▲イラスト=キム・ソンギュ
仁川市ムンナム小学校は、全校児童590人のうち70%以上が多文化家庭で育った児童(以下、多文化児童)たちだ。正門の横断幕に書かれたハングルの下にはロシア語のキリル文字が併記されており、「学校からのおたより」も韓国語とロシア語の2カ国語で記されている。ムンナム小学校の教師たちは、放課後にロシア語の勉強もする。「韓国語が下手な多文化家庭の児童たちを褒めるため」だ。本紙が最近訪れたムンナム小学校の登下..
続き読む
▲イラスト=キム・ソンギュ
仁川市ムンナム小学校は、全校児童590人のうち70%以上が多文化家庭で育った児童(以下、多文化児童)たちだ。正門の横断幕に書かれたハングルの下にはロシア語のキリル文字が併記されており、「学校からのおたより」も韓国語とロシア語の2カ国語で記されている。ムンナム小学校の教師たちは、放課後にロシア語の勉強もする。「韓国語が下手な多文化家庭の児童たちを褒めるため」だ。本紙が最近訪れたムンナム小学校の登下校中の様子からは、韓国人児童と多文化児童たちが別々に通う姿が見受けられた。下校途中に出会った多文化児童たちは、ロシア語で会話しながらテコンドー塾のバスに乗り込んだ。
数年前まではこの学校の多文化児童は全体の20-30%程度だった。これまでは中国やベトナム系が多かったが、最近コロナ禍とロシア・ウクライナ戦争の余波により、ロシアや中央アジア系も増えたという。同校の多文化児童たちは、韓国語が全くできないか、学習の速度が遅い。「少数派」となってしまった韓国人児童たちは、多文化児童たちと授業を行っているため、数学や英語などの学習ペースが進まない。首都圏で多文化児童が50%以上を占める学校が増えたことで、韓国人の父兄たちはこうした学校への進学を避けるため、事前に住所を移転したり転校しさせたりしている。多文化児童たちとは分けて授業を行うよう求める苦情も頻繁に寄せられている。
ムンナム小学校のある保護者は「韓国語をロシア語に通訳する補助教師を拡充すべきだ」とし「韓国人の保護者である私がこういうことを望むとは夢にも思わなかった」と話した。同父兄は年内に娘を転校させる予定だ。多文化児童の占める割合が80%に上る近隣のハムバク小学校をはじめ、仁川市や京畿道安山市一帯の学校も同じような問題を抱えている。安山ウォンゴク小学校は2021年、多文化児童の占める割合が98.6%と、全校児童449人のうち韓国人児童はわずか6人だけだった。
ムンナム小学校2年のあるクラスは、児童18人のうち韓国人児童は5人、多文化児童は13人だ。他のクラスも韓国人児童7人、多文化児童10人だ。教師は韓国語で授業するが、ロシア語の通訳が足りない。多文化児童たちは韓国語を理解できないため授業に付いていけず、韓国人児童たちからは授業を早く進めるよう求める悪循環が続いている。
ムンナム小学校の韓国人父兄たちは今年初め、韓国人児童と多文化児童を分けて授業するかどうかを巡り、投票を提案した。しかし、多文化児童の父兄たちは「韓国人児童たちと教育を受けることを望んでいる」と反発。実現しなかった。同校に2人の子どもを通わせているチャンさん(45)は「ムンナム小学校に子どもを通わせたくなかったが、家の住所のため仕方なく送った」とし「子どもを転校させたいが、状況は思わしくない」と肩を落とす。
仁川教育庁世界市民教育課のパク・サンヒ奨学士は「ムンナム小学校は教育庁でもどのように支援すればいいのか分からないほど難題を抱えている」とし「1クラス当たりに占める多文化児童の割合が20-30%程度だった時は韓国人保護者たちも『子どもたちが海外の文化や外国語を学び、他人を理解する方法を学ぶきっかけになる』と期待を寄せたものの、多文化児童数が半数を超えて以降は韓国人保護者たちの不満が拡大した」と厳しい事情に触れた。パク奨学士は「教員の定員が減り続けている中で、教育庁は何とかして追加教員を確保しようと努力しているものの、人材不足が著しい」という。教師たちも多文化児童の割合が高い学校への赴任を避けるためだ。
各種工業団地がひしめく仁川・安山市には、多文化児童の占める割合が40%台から97%に上る学校が散在する。ソウル市も今年初めを基準に、多文化児童の占める割合が70%以上の小学校が2校、40%以上の学校は中学校を含めて10校だった。忠清北道清州市、全羅南道咸平郡にも多文化児童の割合が40-60%台に上る学校が数多く存在する。
これまで多くを占めていた中国、ベトナム、タイ系の多文化生徒に加え、ロシア、ウクライナ、中央アジア系の多文化生徒の流入も増えている。安山市のある中学校の校長は「全校生徒500人前後のうち、多文化生徒は2022年初めに20-30人程度だったが、ロシア・ウクライナ戦争をきっかけに一挙に流入した中央アジア、ロシア系の生徒たちが今では150人を超える」と話した。同校は、多文化生徒の入学希望者が増えたため、韓国語の入学試験を導入した。同校長は「試験を通じて多文化生徒の占める割合を30%台に抑えている」とし「入学を希望する多文化生徒たちを全て受け入れた場合、韓国人生徒に対する指導にも支障を来していたことだろう」と振り返る。
専門家たちは「大韓民国が多文化社会に移行する過渡期的現象」と口をそろえる。一線の教育庁と学校も、保護者と児童が同伴する韓国語教育の支援、多重言語学習資料の開発などを進めている。米国の学校のように英語とスペイン語、韓国語などを併用する「多重言語教育」も代案の一つとして議論されている。京仁教育大学のチャン・インシル韓国多文化教育研究院長は「韓国共同体の構成員が多元化したことで、さまざまな教育課程を開発し、運営する必要性がある」とし「多文化児童たちが韓国での教育に付いていけるようにすることが、今後の国家的課題になる」と説明した。
キム・スギョン記者、チャン・ユン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com