▲グラフィック=キム・ウィギュン
反米感情が広がっている中国では、年明けにホワイトハウスに返り咲きを果たすトランプ米次期大統領の人気が一部で高まる怪現象が起きている。英経済誌エコノミストは最近、トランプ氏が強硬な対中関税政策を予告しているにもかかわらず、同氏の保守的な価値観と他国の内政に無関心なスタンスを支持する中国人が急増していると伝えた。「米国を再び偉大な国に」という旗を掲げたトランプ氏が「中国夢(中華民族の偉大な復興)」の..
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▲グラフィック=キム・ウィギュン
反米感情が広がっている中国では、年明けにホワイトハウスに返り咲きを果たすトランプ米次期大統領の人気が一部で高まる怪現象が起きている。英経済誌エコノミストは最近、トランプ氏が強硬な対中関税政策を予告しているにもかかわらず、同氏の保守的な価値観と他国の内政に無関心なスタンスを支持する中国人が急増していると伝えた。「米国を再び偉大な国に」という旗を掲げたトランプ氏が「中国夢(中華民族の偉大な復興)」の実現を目指す中国人の心をつかんだ理由は何か。
■保守的な男性から愛国主義者まで
まず、中国の保守的傾向の男性は性的マイノリティー(性的少数者)、フェミニズムに対するトランプ氏の強硬な立場に熱狂している。中国でも徐々に活動の幅を広げる性的マイノリティーなどに対する嫌悪をトランプ支持で噴出させているわけだ。中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」でLGBT反対運動を展開するニン・ファンガン医師(漢字不明)は「トランプの大統領選勝利から中国政府が学ぶべき教訓は多い。最も重要なことは『やかましい声』が国民の意思を代弁していないということだ」と述べた。
中国の小粉紅(シャオフェンホン、若い愛国主義者)もトランプ氏を支持する代表的な勢力だ。彼らはトランプ氏を「懂王(あらゆることを知っていると言い、過度な自信に満ちた人物)」、「川建国同志(トランプ氏の貿易戦争が中国の国力向上に貢献したという意味で皮肉を込めた呼称)」などと呼び、憎らしさと裏腹に親しみも持っている。トランプ氏が遊説期間に銃による襲撃を経験するという「ドラマ」まで加わり、一部の小粉紅はトランプ氏を強い指導者の象徴だと褒め称えた。
トランプ氏の政権返り咲きが中国に実質的な利益をもたらすと信じる米国留学派も増えている。微博でフォロワーが180万人いるハーバード大学出身の政治評論家、兔主席(ペンネーム)は12月11日、「反中政治がピークに達した米国でトランプ氏は『中国を最も嫌う』政治家になった」と評した。兎主席は経営者の色彩が強いトランプ氏について、中国の政治制度を変えるつもりは全くなく、台湾、新疆ウイグル自治区など中国の内政問題に無関心で、米中による軍事衝突を避けようとしていると分析した。
トランプ氏当選前の11月初め、北京で会った中国の有力メディア記者は「新聞を開けばハリス支持の声が聞こえるが、ソーシャルメディア上はトランプファンであふれている」と述べた。当時中国政府を代弁する主流メディアや学者は、中国により慎重にアプローチする民主党のハリス候補を好んだが、中国の大衆は何をはばかることもない態度のトランプ氏になびく場合が多かったことを示している。
■中国指導部は生き残り戦略で苦慮
しかし中国では「トランプ支持現象」の拡大に対する批判も高まっている。ある微博アカウントは「いわゆる愛国インフルエンサーがフェミニズムと性的マイノリティーの権利に反対し、左派を悪魔化して極端な反中右派を崇拝するようになっている」と主張した。
習近平国家主席もトランプ氏が気に入らない。同氏の返り咲きがもたらす米中関係の不確実性と中国経済に及ぼす悪影響は台風並みの威力があるためだ。中国はトランプ氏就任以降に予想される米国からの圧力に対処する「生き残り戦略」づくりに専念している。中国は外交的には米国の友好国との関係改善を急ぐと予想される。「米国優先主義」を強調するトランプ政権発足で米国の同盟体制がぎくしゃくするところを突き、「対中けん制戦線」の弱体化を狙う戦略だ。また、中国が核心的利益と主張する台湾・南シナ海問題で強硬なメッセージを発する一方で、米国が注目する国際紛争に関しては介入レベルを調整し、一線を画す可能性がある。
経済政策では「技術上の突破」を確実に目指しながら、社会不安を誘発する景気後退を体系的に管理すると予想される。12月9日に習主席が招集した中国共産党中央政治局会議では、2011年から維持してきた「積極的財政政策と穏健な金融政策」の基調を「より積極的な財政政策と適切に緩和的な金融政策」へと変更した。中国が世界的な金融危機の当時に活用した政策金利引き下げなどの手段を再び積極的に動員し、低迷した景気の回復に取り組むという意味だ。
中国がトランプ氏の再登板を国家の結集と自立を高めるチャンスととらえているとの分析もある。12月11、12の両日、中国経済の方向性を決める中央経済工作会議では、「守正創新(正しい路線に沿った革新)」、「系統集成(統一的、体系的な改革推進)」、「協同配合(緊密な協力を通じた目標実現)」というキーワードが新たに登場した。国家の指導の下で全国民が「結集」と「革新」に努めなければならないという意味を込めたと受け止められている。
北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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