▲グラフィック=イ・ジニョン
「今日の午後1時までに謹弔花輪を30個ほど送っていただけますか」
11月9日午前7時ごろ、京畿道果川市のある大手花園には、午前の早い時間帯から謹弔花輪を大量注文する電話が相次いだ。従業員5人が働く同花園には最近、同徳女子大事件などを皮切りにデモ現場に謹弔花輪を納品している。花園を10年以上営んできたというイ代表は「デモ現場から謹弔花輪の注文が、多い時で一度に数百個も入ってくる」と話す。大手花園で..
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▲グラフィック=イ・ジニョン
「今日の午後1時までに謹弔花輪を30個ほど送っていただけますか」
11月9日午前7時ごろ、京畿道果川市のある大手花園には、午前の早い時間帯から謹弔花輪を大量注文する電話が相次いだ。従業員5人が働く同花園には最近、同徳女子大事件などを皮切りにデモ現場に謹弔花輪を納品している。花園を10年以上営んできたというイ代表は「デモ現場から謹弔花輪の注文が、多い時で一度に数百個も入ってくる」と話す。大手花園でも、菊の冷蔵庫がいっぱいになることはほとんどない。イ代表は「近くの卸売花市場に行って菊を大量に買い入れることもある」とし「アルバイトまで使って、10人以上が徹夜しなければ注文を賄い切れない」という。
各種のデモや集会に常連として登場する謹弔花輪が、花卉(かき)農家の「ブルーオーシャン」として脚光を浴びている。花卉農家では「葬儀や結婚式よりも、デモ現場に送られる花輪の方が多い」という話が出回るほどだ。謹弔花輪を使ったデモは2000年代初めに登場したとされている。06年に忠清北道清原郡の梧倉産業団地内にある湖水公園の開発に反対する住民たちが、清原郡庁の入り口で謹弔花輪を使用したデモを行ったのが最初とされている。それ以降、各種の政治集会に散発的に登場していた謹弔花輪は、10年代に入って朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領の弾劾とチョ・グク元法務長官事件などを経て、瑞草洞や汝矣島などのデモ集会における「常連小道具」となった。最近ではアイドルなど芸能人のスキャンダルを糾弾する花輪デモで、芸能事務所が密集しているソウル市城東区聖水洞が頭を抱えている。
デモ現場の謹弔花輪は、正義や公正性、民主主義などの価値が死んでしまったことを意味している。「故人の冥福を謹んでお祈り申し上げます」といった追悼の言葉が書かれるはずのリボンには、「男女共学転換、決死反対」(同徳女子大デモ)、「司法部は死んだ」(李在明〈イ・ジェミョン〉令状棄却糾弾)、「韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委はトロイの木馬」(韓東勲反対デモ)のようなスローガンが書かれてある。ある花園事業主は「2016年に金英蘭(キム・ヨンラン)法(公務員の金品授受を取り締まる法律)が施行されて以来、停滞していた花輪の売り上げを各種のデモ集会で賄っている」とし「デモに花輪を送るアイデアを誰が出したのかは知らないが、ありがたくて涙が出る」という話も聞かれる。また別の事業主も「謹弔花輪は陶磁器の植木鉢が原価に含まれる蘭のような製品よりもマージン率がはるかに高い『金の卵』」と説明する。
一部の花卉業者は、「謹弔花輪」「祝賀花輪」と共に「デモ花輪」といったキーワードでネット広告を出している。デモ用の花輪は「無料回収サービス」を行う業者もある。ただし事前申告されていないデモ現場に花輪を送る場合、「不法路上積置物」と見なされ、撤去の対象となり得る。花卉業者は「デモ花輪」の注文が入ってきた場合、事前申告された集会かどうかを確認し、「事前申告されていないデモ集会の場合、現場で撤去される恐れがある」と案内したり、あらかじめ注文そのものを断ったりすることもある。
花輪を集会やデモに使用する行為は、現行法上合法だ。憲法裁判所は昨年の選挙期間中に花輪設置を禁止する条項を違憲と判断した。「表現の自由を過度に制限する」との理由からだ。しかし、行き過ぎた花輪デモが「視覚公害」に相当するといった見解も少なくない。実際、昨年共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表の拘束令状を棄却したソウル中央地裁のユ・チャンフン判事を糾弾する謹弔花輪200個が瑞草洞に送られた際、「ユ・チャンフン祝死亡」「子孫代々天罰を」といった文句が書かれたリボンが掲げられ、「行き過ぎた人身攻撃」と指摘する声が相次いだ。最近ではソウル市城東区聖水洞の住民たちが、アイドルを糾弾する花輪デモに対し「うちの街は葬儀場ではない」と苦情の声を上げた。
国民大学社会学科のチェ・ハンソプ教授は「追慕の象徴である花輪を政治救護の道具として使う行為に、憎悪と嫌悪までが加わっている」とし「誹謗(ひぼう)性の花輪を『表現の自由』としてどこまで許容すべきか再検討する時を迎えている」と促した。一方、成均館大学社会学科のク・ジョンウ教授は「集団行動で最も重要なことは関心を集めること」とし「花輪デモは比較的平和な手段でメッセージを伝達することで、大衆の耳目を集めることに成功した韓国的文化」とする見方を示した。
ク・ドンワン記者、キム・ドヨン記者、コ・ユチャン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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