▲グラフィック=朝鮮デザインラボ、キム・ヨンジェ
米国大統領選挙があった11月5日、フィリピン東方の太平洋の島国パラオでも、中国を緊張させる大統領選挙がありました。反中路線を固守して来た現職のスランゲル・ウィップス・ジュニア大統領の再選が懸かった選挙でしたが、結果はウィップス大統領の圧勝でした。
中国は先の数年間、経済支援を武器に、台湾と外交関係を結んでいる南太平洋の島国を攻略してきました。2009年のソロモン諸島とキリバスに続き、今年1月には..
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▲グラフィック=朝鮮デザインラボ、キム・ヨンジェ
米国大統領選挙があった11月5日、フィリピン東方の太平洋の島国パラオでも、中国を緊張させる大統領選挙がありました。反中路線を固守して来た現職のスランゲル・ウィップス・ジュニア大統領の再選が懸かった選挙でしたが、結果はウィップス大統領の圧勝でした。
中国は先の数年間、経済支援を武器に、台湾と外交関係を結んでいる南太平洋の島国を攻略してきました。2009年のソロモン諸島とキリバスに続き、今年1月にはナウルが台湾に背を向け、中国と修交しました。しかしパラオは台湾との外交関係断絶を断固拒否しました。
中国は、観光産業への依存度が高いパラオを揺さぶるため中国人の団体観光を禁止し、現地メディアを通して親中世論の造成に乗り出すなどの圧迫に出ましたが、パラオを屈服させることはできませんでした。パラオはむしろ、中国との間を行き来する自国の航空便の運航を中断することで迎え撃ちました。
■得票率57.5%で当選…親中候補は立候補もできず
今回の大統領選挙はウィップス大統領とトーマス・レメンゲサウ元大統領の両雄対決という展開になりました。親中傾向の新聞経営者モーゼス・ウルドン氏は大統領選挙への挑戦を宣言しましたが、支持率が低く、立候補すらできませんでした。ウィップス大統領は57.5%の得票率でレメンゲサウ元大統領(41.3%)を抑え、再選に成功しました。
ウィップス大統領は、大統領選挙を前後して中国を強硬に攻撃しました。今年9月、外信のインタビューで「2020年の大統領選挙直前、ミクロネシア連邦駐在の中国大使が電話をかけてきて、年に100万人の観光客を送ってやるつもりだから台湾と断交しろ、と要求してきた」「この要求を拒否すると中国人観光客を減らした」と暴露しました。
大統領選挙に勝利した後に行われたフランス通信委(AFP)のインタビューでは「中国の海洋調査船が最近、排他的経済水域(EEZ)を侵犯した」とし「旗を掲げて警告しても、われわれの主権や境界線を無視した」と主張しました。パラオの海底山脈2カ所に中国式の名前を付けた事実も公開し「何を意図しているのか」と反問もしました。
中国は外交部(省に相当)や共産党機関紙「人民日報」などが乗り出して「パラオは国連決議に背いて台湾と修交している」「国家と国民の利益のため正しい選択をすべきだ」と反撃しました。しかし、人口14億人の国が2万人にも満たない島国の強力な国際世論戦にうろたえている様子でした。
■1994年に独立した人口1万8000人の小国
パラオはフィリピンから東に850キロ進んだところにある島国です。340の島で構成されていますが、全体の面積は459平方キロで、これはソウルよりも狭いです。1947年に米国が統治する太平洋諸島信託統治領の一部に組み込まれましたが、81年に自治領になり、94年に共和国として独立しました。
米国とは自由連合盟約(COFA)を締結しています。米国はパラオの安全保障を守ると共に、領空と領海、領土を軍事的に活用する見返りとして毎年5000万ドル(現在のレートで約77億円)前後の財政支援を行います。
パラオは国内総生産(GDP)の40%以上を観光業に依存しています。天の恵みといえる海底環境を持っており、シュノーケリング、ダイビングの聖地に挙げられます。かつては日本人・台湾人観光客が多数でしたが、08年から中国人観光客が大幅に増えました。15年にはその数は9万1000人にまで跳ね上がり、全体の半数以上を占めました。中国の不動産開発業者も押し寄せ、ホテルなどを建てたといいます。
■台湾との断交を拒否すると団体観光禁止令
パラオに対する経済的影響力が大きくなると、中国はレメンゲサウ大統領の在任中から「台湾と断交せよ」と要求してきました。しかしレメンゲサウ大統領は「パラオの民主主義的理想は、台湾の方に近い」として拒否したといいます。
すると17年、中国はパラオへの団体観光を禁止するなどの圧迫作戦に入りました。THAAD(高高度防衛ミサイル)の配備を理由に韓国への団体観光を制限したのと同じ時期です。17年、パラオを訪問した中国人観光客の数は5万5000人に減少し、20年には3300人にまで減りました。18年にはパラオの日刊紙「ティア・ベラウ(Tia Belau)」と協力してメディアグループを作るプロジェクトを推進しましたが、このプロジェクトの背後には中国軍と公安(警察)がいたといいます。
中国は今回の大統領選挙を前に、ウィップス大統領を落選させるためさまざまな手段を動員しました。昨年12月に中国の麻薬密売団が関与した中国人同士の殺人事件が発生すると、この事件を口実に今年6月、パラオ旅行に関する安全注意報を出しました。今年3月にはパラオ政府電算網のハッキング事件が起き、政府の文書2万件が盗まれましたが、パラオ政府は中国をこの事件の黒幕とにらんでいます。
■中国の圧迫に対抗して米軍基地を誘致
パラオは小国ですが、外交・安全保障問題では断固とした対応をします。12年に中国漁船が自国の海域で違法操業した上、取り締まりを避けて逃げると、海洋警察が銃撃を加えて中国の漁民1人が死亡する事件がありました。20年12月には違法にナマコを獲っていた中国漁船1隻と船員28人を摘発しました。操業用の小型ボート6隻や漁具などを押収し、収穫したナマコを全て海に捨てさせた後、追放しました。
中国の圧迫に対抗し、米軍基地の誘致にも積極的です。レメンゲサウは大統領在任中の2020年、米国に対しパラオ内での軍事基地建設を提案しました。米国はこの提案を受け入れ、第2次大戦の激戦地ペリリュー島の古い滑走路を補修し、海軍の軍艦が入れるように港も整備中です。長距離レーダー基地も構築中です。パラオは中国の攻勢に伴う安全保障上の不安を解決し、米国は台湾海峡有事に備えて後方に海軍・空軍基地を確保できる、という点で互いの利害が一致しているのです。ウィップス大統領も「駐屯がすなわち抑止力(Presence is deterrence)」だとして、米軍の駐屯を積極的に支持しています。
崔有植(チェ・ユシク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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