審を務めた姜日源(カン・イルウォン)元裁判官は最近、メディアに寄稿した記事で「証拠能力が制限された現行法下において、検察調書の証拠(能力)調べはかつてよりも厳格な手続きに基づいて行われるべき」と指摘した。
裁判所長出身のある弁護士は「法理と証拠能力を厳格に問う裁判官は検察調書をむやみに証拠として採択はしないだろう」としつつ「調書が証拠から抜けたら、尹大統領を弾劾するかどうか、どういう結論が出るか分からない」と語った。
パン・グクリョル記者、パク・ヘヨン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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