▲写真=UTOIMAGE
カルタゴの将軍ハンニバルは紀元前218年、2万6000人の少数兵力でアルプスを越えてローマに侵攻した。当時、欧州最強国だったローマは、毎年9万人の大兵力を動員して徹底抗戦したものの、ハンニバルの神出鬼没な戦略で連戦連敗を余儀なくされた。ハンニバルはその後16年間もイタリア半島を縦横無尽に駆け巡りながら、10余りの都市国家で構成されたローマ連合の構成国がローマを裏切ってカルタゴに自ら服属してくるの..
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カルタゴの将軍ハンニバルは紀元前218年、2万6000人の少数兵力でアルプスを越えてローマに侵攻した。当時、欧州最強国だったローマは、毎年9万人の大兵力を動員して徹底抗戦したものの、ハンニバルの神出鬼没な戦略で連戦連敗を余儀なくされた。ハンニバルはその後16年間もイタリア半島を縦横無尽に駆け巡りながら、10余りの都市国家で構成されたローマ連合の構成国がローマを裏切ってカルタゴに自ら服属してくるのをひたすらに待った。しかし、ハンニバルの軍隊の圧倒的な威勢にもかかわらず、ローマを裏切った都市国家は1、2カ国にとどまったことで、結局ハンニバルによるローマ征服は失敗に終わった。
韓国戦争(朝鮮戦争)当時、南労党総帥の朴憲永(パク・ホンヨン)は北朝鮮軍がひとまずソウルを占領すれば、韓国全域で左翼勢力が蜂起するため、南北統一は容易に達成できると豪語していた。しかし、北朝鮮が期待していた蜂起は、一切起こらなかった。2022年にウクライナに侵攻したロシアは、ひとまずウクライナ合併のための戦争の旗印さえ掲げれば、ウクライナ全域で親ロシア勢力の蜂起が続き、3日で占領できると期待した。しかし、ウクライナ領内で親ロシア蜂起は起きなかった。このような現象は、習近平が台湾に侵攻しても同じことだろう。
北朝鮮は、金日成(キム・イルソン)主席が1973年に「高麗連邦制」方式の平和統一を提唱して以来、50年間これを固守してきた。これは、南北がそれぞれ従来の政治体制を維持しながら、一つの連邦制国家として統合しようという主張だ。その主張の背景には、連邦制統一が実現すれば、韓国内の親北勢力による協力で北朝鮮が連邦政府と議会で圧倒的な主導権を掌握するという計算があった。これは、いわば北朝鮮方式の「平和的対南吸収統一構想」だった。
北朝鮮は、過去の韓国に対する軍事的優位が次第に崩れ、1990年代に入って武力統一の可能性が急速に低下すると、非軍事的方法で韓国を吸収統一するための高麗連邦制と平和体制構想に執着した。これを実現するためには、韓国内の友好勢力の積極的な呼応が必須だが、実際は北朝鮮の期待にはるか及ばないものとなった。2000年に金大中(キム・デジュン)大統領との間に交わされた6・15南北共同声明で「低い段階の連邦提案」を巡り意見の歩み寄りが見られ、07年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領との間で交わされた10・4南北共同宣言で「6・15宣言の積極的具現」が合意を見たものの、18年に交わされた文在寅(ムン・ジェイン)大統領との9・19平壌共同宣言では連邦制統一問題が姿を消してしまった。
連邦制統一案が掲げる「1国家2体制」論理の重要な試金石だった香港の民主主義が、中国共産党によって踏みにじられた状況で、弱り目にたたり目で民族問題に無関心なMZ世代( M〈ミレニアル〉世代とZ世代を合わせた1980-2010年ごろまでに生まれた年齢層)まで登場したことで、高麗連邦制は一切考慮されなくなった。韓国国内の親北勢力にも、もはや北朝鮮問題は単なる政治的手段に過ぎず、余生を北朝鮮で過ごしたり、子どもを北朝鮮に留学させたりする人は誰もいない。彼らが北朝鮮に提供してきた経済援助も国連制裁により遮断され、北朝鮮が千辛万苦の末に成し遂げた核武装も、韓国に対する北朝鮮の優越性を保障することはできなかった。何気ない歳月の変化の中で、ただ北朝鮮当局だけが対南吸収統一というむなしい妄想を抱いてきたに過ぎない。
そんな中、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長は新年早々、対南談話文を通じて韓国を「大韓民国」と称し、南北関係を民族関係ではなく「敵対的国家関係」と規定。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は韓国を「主敵」と称し、韓国が武力使用を企てたり、北朝鮮の主権と安全を威嚇したりすれば、即座に武力を総動員して焦土化すると警告した。このような北朝鮮の動きは、対南脅威というよりは、高麗連邦制に伴う対南吸収統一という幻想の「終わり」を合理化すると同時に、韓国による吸収統一の可能性に対する隠れた恐れを表出したものと見える。
北朝鮮によるこうした対南政策の変化は、韓国の対北政策にも重要な示唆点を与えている。韓国は自由民主体制での平和統一を追求してきたが、分断国が合意による平和統一を成し遂げたケースは人類史上前例がない。核武装した北朝鮮が、いくら深刻な経済難に直面しても、自ら共産体制を投げ捨てて投降する可能性もない。高麗連邦制が非現実的だったように、韓国の統一政策も現実化する可能性は低いと思われる。そのため、もはや韓国も南北関係を曖昧な特殊関係として扱うよりは、むしろ国家同士の関係として確立し、国際法を適用することが、南北協力と安保管理にとってより効果的だ。かつて分断時代の東西ドイツの関係も、両国の外交部(日本の省庁に当たる)の管轄する国家間の関係だったが、これはドイツ統一に向け何らの障害にもならなかった。
李容濬(イ・ヨンジュン)世宗研究所理事長・元外交部北朝鮮核大使
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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