▲イラスト=UTOIMAGE
7月28日、ロシア軍が攻勢を展開しているウクライナ北東部ハルキウ州の小都市ボウチャンスクの空に、まるで核爆発を思わせるきのこ雲が立ち上った。きのこ雲は、核爆発でなくとも、十分に大規模な爆発で急激に形成された高熱の低気圧が上昇する際に形成されるものだ。
この日のきのこ雲は、実は水素爆発によるものだった。ただし、水素の核融合を利用する本当の意味での水素爆弾ではなく、燃料電池自動車(FCV)から取り外..
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▲イラスト=UTOIMAGE
7月28日、ロシア軍が攻勢を展開しているウクライナ北東部ハルキウ州の小都市ボウチャンスクの空に、まるで核爆発を思わせるきのこ雲が立ち上った。きのこ雲は、核爆発でなくとも、十分に大規模な爆発で急激に形成された高熱の低気圧が上昇する際に形成されるものだ。
この日のきのこ雲は、実は水素爆発によるものだった。ただし、水素の核融合を利用する本当の意味での水素爆弾ではなく、燃料電池自動車(FCV)から取り外した水素タンクが爆発したことで発生したものだった。
当時、ロシア軍はボウチャンスク市を掌握できず、V字型に市の東西を流れるボウチャ川の北側にある骨材工場に後退した状態だった。ロシア軍は、自然地形である川を前に置き、骨材工場の屋上から市全体を見下ろしつつ、川の南側から接近するウクライナ軍に銃撃を加えた。
ウクライナ軍としては、骨材工場を奪還しなければならなかったが、川と高所を利用したロシア軍の銃撃から脱する道はなかった。
西側が提供する精密誘導ミサイルであれば解決できることだが、ミサイルは常に不足していた。ウクライナが作る空中ドローンは、ロシアの優れた電波妨害能力のせいでしばしば阻止された。また、ドローンが投下できる爆弾の種類は極めて限定的なので、破壊力にも限界があった。
そこで考えたのが、使えなくなった民間の車両の部品を利用することだった。中古のテスラからバッテリーや交流機を取り外し、ラジコン車(地上ドローン)の動力にした。ウクライナは、海外から輸入した中古テスラのバッテリーを、独自生産するドローンの動力としてしばしば使う。
そして、故障したトヨタのFCV「MIRAI」から高圧水素タンクを取り外した。MIRAIの水素タンクには1万psi(重量ポンド毎平方インチ)の圧力で5キログラムの水素が貯蔵されている。重量52キロのこのタンクが爆発物とセットで爆発したら、TNT162キログラムに相当する破壊力を持ち、水素爆発は強力な衝撃波と火球、破片、きのこ雲を作り出すことができる。
最終的にウクライナ軍は、この「水素爆弾」を配達するラジコンカーを、ロシア軍が守っている骨材工場まで遠隔操縦することに成功した。この爆弾配達ラジコンカーは、まだ破壊されていない工場の東側の橋を渡った。近くに生い茂る木々のせいで、工場の屋上から見下ろしているロシア軍はこれを見ることができなかった。
爆発後、すぐに巨大な火炎が吹き上がった。これはロシア軍が骨材工場に相当量の弾薬を備蓄していたことを示唆する、とウクライナ側のメディアは伝えた。
もちろん、一般的な水素自動車の水素タンクは、内外の圧力や衝突でも決して爆発しないように、鉄よりも10倍も高い強度を持つ炭素繊維強化プラスチックで作ってあり、非常に安全だ。トヨタも当然、自社の車の水素タンクが衝突によって大爆発を起こしたという広報をするつもりはないだろう。しかし、水素タンクの外側をプラスチック爆弾で覆った場合は話が別だ。
英国の日刊紙「ザ・サン」は「トヨタのMIRAIの水素タンクを爆弾として使ったことは、製品本来の意図とは関係なく、戦場において技術がどのように予測不能な形で応用されるかを示してくれる一例」と評した。
結局、ロシア軍はこの骨材工場から後退し、市の奪還を図っていたウクライナ軍は、ロシア軍による圧迫の環を断ち切ることができた。
翌7月29日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と軍指導部は、最前線であるここボウチャンスクを訪れ、勲章を授与してここを守る将兵を激励した。
李哲民(イ・チョルミン)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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