中国が西海(黄海)で大型の鉄骨コンクリート製構造物の設置を進めている。これについて中国は「単なる漁業用」と主張しているが、これを拠点に管理担当者を置きさまざまな設備を追加で設置することで「西海を内海にする作業を進めるのでは」との指摘も相次いでいる。2012年に中国の習近平・国家主席は「海洋国家建設」を宣言し、その後南シナ海に数々の構造物を建設し領有権を主張してきたが、最近は「西海工程」にも力を入..
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中国が西海(黄海)で大型の鉄骨コンクリート製構造物の設置を進めている。これについて中国は「単なる漁業用」と主張しているが、これを拠点に管理担当者を置きさまざまな設備を追加で設置することで「西海を内海にする作業を進めるのでは」との指摘も相次いでいる。2012年に中国の習近平・国家主席は「海洋国家建設」を宣言し、その後南シナ海に数々の構造物を建設し領有権を主張してきたが、最近は「西海工程」にも力を入れているのだ。海軍の大型艦艇や戦闘機、爆撃機を使って西海を戦場とする軍事訓練の回数も増加している。
■西海で12の構造物建設計画を進める中国
韓国の情報当局が21日に公表した内容によると、中国は西海の韓中暫定措置水域(PMZ)に鉄骨製の構造物「深藍1号」と「深藍2号」の二つの構造物を設置した。この事実は昨年4月から5月にかけて確認され、またつい先日には3号の建設も完了したという。深藍は直径70メートル、高さ71メートル以上の鉄骨構造物で、中国はこれを「海上の養殖施設」と主張している。中国は深藍3号の建設もほぼ終了しており、近く地上から西海に移動させ設置する見通しだ。
この問題について韓国政府筋は「中国は2-3年かけて巨大な鉄骨構造物を西海の暫定措置水域に合計12基ほど設置する計画があることを把握している」と明らかにした。暫定措置水域とは海上の境界線確定が留保された海域で、韓中両国の合意に従い地下資源の開発や構造物設置などは禁じられている。中国は2022年3月にも暫定措置水域に無断で石油掘削用構造物を設置し摘発された。
韓国の海洋調査船は先月26日に深藍1号と2号から汚染物質が排出されていないか確認するため接近したが、その際に中国はゴムボートなどを使って妨害したという。これを受け韓国海洋警察も急きょ艦艇を派遣し、現場で中国海洋警察と2時間以上にわたり対峙(たいじ)した。
複数の韓国政府筋によると、韓中両国の船舶衝突や対峙は昨年も起こっていた。韓国政府が確認のため船舶を派遣すると、中国人が凶器を持ってどう喝しながら深藍から接近し、韓国の水中装備と連結されたロープを切断した。当時韓国政府は大統領府国家安全保障会議(NSC)で対応策を話し合っており、韓国政府は来月改めて深藍などに対する現場確認を行う方針だという。
■構造物を根拠に領有権を主張する見通し
専門家は「中国はこれらの構造物を根拠に領有権を主張する可能性が高い」と予想している。世宗研究所安全保障戦略センターの申範澈(シン・ボムチョル)所長は「まともな海洋進出路を持たない内陸国家の中国は、海洋進出路確保を『大国崛起(くっき、高くそびえ立つこと)』の必須条件と考えている」「南シナ海に続き西海でも影響力を拡大し、自国の軍艦のために安全な航路を確保したいようだ」との見方を示した。
中国が海上に深藍などの構造物を10基以上設置し、これらを監視する韓国漁船の接近を制限した上で、構造物上に石油掘削設備を複数取り付け、ここからコンクリートを流し込んで一種の人工島を建設する可能性も指摘されている。国家情報院第1次長を務めた南柱洪(ナム・ジュホン)氏は「中国はこれらを漁業用構造物だとか石油掘削設備と主張し、韓国が軍事面での対応を取りにくいあいまいな線を行き来しながら西海の暫定措置水域を少しずつ確保してくるだろう」と警告した。米国のシンクタンクであるランド研究所は「中国は相手側がどうにもできないグレーゾーン戦術でここ10年にわたり海洋工程を進めてきた」「これは国際的なシステムを無力化する巧妙な手口だ」と分析している。
実際に中国は習主席が海洋強国建設を国の戦略目標と宣言した翌年の2013年以降、南シナ海で人工島の建設を進め、これを拠点に南シナ海の全面積(350万平方キロメートル)の80%以上を「中国の領海」と主張している。フィリピンやベトナムなど周辺国との対立で本来ならどちらも領有権を主張できないが、中国は一方的に領有権を主張しているのだ。中国は東シナ海でも天然ガス田掘削施設やブイなどを相次いで設置し、日本とも対立を続けている。
■中国と日本への対応に温度差を示す韓国与野党
国会国防委員長を務める与党・国民の力の成一鍾(ソン・イルジョン)議員は21日、中国が西海に鉄骨構造物を設置した問題について「大韓民国の主権的権利が侵害される可能性も排除できない」「強く糾弾する」と述べた。中国が無断で設置した構造物周辺で両国の海洋警察が対峙したと報じられた今月18日、国民の力は党として論評を出し「大韓民国の海洋主権にとって脅威となる深刻な挑発」として政府次元での断固たる対応を求めた。
ところが野党・共に民主党は中国による構造物設置の挑発に対して何の反応も示していない。これまで共に民主党は中国に対する批判には消極的で、中国の強圧的な外交政策から顔を背けてきたとの指摘を受けてきた。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は昨年3月、台湾海峡問題について「なぜわれわれが介入するのか。(中国にも)『謝々(シエシエ)』(中国語でありがとうという意味)、台湾にも『謝々』と言えばよい」と発言し、尹錫悦政権の対中政策を批判した。2023年に当時のケイ海明駐韓中国大使(ケイは刑のつくりをおおざと)は李在明代表と会談した際「中国敗北にベッティング(賭けること)すれば必ず後悔する」など内政干渉とも取れる発言を繰り返したが、これに李在明代表は何も言わなかった。
その一方で李在明代表は強制徴用問題、福島原発汚染処理水放出問題など、日本と関連する問題では「全面戦を宣布すべきだ」と発言した。国民の力の関係者は「日本が東海にこのような構造物を設置していれば、野党はこれほど静かだっただろうか。おそらく大変なことになっただろう」と皮肉った。
盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者、イ・ミンソク記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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