▲1988年、東海で発見された4500万バレル規模のガス田/韓国石油公社
東海の深海油田・ガス田開発に関する韓国国民の期待水準はどの程度なのだろうか? 最近のある世論調査によると、可能性は低いとみている韓国国民の割合は、高いとみている側の2倍以上だった。大邱・慶尚北道地域の国民は、光州・全羅道に比べおよそ6倍も前向きだ。進歩(革新)系最大野党「共に民主党」の支持層はほとんど期待してない反面、保守系与党「国民の力」の支持層はおおむね70%が期待している。もちろん、浦項沖..
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▲1988年、東海で発見された4500万バレル規模のガス田/韓国石油公社
東海の深海油田・ガス田開発に関する韓国国民の期待水準はどの程度なのだろうか? 最近のある世論調査によると、可能性は低いとみている韓国国民の割合は、高いとみている側の2倍以上だった。大邱・慶尚北道地域の国民は、光州・全羅道に比べおよそ6倍も前向きだ。進歩(革新)系最大野党「共に民主党」の支持層はほとんど期待してない反面、保守系与党「国民の力」の支持層はおおむね70%が期待している。もちろん、浦項沖のどこかに眠っているかもしれない石油は、こうした世論なんかに気を使わない。
「意見じゃなくてデータを集めること!」。この勧告は、スタートアップ(ベンチャー企業)の創業や企業の新事業立ち上げを準備する全ての人が、耳にたこができるほど聞く小言だ。事業アイデアの検証戦略のバイブル『The Right It: Why So Many Ideas Fail and How to Make Sure Yours Succeed』(韓国タイトル『アイデア不敗の法則』)には、このように出ている。「新事業の90%は失敗する。成功したいのなら、大きな資源を投下する前に『いいやつ』かどうかを素早く、安く、自分だけのデータで検証しなければならない」。この勧告は、あらゆるタイプのビジネスに普遍的に適用される原理だ。
失敗時には巨額の費用を吹き飛ばすことになりかねない国家の新事業立ち上げとなれば、なおのことそうだ。だから「浦項・迎日湾沖に石油・ガスが埋蔵されている可能性が高い」という尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の国政ブリーフィングで、韓国人が耳をそばだてて聞くべき単語は、まさしく「検証」だった。大統領は「有数の研究機関や専門家らの検証も経て」と言い「今や実際に石油・ガスが存在するのかどうか、実際の埋蔵規模はどれくらいになるのかを確認する探査試錐(しすい)へと至る段階」と明確に言及した。
科学はまず、仮説を立てる。次に、その仮説が正しいか間違っているか、真である蓋然(がいぜん)性がどれくらい高いかをデータで検証する。もちろん、このデータは偏りがないほど良い。偏りを減らす第一歩は、検証をもっと客観化する作業だ。常識の範囲においても、直接的・間接的に確認してみる事項は多い。例えば、Act-Geo社顧問のアブレウ(Abreu)博士は当該分野の権威者なのか、「20%の成功可能性」についての根拠を別の専門家らもおおよそ受け入れているのか、Act-Geo社はこうした判断をできるほどの実力・実績・規模を備えた専門家集団なのか等々。韓国メディアが関心を寄せている部分でもある。
だが、こうした検証のためのデータは、人によって重みが違う。すなわち、ある種の決定的データというものがあり、その決定的な検証データは概して、リスクを取る側から出る。どのような決定がなされようと自分には何の損害も生じない人々に、徹底した検証を期待するのは非合理的だ。アブレウ博士の立場から考えてみよう。埋蔵可能性についての博士の前向きな解釈は、博士にいかなるリスクも生じさせない。博士は、石油公社が提示した過去15年間の資料を慎重に分析するよりも前に、東海の深海が石油を埋蔵し得る良い環境だということが「一目で分かった」と語った。「祝うべきことなのに、なぜ論争になるのか理解できない」とも述べた。こうした発言をしたことで博士が負うべきリスクがあるだろうか?
問題は韓国政府だ。韓国人は、Act-Geo社の前向きな解釈を合理的に疑ってみなければならない。なぜかというと、石油公社と共に迎日湾一帯を過去15年間共同探査したオーストラリアのエネルギー企業Woodsideが、2022年に「見込みなし」と結論付け、租鉱権の50%の持ち分すら返納し、撤収したからだ。まさにリスクを取る立場にあるWoodsideは撤収し、韓国国民が聞きたい話をしているAct-Geoは無血入城した。率直に言って、リスクを取らない者たちの意思決定をどれほど信頼できるだろうか?
コンサルティングは不必要と言っているのではない。自らの判断に対するリスクが全くないコンサルタントの意見は適当な線で参考とせよ、という話だ。より大きな問題は、昨今のこの論争において、リスクを取る当事者が韓国国民のほかにはいないように見える、という事実だ。ひょっとすると、国民に産油国の希望を与えた政府だと、内心満足しているのかもしれない。結局のところ、緩い検証による全てのリスク負担は最終的に韓国国民が負う。そういえば、前政権の国家主導事業(4大河川事業、原発廃止政策など)の展開も同様だった。
ぐずぐずしている創業者の卵を本物の創業者にする最速の方法の一つは、自分のカネを出して始めてみるように仕向けることだ。それでようやく徹底して検証を行い、成功のために見事な冒険を敢行する。国家経営も同じでないか? 誰もリスクを取らないまま「うまくいけばいいが、駄目でもただそれだけ」な新事業は、国民に夢を与えることはできない。
張大翼(チャン・デイク)嘉泉大学創業学部碩座(せきざ)教授(進化学)
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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