▲2018年9月19日、平壌の百花園迎賓館で「9・19南北軍事合意」に署名し文書を示す韓国国防部(省に相当)の宋永武(ソン・ヨンム)長官(当時)と北朝鮮人民武力相。左後方は文在寅(ムン・ジェイン)前大統領、右後方は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記。/NEWSIS
9・19南北軍事合意の影響で、韓国軍は延坪島やペンニョン島などに配備されたK9や匕弓など主力兵器の訓練を行うたびに、これらを貨物船やバージ船、トレーラーなどで慶尚北道浦項にまで運搬していたことが26日までにわかった。訓練後に戻る距離を合わせれば往復1200キロ移動する「遠征訓練」を行っていたことになる。
これに対して2010年に延坪島を砲撃した北朝鮮軍第4軍団は、甕津半島などから韓国の西海の島を..
続き読む
▲2018年9月19日、平壌の百花園迎賓館で「9・19南北軍事合意」に署名し文書を示す韓国国防部(省に相当)の宋永武(ソン・ヨンム)長官(当時)と北朝鮮人民武力相。左後方は文在寅(ムン・ジェイン)前大統領、右後方は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記。/NEWSIS
9・19南北軍事合意の影響で、韓国軍は延坪島やペンニョン島などに配備されたK9や匕弓など主力兵器の訓練を行うたびに、これらを貨物船やバージ船、トレーラーなどで慶尚北道浦項にまで運搬していたことが26日までにわかった。訓練後に戻る距離を合わせれば往復1200キロ移動する「遠征訓練」を行っていたことになる。
これに対して2010年に延坪島を砲撃した北朝鮮軍第4軍団は、甕津半島などから韓国の西海の島を狙った砲撃訓練をこの4年間で100回以上実施してきたという。文在寅(ムン・ジェイン)政権は9・19合意で砲撃訓練ができない西海緩衝区域を海上に限定した。そのため韓国軍は訓練に制約を受けたが、北朝鮮軍は甕津半島など内陸で砲撃訓練を行っていたのだ。ペンニョン島など西北島嶼は西海緩衝区域内にあるため、今も砲撃訓練はできない。
本紙が西北島嶼部隊による砲撃訓練の現状などについて調べたところ、韓国軍は延坪島やペンニョン島などに配備された自走砲などを移動させて訓練を行ってきたため、過去4年間で130億ウォン(約14億円)以上の国防費を追加で支出していた。西北島嶼を管轄する海兵隊は9・19合意以前の2017年までK9自走砲や天舞(多連装ロケット砲)などを使った砲撃訓練を現地で実施していた。K9の場合は海上での訓練を一年に4回行っていた。
ところが文在寅政権が2018年に北朝鮮と9・19合意を締結したため、西北島嶼での砲撃訓練は全面的に中断した。当時韓国政府は北朝鮮の要求を大幅に受け入れ、「北方限界線(NLL)を基準に北に50キロの草島から南に85キロの徳積島までの海域で砲撃訓練を中止する」「海岸法や艦砲は砲身にカバーをつける」「砲門も閉鎖する」などで合意したのだ。この合意により海兵隊はK9による訓練の回数を従来の年4回から2回へとギリギリにまで減らした。訓練を行う場合も現地で自走砲などを取り外し、民間のバージ船などをレンタルして海を渡って京畿道漣川郡や遠くは慶尚北道浦項まで運ばねばならなかった。
中でも北朝鮮軍兵士による侵入阻止などの防衛を担うペンニョン島に配備された誘導用ロケット「匕弓」、またイスラエル製の対戦車ミサイル「スパイク」は直線距離で460キロ、移動距離600キロ以上の海兵隊浦項射撃場まで運ばねばならなかった。これらの兵器が本土に移動した際の戦略面での空白は金浦や浦項などに配備された兵器で埋めていた。兵器や兵力移動時には安全面などでも問題が発生していた。
■北朝鮮は黄海道でペンニョン島攻撃を想定した砲撃訓練を100回以上実施
これに対して北朝鮮は甕津半島など内陸で9・19合意の影響を受けず砲撃訓練を行っていた。中でも北朝鮮軍第4軍団はこの4年間で100回以上にわたり韓国の西北島嶼や仁川、京畿など首都圏を狙った砲撃訓練を実施した。第4軍団は複数の歩兵師団や砲兵旅団などで編成されており、240ミリ放射砲をはじめ数多くの野砲や海岸砲で武装している。2010年に故ソ・ジョンウ下士官など23人の死傷者が出た延坪島砲撃事件もこの第4軍団によるものだった。北朝鮮は島嶼地域のすぐ背後に屏風のように広がる黄海道の海岸を積極的に活用し、いつでも第2の延坪島砲撃を敢行できる体制を維持してきたのだ。文在寅政権の担当チームは9・19合意に向けた交渉で西海の緩衝区域を海上に限定したため、韓国軍だけにより多くの足かせをはめる不利な結果を招いていたのだ。
実際に北朝鮮は9・19合意からわずか1年あまりの2019年11月に緩衝水域に向け砲撃を行ったのを皮切りに、これまで西海だけで合計8回も合意を破り海岸砲による砲撃を行っていた。北朝鮮が開城の南北共同連絡事務所を爆破した事件も合わせれば、9・19合意違反の回数は合計18回になるが、その半分近くが黄海道の半島地形を活用し、延坪島など韓国の西北島嶼を狙った砲撃だったのだ。
韓国軍とその周辺では、9・19合意に向けた交渉が作戦計画や軍事セキュリティなどの面で法律に違反しない手続きと検討過程を経て行われたか、監査を通じて解明を求める声が上がっている。当時から韓国軍合同参謀本部と海兵隊から北朝鮮の要求に強く反対する意見が出たにもかかわらず、事実上北朝鮮の要求をほぼそのまま受け入れ合意に至ったからだ。ある韓国軍元幹部は「野党は9・19合意で西海が平和水域になったと主張しているが、西北島嶼の防衛体制はぜい弱になっていた」と指摘した。
盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com