▲朝鮮デザインラボ=ハン・ユジン
中国が10月14日、台湾包囲・攻撃演習(連合利剣2024B)を行いました。今年5月の頼清徳・台湾総統就任時に演習(連合利剣2024A)を行って以来、5カ月ぶりでした。頼総統が台湾の建国記念日(双十節)関連の行事で「75歳に過ぎない中華人民共和国が113歳の中華民国(台湾)の祖国ではあり得ない」と発言したことを口実にしました。
中国は演習に先立って、台湾南部のバシー海峡に空母「遼寧」を配置しました..
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▲朝鮮デザインラボ=ハン・ユジン
中国が10月14日、台湾包囲・攻撃演習(連合利剣2024B)を行いました。今年5月の頼清徳・台湾総統就任時に演習(連合利剣2024A)を行って以来、5カ月ぶりでした。頼総統が台湾の建国記念日(双十節)関連の行事で「75歳に過ぎない中華人民共和国が113歳の中華民国(台湾)の祖国ではあり得ない」と発言したことを口実にしました。
中国は演習に先立って、台湾南部のバシー海峡に空母「遼寧」を配置しました。また、海警の巡視船を動員して周辺海域を運航する船舶を規制しました。実際の台湾攻撃を想定した演習をやったのです。ただし、過去に類似の演習を2-4日間行っていたのとは違い、今回は1日のうちに終わりました。大統領選挙を目前にした米国を刺激したくないという意味でしょう。
ちょうど、米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は今回の演習直前の10月10日に、台湾海峡での衝突が世界経済に及ぼす影響を分析した報告書を出しました。CSISは「世界の海洋貿易の5分の1が行き来する台湾海峡がふさがれたら、韓国と日本、オーストラリアはもちろんBRICs諸国や中東・アフリカの資源輸出国も致命的な打撃を受けるだろう」という見方を示しました。世界経済を破局に追い込む大災厄だというのです。
■世界のGDPの10%が吹き飛ぶ
台湾海峡は、2022年基準で海洋物流量が2兆4500億ドル(現在のレートで約369兆円。以下同じ)に達し、世界の海洋貿易の5分の1以上を占めるといいます。台湾への侵攻や封鎖が起きた場合、数兆ドル規模(1兆ドル=約151兆円)の海洋貿易に支障が出るのです。
半導体のサプライチェーンにも大混乱が起きるはずです。台湾は世界のシステム半導体の37%を供給しています。先端システム半導体に範囲を絞ると、シェアは92%まで高まります。新型コロナ問題の初期に生じた自動車用半導体を巡る混乱とは比較にならない、半導体供給網のまひ現象が起きるでしょう。
中国は世界の製造業の30%、世界の貿易の12.5%を占めています。台湾海峡封鎖で中国の輸出入が中断されたら、中国から中間材の供給を受けている東アジア諸国は工場を動かすことができなくなります。
ブルームバーグ・エコノミクスは今年1月、台湾侵攻で米中間の局地戦が起きたら、それに伴う経済損失は世界全体の国内総生産(GDP)の10.2%に該当する10兆ドル(約1510兆円)に上るだろう、と見込みました。それより強度の低い台湾海峡封鎖でも、封鎖に伴う損失は5兆ドル(約753兆円)に上る、と推定しました。
■韓国・日本の輸出、30%以上が台湾海峡経由
CSISは、最大の被害を受ける国として北東アジアにおける米国の同盟国である韓国と日本を挙げました。韓国は輸出の30.33%、輸入の22.6%が台湾海峡を経由しており、その金額は22年現在で計3574億ドル(約53兆9000億円)に上ります。日本は輸出の32.08%、輸入の25.3%、計4439億ドル(約66兆9000億円)の貿易を台湾海峡に依存しています。
台湾海峡は、韓国と日本が原油や天然ガス、石炭などを輸入するルートでもあります。日本は原油全体の95%、韓国は65%を中東諸国から輸入しており、この原油は台湾海峡を通って入ってきます。台湾海峡や台湾南部のルソン海峡がふさがれたら、フィリピン南部に迂回(うかい)しなければならず、航路が1600キロも長くなります。所要時間と費用、どちらもかなり増えるでしょう。
韓国と日本はハイテク製造業が発達した国で、半導体をはじめとする電子製品や機械部品などを中国・台湾から輸入していますが、この供給網も途切れることになります。スマホやコンピューター、タブレット、家電など電子製品はもちろん、自動車の生産にも支障が生じることになるはずです。ブルームバーグ・エコノミクスは、台湾侵攻が発生した最初の1年で韓国はGDPの23.3%、日本はGDPの13.5%に達する損失を被るだろうと予想しました。
■アフリカの低開発国は経済危機に直面
中国に鉄鉱石や液化天然ガス(LNG)、石炭を大量に輸出しているオーストラリアも、大きな被害に遭うと見込まれました。22年のオーストラリアの輸出のうち、26.83%(1090億ドル=約16兆4000億円)が台湾海峡経由で行われたといいます。
もちろん、戦争の当時者となる中国や台湾の被害も大きいはずです。ブルームバーグは、台湾にはGDP全体の40%、中国には16.7%に達する経済的損失が生じると予想しました。
中東・アフリカの開発途上国・低開発国も被害に見舞われるといいます。中央アフリカのコンゴは、22年に中国に銅やコバルトなどの鉱物を130億ドル分(約1兆9600億円)輸出しましたが、これは同国の輸出全体の62%を占める、といいます。北アフリカのエリトリアは、生産している亜鉛の70%、銅は100%を中国に輸出します。ガボンとアンゴラも、それぞれ生産した原油の40%を中国に送っています。中国向けの輸出ルートが断たれたら、経済が揺らぐことになるでしょう。
サウジアラビアやオマーン、イラクなど中東の産油国も、輸出している原油の30%は台湾海峡経由で運ばれています。
■BRICs9カ国も大きな打撃を受けるもよう
中国が属するBRICsの状況も似たようなものです。BRICs9カ国は輸出の14%、輸入の15%を台湾海峡に依存しています。中でもアラブ首長国連邦、イラン、インド、南アフリカ共和国、エチオピアなどが高い比重を占めています。
中国はこれまで、国際社会において開発途上国・低開発国の代弁者を自任してきましたが、台湾侵攻はこうした国々に大きな経済的苦痛を与えるものだ-とCSISは指摘しました。
中国は台湾海峡を自国の内海であると主張しますが、国際社会の立場からは、世界貿易の大動脈だといえます。ここで大規模な戦乱が発生したら、世界経済はもちろん、中国自身にとっても致命的な大災厄になるのです。
崔有植(チェ・ユシク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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