▲グラフィック=キム・ソンギュ
日本のパスポート・パワーは世界最上位クラスだ。ビザなしで入国できる国が190カ国に上っている。国際法律会社「ヘンリー&パートナーズ」と国際航空運送協会(IATA)は毎年、全世界199カ国のノービザ協定締結現況を分析し、その国のパスポート・パワーを示す「ヘンリー・パスポート・インデックス」を発表している。今年3月、ヘンリー・パスポート・インデックスで1位となったのは193カ国とノービザ協定を締結し..
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▲グラフィック=キム・ソンギュ
日本のパスポート・パワーは世界最上位クラスだ。ビザなしで入国できる国が190カ国に上っている。国際法律会社「ヘンリー&パートナーズ」と国際航空運送協会(IATA)は毎年、全世界199カ国のノービザ協定締結現況を分析し、その国のパスポート・パワーを示す「ヘンリー・パスポート・インデックス」を発表している。今年3月、ヘンリー・パスポート・インデックスで1位となったのは193カ国とノービザ協定を締結したシンガポールで、日本は190カ国と締結。韓国と共に2位となった。デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、アイルランドが189カ国と締結し、3位タイにつけた。日本は昨年も「パスポート・パワー」で世界第2位だった。
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世界の旅券順位
このように世界最強のパスポートを得ることができる日本人だが、実は日本国民の6人に5人はパスポートを持っていない。日本外務省が2月に発表した日本のパスポート保有率は17.5%だった。2024年末基準で、日本の有効パスポートは2164万2351冊にとどまっている。現在、日本の人口は1億2375万人だ。日本国民の6人に1人だけがパスポートを所持しており、5人はパスポートを持っていないというわけだ。パンデミック(世界的大流行)が終息し、日本でも新規パスポートの発行数は着実に増えているものの、その増加速度は他国に比べて微々たるものなのだ。日本の昨年度の新規パスポートの発行数は382万1378冊で、前年比で8.3%増となった。新規パスポートの発行を基準にすると、男性が44.8%、女性が55.2%と大差はなかった。
2023年に比べ新規パスポート発行数は30万冊増加したものの、コロナ禍以前(19年)の新規パスポートの発行数(451万冊)に比べれば70万冊も減ったのだ。注目すべきは、日本のパスポート保有率が年々減っているということだ。日本のパスポート保有率は13年に24%となって以降、21年には20%を割り込み、コロナ禍以降も回復せず、現在は17.5%にとどまっている。有効パスポート数は22年が2175万冊、23年が2150万冊だった。
日本政府と旅行業界では、日本人のパスポート保有率が毎年低下している理由として、まず経済問題を挙げている。円安によって旅行費用がかさみ、海外旅行に行こうとしないというのだ。日本経済新聞は「円安や旅行国の物価急騰により、海外旅行を敬遠する人が増えているようだ」とし「留学費用が急騰したのもパスポートの保有率が低くなっている要因」と分析する。外国に行かなくても日本国内で十分楽しめるといった認識が広がったのも、パスポート保有率が低いことに影響を及ぼしているという。昨年1年間に日本を訪問した外国人は3678万人だったが、海外に出国した日本人は301万人にとどまった。日本の昨年の出国者数は、コロナ禍以前の半数にも満たなかった。
日本の若者が海外への出国を避けていることがパスポート保有率の低さに影響を及ぼした、とする分析は興味深い。日本の専門家たちは「ベトナムなどアジア新興国と比較すると、若い世代が海外で活躍するといった意識が低下している傾向にある」と指摘する。そして日本国内からは、若い学生たちが留学や海外就職などで国際感覚を身に付けるチャンスが減少することによって、日本の国際競争力が低下しかねないとする声も聞こえてくる。
米国国際教育研究所によると、米国の大学に在籍している日本の学生は約1万4000人で、コロナ禍以前の2019年と比べると22%減少した。それだけ日本の学生が留学していないということだ。日本の私立大学の教授は「日本国内で全てが可能であることもあるだろうが、未知の世界に挑戦して夢をかなえてみようとするチャレンジ精神が過去に比べて低下しているのも事実」と語る。スマートフォン翻訳機が過去とは比べ物にならないほど進化を遂げているが、日本の学生たちの「英語恐怖症」も、韓国など他国の学生たちと比べると高止まりしているのも事実という。
日本旅行業協会(JATA)は、日本のパスポート保有率の低さを懸念し、韓国など他国と比較した。JATAは「パスポート保有率は米国が50%、韓国が40%、台湾が60%、ドイツが80%以上」とした。次いで「特に韓国とドイツでは海外旅行はもちろんのこと、留学や海外勤務の機会が多いため、パスポートを持つのが当然視されている」と分析している。
日本は韓国のパスポート保有率が40%台だと分析しているが、実際は60%に上っていることが分かっている。2024年12月31日基準で、韓国の有効パスポート数は3121万5077冊だった。外交官や官用、緊急、旅行証明書、単数旅券(1年間の有効期間内に1往復できる旅券)はこれに含まれていない。現在、韓国の人口は5168万人であることから、韓国のパスポート保有率は60%となる。韓国国民の5人に3人が海外に出られるパスポートを持っているということになり、これは日本が把握した40%を上回る。コロナ禍以降、新規パスポートの発行数が大幅に増え、パスポート保有率も急増したことに起因する。それだけ韓国人が頻繁に海外旅行しているということを意味している。19年に2871万人だった海外出国者数は、コロナ禍の時期に急減したものの、24年には2868万人とコロナ禍以前の水準にまで回復。今年はこれを大幅に上回るものと見られている。
韓国の海外出国者数は増えたものの、韓国の若者の海外留学生数は減っている。だからといって、日本のように韓国の若者の海外留学や就職への意識が低下しているわけではない。中国に対する否定的な認識が拡散し、中国に留学する学生が大幅に減ったためだ。今年初めに教育部(日本の省庁に当たる)が公開した「2024年国外高等教育機関韓国人留学生現況」によると、海外の大学で学位課程に籍を置いているか語学研修をしている韓国人留学生数は23年に比べて3800人(3.1%)増の12万6891人となった。しかし、17年の23万9824人に比べると半数の水準だ。海外留学をしても就職にあまり役立たず、学業年数が長くなることで就職の時期を逸してしまう恐れがあるといった認識のためだという。
国別には米国が4万3847人と全体の34.5%を占め、2位の日本は1万5930人、3位の中国は1万4512人だった。2017年は中国に留学した韓国人留学生が7万3240人と、米国の6万1007人よりも多かった。コロナ禍の終息後、米国と日本に向かう留学生数はある程度回復したものの、中国は引き続き下落基調にある。若い世代の反中情緒とともに米中貿易紛争や、中国から韓国企業が撤退していることも、中国への留学生の減少に影響を与えている。
■パスポート発給費用:韓国5万ウォン、日本16万ウォン、米国24万ウォン
2月、訪日外国人の1位は韓国、次いで中国、台湾、香港、米国の順
日本のパスポート保有率が低い理由の一つとして高い発給手数料が挙げられている。日本のパスポート発給手数料は1万6000円だ。パスポートの発給費用は日本が韓国の3倍といった計算だ。米国は新規パスポートの発給に165ドル(約2万4800円)、更新には130ドル(約1万9500円)かかる。英国のパスポート発給手数料は82.5ポンド(約1万6000円)、フランスは86ユーロ(約1万4000円)だ。中でもオーストラリアのパスポート発給手数料は最も高く、325オーストラリア・ドル(約3万800円)となっている。日本のパスポート発給手数料は韓国に比べて3倍高いが、米国やオーストラリアに比べれば安い方だ。
日本人が海外に出国しないことに比べて、韓国人は日本を頻繁に訪れている。今年1月に日本に入国した韓国人は97万9042人と、同時期の日本人全体の出国者数(91万2325人)を上回っている。日本に入国した韓国人が日本を出国した日本人全体よりも多いというわけだ。
今年2月に日本を訪問した韓国人は約84万7000人と、全外国人のうち最多だった。旅行のオフシーズンとされる2月に日本を訪問した外国人は325万8000人だった。韓国に次いで中国(72万3000人)、台湾(50万7000人)、香港(19万6000人)、米国(19万2000人)の順となった。
今年の三一節の連休には、23万人を超える人々が航空便を利用して日本を訪問した。昨年の三一節の連休の利用客(21万509人)と比べると10.2%増となった。コロナ禍以前の2019年の三一節の3日連休(20万1467人)に比べると15.1%増となった。空港別に見ると、仁川国際空港を通じて16万2235人が日本に向け出国し、金浦、清州、大邱、金海、済州空港を通じて6万9721人が日本行きの飛行機に搭乗した。
鄭佑相(チョン・ウサン)論説委員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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