▲ベトナム北部バクニン省のイェンフォン工業団地にあるサムスン電子のスマートフォン工場
6年前、初めてベトナムに足を踏み入れました。まさにベトナムの隅々を駆け巡るのが趣味です。「二つの顔を持つベトナム-思いがけない機会と見えない危険のビジネス」という本も書きました。我々に「サイゴン」として親しまれるホーチミンでバイクの騒音を聞きながら迎える朝が好きでした。本コラムでは私が好きだったベトナムのあれこれをご紹介しようと思います。
ベトナムの首都ハノイから2時間ほどを車で走ると、サムスン..
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▲ベトナム北部バクニン省のイェンフォン工業団地にあるサムスン電子のスマートフォン工場
6年前、初めてベトナムに足を踏み入れました。まさにベトナムの隅々を駆け巡るのが趣味です。「二つの顔を持つベトナム-思いがけない機会と見えない危険のビジネス」という本も書きました。我々に「サイゴン」として親しまれるホーチミンでバイクの騒音を聞きながら迎える朝が好きでした。本コラムでは私が好きだったベトナムのあれこれをご紹介しようと思います。
ベトナムの首都ハノイから2時間ほどを車で走ると、サムスン電子のバクニン工場に着きます。2008年に同社がベトナム初の投資先として選んだ場所です。ここでは現地従業員がギャラクシーシリーズのスマートフォンを生産しています。同社が全世界で生産するスマートフォンの半分がここで作られます。
工場と称していますが、ここを直接訪れると、一つの都市という印象を強く受けます。よく整備された道路の両側に並ぶ大規模工場と職員のための宿舎、食堂、教育施設まで。ちり一つも許されない工場に勤務する従業員だけで約2万人に達します。ベトナムでは「サムスンの工場に就職すれば親が田舎で宴会を開く」という話を聞きました。まさにベトナムの若者たちが好む夢の職場でした。サムスンはベトナムでも「国民企業」と呼ばれています。
それだけ「サムスン」というブランドに対する好感度も高いものがあります。数年前にニャチャンで出会った反米の露天商は「私もサムスンのギャラクシーを使っている。韓国ではいくらで買えるのか」と聞いてきました。自分は1699万ドン(約9万8000円)で購入したと具体的な価格まで覚えていました。自分の所得に比べて高い価格だったからでしょう。それでも喜んで財布を開く理由は、サムスンというブランドに対する好感度と信頼でしょう。
ところが最近衝撃的なニュースが流れました。今年第2四半期(4~6月)、サムスンがベトナムのスマートフォン市場で中国ブランドに出荷台数トップの座を初めて奪われたのです。
■中国に首位奪われたサムスン
サムスン電子はベトナムのスマートフォン市場における上位5ブランドで唯一、出荷台数が減少しました。それも24%も減少したのです。
サムスンを抜き、首位に浮上したのはブランドは中国の「OPPO(オッポ)」でした。出荷台数が前年同期の2.1倍に達し、シェア(27%)で首位に立ちました。サムスンはシェア21%で2位に後退し、小米(シャオミ・20%)、アップル(16%)、Vivo(ビボ・6%)が続きました。また、別の統計(IDC)でもサムスンのシェア(21.7%)はOPPO(26%)に後れを取りました。
無論これらの統計はメーカーが流通業者に納品したスマートフォンの出荷台数を基準とするため、消費者に直接販売された実際の販売台数とは差が出る可能性があります。しかし、ベトナムのメディアは「小売店は在庫増加を避けようとするため、出荷台数と販売台数は同じではなくても関連性がある」との認識を示しています。結局、出荷台数が消費市場でも意味のある数字だと言えますね。
ベトナムのスマートフォン市場でサムスンはトップの座を譲ったことはありませんでした。小差ではなく、2位のブランドと圧倒的な差を付ける首位でした。2023年第4四半期のサムスン電子のシェアは31%で、2位アップル(21%)を10ポイント上回り、OPPO(16%)は4位にとどまりました。今年第1四半期(1~3月)時点でもサムスン電子がシェア28%で、小米(19%)を9ポイント上回り、OPPOとアップルは18%でした。
専門家は「サムスンを筆頭に600ドル(約8万6000円)以上の最高級スマートフォン市場が拡大している」としながらも、「中国企業が主導する低価格市場は為替変動などに敏感だ」と分析しています。実際にOPPOや小米、オナー(Honor)やリアルミーなどのブランドは、ベトナムで300万ドン(約1万7300円)未満の製品を発売し、低価格市場を攻略しています。
■中国の影響力は拡大するのか
ベトナムのスマートフォン市場の変化をサムスン電子という特定会社の問題と見るべきなのでしょうか。他の東南アジア諸国とは異なり、韓国が善戦していたベトナム市場でも中国との激しい競争が繰り広げられることになるというシグナルではないでしょうか。
韓国人はベトナムと中国が同じ共産主義国家だという点だけを考えますが、両国の関係はもう少し複雑で微妙です。「ベトナムと中国はメコン川開発をめぐって紛争を経験すると同時に、韓日間の独島問題のように、南シナ海を巡っても対立しています。
米中貿易戦争の当時、米国が「ファーウェイ(華為)を5Gネットワークから排除してほしい」と迫った際、ASEAN各国で初めてファーウェイの技術を拒否したのもやはりベトナムでした。当時中国の王毅・国務委員兼外相が東南アジア歴訪の日程からベトナムだけを外したこともありました。
しかし、最近は中国の立場が変化しました。米中貿易戦争の影響で経営難に見舞われたり、破産したりする企業が増えた中国は新しい市場を模索するしかない状況です。中国は内需市場の不振を挽回するため、海外市場に目を向けます。その一つがベトナムです。
サムスン電子のスマートフォン工場があるバクニン省では最近、中国企業の工場が急速に増えています。ベトナム全体への投資も増やしています。1988年から2023年までの累計では韓国がベトナムに対する最大の投資国でしたが、過去1年を見ると韓国は3位に後退。1位はシンガポール、2位は日本、4位以下は香港、中国、台湾でした。中華系資本に分類されるシンガポール、香港、中国、台湾の資金が大挙に流入しています。
ベトナムは実利を重視する「竹外交」の達人です。中国と対立しても、ベトナムの発展に役立つ投資を拒否するはずがありません。過去に韓国企業を誘致するためにさまざまな税金を免除し、人材誘致を支援したベトナムが中国企業には優遇を与えないという保障もありません。
韓国開発研究院(KDI)は8月、内需市場の鈍化を理由に、今年の韓国の経済成長見通しを従来の2.6%から2.5%に下方修正しました。私たちもじっとしていられる状況ではありません。ライバルが登場した際に新たなチャンスを探ること、そうした状況を予想して事前に準備すること、それは企業がなすべき最も基本的な事項でしょう。
李美智(イ・ミジ)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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