12月29日に韓国南西部の務安国際空港で起きたチェジュ航空機事故は、機体の故障の以外に加え、滑走路の短さ、空港建設当初から指摘されてきたバードストライクの可能性に対する認識不足、未熟な空港運営経験などが複合的に影響を及ぼした惨事だという指摘が出ている。閑古鳥で「トウガラシを天日干しする空港」、地元大物政治家の名前を冠して「韓和甲(ハン・ファガプ)空港」とも呼ばれ、政治的に建設が推進された同空港の..
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12月29日に韓国南西部の務安国際空港で起きたチェジュ航空機事故は、機体の故障の以外に加え、滑走路の短さ、空港建設当初から指摘されてきたバードストライクの可能性に対する認識不足、未熟な空港運営経験などが複合的に影響を及ぼした惨事だという指摘が出ている。閑古鳥で「トウガラシを天日干しする空港」、地元大物政治家の名前を冠して「韓和甲(ハン・ファガプ)空港」とも呼ばれ、政治的に建設が推進された同空港の成り立ちとも関係しているとの見解も聞かれる。建設前には年間992万人が利用すると予測されていた務安空港の2023年の利用客はわずか24万6000人にすぎなかった。
2007年に開港した務安空港は韓国南西部の拠点国際空港として設計されたが、滑走路は2800メートルで他の主な国際空港より短い。地元全羅南道は来年の完成を目標に滑走路を3126メートルに拡張する工事を進めており、その工事のために同空港の滑走路は300mほどが利用できない状態で、事故当時に実際に利用できたのは2500メートルだった。
滑走路とは飛行機が安全な離着陸のために推進力を得る空間で、大型機の利用が多い国際空港の大半は滑走路の全長が3000メートルを超える。韓国の主な国際空港である仁川国際空港(3750メートル)、金浦国際空港(3600メートル)、金海国際空港、済州国際空港(いずれも3200メートル)などは務安空港より滑走路が長い。米国のジョン・F・ケネディ空港、フランスのシャルル・ド・ゴール空港、東京の成田空港など主な国際空港の滑走路は4000メートルを超えるところも多い。務安空港で重量400トン以上の航空機の運航が制限されているのも滑走路が短いためだ。
航空業界の専門家は、滑走路が長いほど、制動力を高められると指摘する。事故機は車輪が出ずに胴体着陸を試みたが、減速することができずに滑走路の端の丘状の構造物にぶつかった。韓国空港公社航空訓練センターのキム・ギュファンセンター長は「滑走路が3000メートル未満でも通常の離着陸では問題がないが、胴体着陸のような非常時には問題になり得る」と話した。韓国航空大学飛行教育院のキム・インギュ院長は「事故の主な原因を滑走路の長さだけのせいにすることは難しいが、滑走路の長さが仁川並みであれば、こうした事故が起きなかった可能性もある」と述べた。ただ、韓国国土交通部は「滑走路の長さによって事故が発生したとは見なしにくい。事故機は1500~1600メートルの滑走路でも着陸できる」との認識を示した。
事故原因の一つの可能性として指摘される「バードストライク」に対する安易な認識も被害を大きくしたと指摘されている。専門家は今回の事故の直接的な原因である着陸装置(ランディングギア)の故障がバードストライクの結果起きた可能性を指摘する。
務安空港は韓国西海岸の渡り鳥の飛来地に近いため、空港建設初期から問題が提起されてきた。務安空港に近い全羅南道務安郡玄慶面・雲南面では約1万2000羽の冬の渡り鳥が観察されている。この地域には面積113.34平方キロメートルに達する大規模な務安干潟湿地保護区域などが設けられており、渡り鳥の中間経由地となっている。務安空港の戦略環境影響評価の際にも「機体が鳥と衝突する危険がある」という問題が提起された。2020年の報告書は「航空機が離着陸する際、鳥との衝突危険性が高い」とし、「それを軽減する方策が必要と判断される」と分析している。報告書は爆音機、警報機を設置したり、レーザー、旗、LED照明などを使ったりしてバードストライクの可能性を最小化すべきだという具体策まで示したが、滑走路拡張事業が終わっていないという理由で実行されなかったという。
務安空港は仁川空港を除く全国14空港でバードストライクの頻度が最も高い。2019年から今年8月まで務安空港には旅客便、貨物便合計で1万1004便が離発着したが、10件のバードストライクが発生した。便数と比較した発生割合は0.09%で、済州空港(0.013%)、金浦空港(0.018%)などに比べはるかに高い。務安空港にはバードストライク予防委員会が設置されているが、しっかり機能していなかったとの指摘が出ている。
務安空港の管制塔など関係者の経験不足が被害を拡大させたとの見方もある。2007年に開港した務安空港にはコロナ前に日本、台湾、ベトナムなどへの国際不定期便・チャーター便が一時就航していたが、昨年12月まで国際定期便の運航は一度もなかった。事故が起きた務安~バンコク線はチェジュ航空が12月8日に運航を始めた新路線で、開港から17年目で初めて就航した国際定期便だった。また、務安空港を管理する韓国空港公社は昨年4月、文在寅(ムン・ジェイン)政権で任命された社長が辞表を提出して以降、8カ月も後任が決まっていない。機長経験者は「バードストライクの警告があった2分後に『メーデー(緊急事態)』の宣言があった。非常に緊迫した状態だが、その過程で管制がまともに行われたのか、胴体着陸以外の選択肢は不可能だったのかなどを究明しなければならない」と話した。航空機の胴体着陸に際しては、空港消防隊が待機した後、滑走路に火災防止のための消火薬剤をまくなどすべきだったが、そうした手順も実行されなかった。
■務安空港
金大中(キム・デジュン)政権下の1999年に着工され、2007年に開港した。近隣に空港があるにもかかわらず、地元の支持を集めるための「人気取りの公約」として推進され、当時事業を主導した地元出身の韓和甲(ハン・ファガプ)国会議員の名前を冠し、「韓和甲空港」とも呼ばれる。開港前に年間992万人が利用すると予測されたが、2023年の利用客は24万6000人にとどまった。利用客がおらず、滑走路で住民がトウガラシを天日干しする場面が目撃され「トウガラシを干す空港」とも皮肉られた。
キム・アサ記者、カン・ダウン記者、キム・ビョングォン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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