▲「12・3非常戒厳事態」の内乱容疑で身柄を拘束されたノ・サンウォン元情報司令官(小さな写真)と、京畿道安山市の神堂(祠堂〈しどう〉)の様子。/写真=ク・ドンワン記者
12月3日の非常戒厳を巡り、「ナンバー2」といわれるノ・サンウォン元情報司令官の、奇妙な行動についての話が後を絶たない。韓国法曹界からは「NLL(北方限界線)で北朝鮮の攻撃を誘導」などが記されて物議を醸したノ元司令官の手帳の内容に疑問があるという指摘が出ている。検察はこの手帳の信ぴょう性について原点から再検討する方針を立てたことが、25日に分かった。
■明らかになるノ元司令官の奇行の数々
ノ元司令..
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▲「12・3非常戒厳事態」の内乱容疑で身柄を拘束されたノ・サンウォン元情報司令官(小さな写真)と、京畿道安山市の神堂(祠堂〈しどう〉)の様子。/写真=ク・ドンワン記者
12月3日の非常戒厳を巡り、「ナンバー2」といわれるノ・サンウォン元情報司令官の、奇妙な行動についての話が後を絶たない。韓国法曹界からは「NLL(北方限界線)で北朝鮮の攻撃を誘導」などが記されて物議を醸したノ元司令官の手帳の内容に疑問があるという指摘が出ている。検察はこの手帳の信ぴょう性について原点から再検討する方針を立てたことが、25日に分かった。
■明らかになるノ元司令官の奇行の数々
ノ元司令官は、少領(少佐に相当)時代の1990年代中盤から自分を「水岩先生」と呼んでいたという。95年にノ(当時の名前はノ・ヨンレ)氏と共に陸軍第1師団で勤務していたという韓国軍消息筋は「当時のノ氏は第1師団隷下の大隊作戦課長(少領)だったが、大隊の指揮統制室をベニヤ板で仕切って部屋を作っては漢字で『水岩先生室』と書かれた表札を掲げるので、いろいろ言われていた」と語った。この消息筋は「ノ元司令官は2-3坪(6.6-10平方メートル)ほどの密室で何か勉強をしているようだった」と語った。「水岩」とはノ元司令官が自ら付けた雅号と推定される。だが当時の大隊長は、ノ氏の行動を別に制止はしなかったという。この消息筋は「陸軍士官学校(陸士)首席入学者出身のノ氏は、学軍(ROTC、予備役将校訓練課程、大学で大学の授業以外に軍事教育を受ける)出身だった当時の大隊長はもちろん、後任の大隊長としてやって来た陸士の先輩も無視し、トラブルを起こした」と語った。
ノ元司令官の奇行は、いわゆる「軍隊戦闘サッカー」をするときにも垣間見えたという。この消息筋は「当時は、上級者が所属するチームとぶつかったら手加減して勝たせてやるのが不文律だったが、一度、指揮官チームを相手に一人で5ゴールも挙げ、『普通の人じゃない』という声が上がった」と伝えた。
ノ元司令官は頭の切れる人物だった、と記憶している人も少なくない。予備役軍人のある人物は「ノ元司令官は少領のころ、大隊の作戦課長の水準としては信じ難いほどに韓米連合作戦計画について広く知っていた」とし「後輩も陸士・学軍・学士など出身を問わず、仕事がちゃんとできるなら偏愛しているように見えるほど後押ししてやっていた」と語った。
ノ元司令官は除隊後の2022年2月から、全羅北道群山の巫女(みこ)「緋緞(ひたん)ア氏」、イ・ソンジンさん(37)と交流し、「女性を紹介してほしい」と要請したこともあった。ノ元司令官はまた、イさんの「人生相談」をしてやりつつ「神様に嫌われたら大変なことになる」とも話していたという。同じころ、ノ元司令官は「蛇鶏」(ヘビの腐肉にたかるウジを餌に育てたニワトリ)を販売したといわれている。
■検察、ノ元司令官の手帳の信ぴょう性を原点から再検討
24日に警察からノ元司令官の事件の送致を受けて記録を検討した検察の特別捜査本部は、ノ元司令官の手帳が捜査・裁判における決定的な証拠にはなり難いと判断したことが分かった。先に警察は、60ページほどあるこの手帳に「NLL北朝鮮攻撃誘導」「政治家射殺」といった記述があった、と明かしたことがある。
しかし検察は、手帳の内容を疑っているという。検察は、手帳の記載内容がノ元司令官個人の想像なのか、それとも金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相などに報告された内容なのか不明確だとみている。戒厳当時、韓国軍が「北朝鮮の攻撃誘導」や「政治家射殺」を計画した-という状況はまだ捕捉されていない。戒厳当時、韓国軍の兵力が国会封鎖を試みはしたが、この国会封鎖についてノ元司令官が最初にアイデアを出したのかどうかも立証されていない。戒厳司令部合同捜査本部別動隊といわれる「捜査2団」は、人事命令まで作成されたが、実際には結成されなかった。なお警察は、手帳の内容を裏付ける供述をノ元司令官などから確保できなかったという。
検察内外からは「ノ元司令官の手帳は、(かつての朴槿恵〈パク・クンヘ〉大統領・崔順実〈チェ・スンシル〉氏の)国政介入事件における『安鍾範(アン・ジョンボム)の手帳』のような『スモーキングガン』(決定的証拠)にはなり難い」という声が上がっている。安鍾範・元大統領府政策調整首席が2014年から16年にかけて作成した63冊の業務手帳は、他の物証や関係者の供述で信ぴょう性が裏付けられた。ところがノ元司令官の手帳は、作成時期や背景が全く明らかでなく、手帳の記載内容と主な被疑者らとの間にどのような関連があるのかもきちんと把握されていない、というのが検察側の判断だ。
韓国政界では、ノ元司令官が政治家を逮捕した後、ペンニョン島に送る過程で北朝鮮の攻撃を受けるように仕向け、事実上射殺する「ペンニョン島作戦」も立てていた-という疑惑が提起されている。これについて警察は、ノ元司令官の手帳に関連の内容はないとする立場だと分かった。検察は、ノ元司令官を含め戒厳関係者らを追加で取り調べ、手帳の内容を一から検証する計画だ。
ヤン・ジホ記者、ユ・ジョンホン記者、群山=ク・ドンワン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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