▲日本軍慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さん。李さんら原告団は23日午後、ソウル市瑞草区のソウル高等裁判所で日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の二審で勝訴し、声を上げて喜んだ。/聯合ニュース
日本政府に対して韓国国内に居住する日本軍慰安婦被害者に損害賠償の支払いを命じる初めての控訴審判決が23日に宣告された。故クァク・イェナムさん、故・金福童(キム・ボクトン)さんの遺族や李容洙(イ・ヨンス)さんなど原告団16人が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟での判決だった。一審は「国際法上の『主権免除』により訴訟は成立しない」との判断を下したが、二審では逆の結論となった。主権免除とはあ..
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▲日本軍慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さん。李さんら原告団は23日午後、ソウル市瑞草区のソウル高等裁判所で日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の二審で勝訴し、声を上げて喜んだ。/聯合ニュース
日本政府に対して韓国国内に居住する日本軍慰安婦被害者に損害賠償の支払いを命じる初めての控訴審判決が23日に宣告された。故クァク・イェナムさん、故・金福童(キム・ボクトン)さんの遺族や李容洙(イ・ヨンス)さんなど原告団16人が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟での判決だった。一審は「国際法上の『主権免除』により訴訟は成立しない」との判断を下したが、二審では逆の結論となった。主権免除とはある国の裁判所が他国による公権力行使に対して裁判権を行使できないとする原則だ。
ソウル高裁民事33部(ク・フェグン裁判長)は同日日本政府に対し、李容洙さんら被害者1人当たり2億ウォン(約2300万円)とこれに対する遅延損害金の支払いを命じる判決を下した。この裁判の争点は過去に日本が韓国を占領した状態で韓国民を日本軍慰安婦として強制動員した行為に対する主権免除が認められるかどうかだった。
2021年4月の一審では「日本による慰安婦被害者への性的関係の強要は日本による(違法な)主権行為であり、主権免除が認められる」「慰安婦被害者による日本政府への損害賠償請求は認められない」との判断を下した。
これに対して今回の控訴審は「日本が韓国領土で韓国民に行った不法行為に対し、主権免除が認められないとする国際慣習法があると考えるのは妥当」としながらも「日本は1930年代後半から40年代初めまで被害者を拉致、脅迫し、慰安婦生活を強要した不法行為に対して損害賠償すべきだ」と判断した。
裁判長は「主権免除の法理は他国の裁判所が裁判権を一切行使できないとする『絶対的免除』から、非主権的行為に対しては主権免除が認められないとする『制限的免除』へと徐々に発展してきた」「国連裁判権免除条約、欧州国家免除条約、イタリア裁判所のフェリーニ判決、ブラジル最高裁判所の判決、2022年4月に宣告されたウクライナ最高裁判決などから、主権免除を認めない内容の判決は数多く確認されている」などと説明した。
イタリア最高裁は2004年、第2次大戦当時ドイツで労役が強制されていたルイキ・フェリーニさんがドイツ政府を相手取って起こした裁判で、自国の裁判権を認めフェリーニさん勝訴の判決を下した。これに対してドイツはICJ(国際司法裁判所)に提訴し、ICJは主権免除に基づきドイツの主張を認めた。これについて今回の控訴審判決では「当時ICJは武力紛争中だったケースの主権免除を認めたが、日本の慰安婦動員は(韓日間の)武力紛争中ではなく、ICJ判決とも矛盾しない」との解釈が下された。
これまで日本軍慰安婦被害者が日本政府を相手取り起こした損害賠償請求訴訟はこの事件を含め2件だ。故ペ・チュンヒさんら12人が起こした訴訟では一審から元慰安婦らの主張が認められた。しかし当時日本政府は控訴など法的対応を全く取らなかったため、この判決はそのまま確定した。
この事件の一審宣告は2021年1月だったが、裁判長は「反人権的行為に対しては主権免除が適用されない」として日本政府に対し被害者1人当たり1億ウォン(約1100万円)の賠償を命じた。これに対して日本政府は「絶対に受け入れられない」として強く反発した。
日本政府の対応を見ると、今回の控訴審判決もそのまま確定する可能性が高いと法律に詳しい専門家はみている。控訴審の裁判長は「日本政府に送達する書類は返送され、日本政府が1965年の請求権協定と2015年の韓日合意が損害賠償請求権を消滅させたかなどについて弁論しなかった」と明らかにした。このままこの事件の判決が確定すれば、大法院(最高裁判所)が主権免除部分について判断を下す機会もなくなってしまう。
ある専門家は「日本政府の損害賠償責任を認める判決が確定すれば、韓国国内の日本政府の資産を差し押さえて売却し、被害者に賠償金を支払う手続きが始まる」「その過程で韓日関係にマイナスの影響が出るかもしれない」と予想した。2021年1月の一審判決が確定した訴訟では、日本政府の資産を把握する手続きがすでに行われている。
ある国際法の専門家は「司法による判断の範囲を超えた判決だ」「国家間条約で解決すべき問題に司法が判断を下すことは国際法的に正当かどうか疑問だ」と指摘した。別の専門家は「日本大使館や文化院などを強制的に差し押さえるのか」「日本企業を相手取った強制徴用訴訟よりもはるかに大きな波紋が出るかもしれない」との見方を示した。
日本外務省の岡野正敬外務事務次官は駐日韓国大使館の尹徳敏(ユン・ドクミン)大使を呼び「(控訴審)判決は非常に遺憾」とした上で「日本政府としては決して受け入れられない」として抗議した。日本メディアが伝えた。日本政府は「国際法違反の状態を修正する適切な措置を韓国政府が取るべきだ」と要求したという。
ヤン・ウンギョン記者、パン・グクリョル記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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