フッ素は土壌汚染物質として規制を受ける。韓国の土地環境保全法の基準によれば、住居地域と林野・農地などでは土壌1キログラム当たり400ミリグラムを超えてはならない。問題はこの基準が主要国に比べ非常に厳格であることだ。
米国では3100ミリグラム、日本では4000ミリグラムまで許容される。韓国の規制は米国の8倍、日本の10倍厳しい。ほとんどの国は特に基準も設けていない。韓国は21年前に世界で最も厳し..
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フッ素は土壌汚染物質として規制を受ける。韓国の土地環境保全法の基準によれば、住居地域と林野・農地などでは土壌1キログラム当たり400ミリグラムを超えてはならない。問題はこの基準が主要国に比べ非常に厳格であることだ。
米国では3100ミリグラム、日本では4000ミリグラムまで許容される。韓国の規制は米国の8倍、日本の10倍厳しい。ほとんどの国は特に基準も設けていない。韓国は21年前に世界で最も厳しい規制をつくった。環境を守るために新たに設ける規制だから、どうせなら世界で最も厳しくしようと考えたようだ。
フッ素の土壌含有量が基準を超える土地は浄化作業をしなければ家屋も工場も建てることはできない。工事期間が延び、費用がかかる。最近5年間にフッ素関連の土壌浄化に要した費用は首都圏だけで5853億ウォン(約657億円)に達する。
ソウル市瑞草区方背第5区域の再開発組合は、2年間かけてフッ素土壌汚染浄化作業を行ったために事業が遅れた。680億ウォンかかった。ソウル市竜山区厚岩洞のソウル市教育庁新庁舎敷地、京畿道の金浦市立図書館は工事が1年遅れた。最近ではソウル市麻浦区上岩洞一帯の新規焼却場予定地でもフッ素問題が浮上した。
政府関係者は「韓国の地質特性を反映しておらず、合理的な水準で基準を再設定する必要がある」と話した。数字だけ直せばよさそうなものだが、本格的な作業はこれからだ。
基準緩和を望むのは建設会社だ。浄化費用の負担が重いほか、作業に6~12カ月かかるため、工事遅延による資金負担と完成遅延につながるからだ。
反対意見もある。中小企業である土壌汚染浄化業者60社余りは受注が減少し、経営が厳しくなるからだ。環境汚染を防ぐ企業だが、規制緩和で大きな被害を受けかねない。もし大企業対中小企業、建設会社対環境企業の対決構図となれば、問題がこじれる恐れがある。監督官庁である環境部の立場が揺らげば、事態はさらに複雑化しかねないと懸念する声がある。
規制改革とは産業界の足かせを解くことであり、新産業を育てようとするものだ。その過程で新しい事業モデルは既存業界による攻撃で崩壊してしまうことが多い。そうした衝突と失敗が規制改革、革新の場面ごとに繰り広げられる。
米国、カナダで認められている度付きメガネのオンライン販売は、メガネ会社の反対に阻まれている。コンビニで売られている安全常備薬は、10年以上13品目から一つも増えていない。薬剤師らが「薬物が誤用・乱用される懸念がある」として反対している。
韓国人対象の民泊はモーテルや旅館などの反発が問題だ。数百項目の消防・安全・施設基準を守らなければならない宿泊業に対し、オンラインプラットフォームに加入さえすればよい民泊が参入してくるのは不公平だという指摘を乗り越える新たな道を探らなければならない。弁護士を紹介する法律サービスプラットフォーム「ロートーク」は弁護士協会の反対で困難に直面した。
規制改革は既存法令の文言を改めることにとどまらない。未来に向けた新しい道を切り開くことだ。規制改革は単に行政便宜主義、省庁利己主義を打破することではない。社会的合意を形成してこそ完成できる。さもないと、ライドシェアサービス「ウーバー」は消えることになり、配車サービスを締め付け、タクシー業界の既得権益を守るための「タダ(TADA)禁止法」が登場することになる。結局革新と未来がストップしてしまう。
李陳錫(イ・ジンソク)経済部上級記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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