▲李在明・共に民主党代表(写真右)とキム・ムンギ元城南都市開発公社開発第1処長(故人)が2015年1月、オーストラリア・ニュージーランド出張の際にある公園で手をつないでいる様子。/写真提供=国民の力
26日に進歩(革新)系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の公職選挙法違反事件控訴審で無罪判決が出るや、法曹界からは「無罪の心証を持って結論に法理をはめ合わせた」「うその背景や話の流れは無視し、発言を細切れにして強引に無罪にした」「第2の権純一(クォン・スンイル)判決を見ているかのようだ」などの批判が出た。反面、「有罪・無罪の判断がどちらも可能な事件とあって、裁判部が被告人に有利..
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▲李在明・共に民主党代表(写真右)とキム・ムンギ元城南都市開発公社開発第1処長(故人)が2015年1月、オーストラリア・ニュージーランド出張の際にある公園で手をつないでいる様子。/写真提供=国民の力
26日に進歩(革新)系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の公職選挙法違反事件控訴審で無罪判決が出るや、法曹界からは「無罪の心証を持って結論に法理をはめ合わせた」「うその背景や話の流れは無視し、発言を細切れにして強引に無罪にした」「第2の権純一(クォン・スンイル)判決を見ているかのようだ」などの批判が出た。反面、「有罪・無罪の判断がどちらも可能な事件とあって、裁判部が被告人に有利に解釈するのも無理はない」という反論もある。
先に一審は、李代表が故キム・ムンギ氏の死亡直後に「キム氏とゴルフをプレーしたことはない」と発言したこと、国政監査で柏峴洞の開発優遇疑惑について「国土交通部(省に相当)の脅迫で用途変更をした」と発言したことを有罪と認め、懲役1年・執行猶予2年を言い渡した。しかし控訴審は、この二つの発言にもそろって無罪を言い渡した。
■「李代表の発言、細切れにして無罪に…納得できない」
キム氏は大庄洞開発事業の中心的実務者だった。大統領選の過程で大庄洞不正疑惑が大きくなる中、キム氏と一緒に2015年1月にオーストラリア・ニュージーランド出張に行ったという報道が出回ると、李代表は「(当時、保守系の最大野党だった)国民の力では、まるで私が(キム氏と)ゴルフをプレーしたかのように写真を公開したが、団体写真の一部を切り取ったもの。操作したもの」と発言した。
一審はこの発言について、李代表が大庄洞不正疑惑との関連を断つために「キム氏とゴルフをプレーしたことはない」とうそをついたと判断した。一審は「一般有権者が“操作した”という言葉を聞けば“李代表がキム氏とゴルフをプレーしたことはない”と受け取ることは避けられない」と見なした。李代表側は「写真を撮った日はゴルフをプレーしなかった」と主張したが、一審裁判部は受け入れなかった。
逆に控訴審は、李代表の発言全体を細かく三つに分けた後、そのうちのゴルフ関連の発言は「城南市長時代にキム氏を知らなかった」という先行する主張を裏付ける論拠に過ぎず、独自の意味を持つ発言ではないとした。また、国民の力が10人の集合写真を4人に拡大したことは「操作」と見なす余地があり、写真を撮った日にゴルフをプレーしてもいないから問題はない-と判示した。
2021年12月にこの写真を初公開した李基仁(イ・ギイン)改革新党最高委員は「細部を見てもらおうと拡大したことを、どうして操作と考えるのか」と述べた。部長判事出身のある弁護士は「無罪の結論をあらかじめ決めておいて、論理を組み合わせたようだ」と語った。
■「柏峴洞発言も無罪? 国政監査でうそをついてもいいのか」
柏峴洞の用途変更に関連する李代表の国政監査証言が全て無罪にひっくり返ったことについては、批判が大きい。李代表は2021年10月の国政監査で、柏峴洞の敷地を一挙に4段階も上方修正し、かつて李代表の選挙対策本部長を務めたキム・インソプ氏に特別扱いをしてやったという疑惑について「国土交通部(省に相当)の用途変更要請を受けて仕方なく用途を変更したもの」と釈明した。また「国土交通部の公務員が『用途変更しないのなら職務遺棄で問題にする』と脅迫した」とも述べた。キム・インソプ氏は用途変更のロビー活動の見返りとして民間業者からおよそ70億ウォン(現在のレートで約7億2000万円)を受け取った罪により、懲役5年の刑が確定している。
一審は「柏峴洞の敷地の用途変更は城南市の独自判断で、国土交通部の公務員が城南市を脅迫したこともない」として、李代表の発言は虚偽事実公表に当たると見なした。
ところが控訴審は、李代表の発言は「事実の公表」ではなく「意見の表明」に該当して処罰はできない、とした。「仕方なく」という言葉は相対的・主観的概念で、「脅迫された」という言葉も誇張された表現というだけで、虚偽事実とは断定し難い、というのだ。この部分で裁判部は2020年の、当時の権純一(クォン・スンイル)大法官=最高裁判事に相当=が主導したといわれる李代表の虚偽事実公表事件判例を再度引用した。その上で「ある部類に属すると断定し難い表現の場合、原則的には意見や抽象的判断を表明したものと把握すべき」とした。すなわち、「脅迫」発言も事実の適示ではなく意見の表明、というわけだ。
法曹界からは「今回の判決が確定したら、テレビ討論会に続いて国政監査会場もうそをつける空間になってしまうだろう」という反応が出た。ある検察幹部は「国政監査会場でどんなうそをついても“意見の表明”だと主張できるようになった」と語り、法曹界のある人物は「“脅迫された”を意見表明だと見る場合、刑法上の脅迫罪で処罰すること自体が不可能になるだろう」と述べた。
「事実関係をきちんと把握していない判決」という指摘も出た。一審では、国土交通部と城南市の元職・現職公務員22人が証人として出てきて、全員が「脅迫はなかった」と証言した。控訴審の証人2人も「脅迫はなかった」と証言した。それにもかかわらず裁判部は、原審の判断を180度覆した。張永洙(チャン・ヨンス)高麗大学法学専門大学院教授は「“国土交通部の脅迫”発言は、脅迫の存否を問えばよいだけのことなのに、なぜあんな判断をしたのか疑問」と語った。
■「疑わしきは被告人の利益に」
「裁判部が今回の事件を無罪と判断する余地は十分にあった」という反論もある。問題になった李代表の発言が「事実」の領域なのか「意見」の領域なのか明確ではない、というのだ。虚偽事実公表罪は、候補者の経歴・財産など客観的事実や行為などについてうそをついたときにのみ成立するが、李代表の発言は主観的認識や意見表明に該当し得るもので、処罰の対象ではないというわけ。
李代表が「国土交通部から脅迫された」と言ったことについても、ある法曹関係者は「国土交通部が城南市に“柏峴洞の敷地が早く売却されるように協力してもらいたい”という公文を複数回送ったが、実際に脅迫はなかったとしても、本人が脅迫されたと感じることはあり得る」とし「大法院の判例も、大枠でのみ事実に符合していれば多少誇張された表現程度は許容している」と語った。
瑞草洞のある弁護士は「有罪なのか無罪なのか判断がつかないときは被告人に有利に解釈するのが大原則」だとし「こうした原則が全ての事件に適用されるのが正しい社会」と語った。
選挙出馬者の政治的表現の自由は昔よりも幅広く認められるべきだと、という意見もある。元職のある部長判事は「このごろは大統領選候補が何か主張をしたら、ソーシャルメディアを通してリアルタイムで反論が可能な社会」だとし「あらゆる発言を一つ一つ法的に問題にするより、自由に討論がなされるようにしておいて、有権者が最終判断すればいい問題」と語った。
兪鍾軒(ユ・ジョンホン)記者、パン・グクリョル記者、キム・ナヨン記者、パク・ヘヨン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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