パレスチナのイスラム武装勢力「ハマス」が7日にイスラエルを急襲して大きな被害が出る中、こうした大規模な攻撃を見抜けなかったイスラエル情報当局の失策が人命被害を大きくしたという分析が登場している。8日(現地時間)にニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、イスラエル国防省の官僚や米国高官の話を引用し、イスラエル情報機関のどこも、ハマスが精巧な陸海空合同奇襲攻撃を準備しているという情報をつかんでいなかっ..
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パレスチナのイスラム武装勢力「ハマス」が7日にイスラエルを急襲して大きな被害が出る中、こうした大規模な攻撃を見抜けなかったイスラエル情報当局の失策が人命被害を大きくしたという分析が登場している。8日(現地時間)にニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、イスラエル国防省の官僚や米国高官の話を引用し、イスラエル情報機関のどこも、ハマスが精巧な陸海空合同奇襲攻撃を準備しているという情報をつかんでいなかった、と報じた。イスラエル政府は「戦争勝利が優先で、責任追及は後にしたい」という立場だが、専門家や内部消息筋は、イスラエルが情報戦で惨敗した原因を既に分析している。
(1)先端技術に依存し、「ヒューミント」に穴があいた
「世界最強」を掲げてきたモサドなどイスラエル情報機関は、ここ数年、情報活動の手段をデジタルへと大幅に転換した。ビッグデータ、人工知能(AI)といった最先端デジタルの技術が押し寄せる中、他国の情報当局と同じく、これらの技術を情報戦の新たな「武器」として大々的に導入した。モサドはこれまで、厳しく訓練された最精鋭エージェントが集めるヒューミント(HUMINT. 人的情報)で名声を得てきたが、スパイ志願者の減少や人的ネットワーク構築の難しさなどにより、スマートフォンの盗聴などデジタル技術に対する依存度が高まっている。問題は、ハマスがこれらの技術を避ける方法を習得したということだ。イスラエルの退役将軍、アミール・アビビは「ガザ地区内に拠点を整備できないイスラエル情報機関は、次第に、新技術手段に頼るようになった。逆にハマスは、こうした技術を避けられる方法を会得した」とAP通信に語った。新技術を避ける方法は、意外と簡単だった。旧技術に戻るのだ。APは「ハマスは文字通り『石器時代』へと回帰して、スマートフォン・コンピューターの使用を中止し、デリケートな会話は通信信号がキャッチされない地下で行う-という形でデジタル情報手段を無力化した」と伝えた。
(2)政治的分裂が情報に「壁」を作った
このところイスラエル国内で起きている政治的混乱と分裂が情報機関の力量を落とした、という分析もある。イスラエルでは連日、大規模な反政府デモが起きた。この過程でモサド(海外担当の情報機関)、シンベト(国内情報機関)だけでなく軍・警察の高官らが大挙して政府に反旗を翻し、幹部らが制服を脱いだ。元モサド長官のタミル・パルドは当時、「われわれは外部の脅威に対処することには慣れていたが、最大の脅威は内部にあることを悟った」と述べ、公然と政府を批判した。情報機関と政府の対立する構図が出来上がったことで、緊密な情報交流に支障が出たこともあり得る、という分析がある。ワシントン・ポスト紙(WP)は、こうした状況は2001年の9・11米国同時多発テロ発生当時に似た側面がある、と分析している。WPは「当時、連邦捜査局(FBI)と中央情報局(CIA)との間で競争が激化し、情報共有体制がきちんと動かなかった」とし「イスラエル情報機関は、極右政党と連立を組んだネタニヤフ政権の司法無力化などに激しく反対してきており、こうした不和が情報の穴につながったこともあり得る」と報じた。
(3)同盟国の警告を無視、紛争の長期化による安易さ
同盟国が警告し続けたにもかかわらず、自国の情報力を過信してこれを過小評価したことも問題を大きくした原因と目されている。エジプト情報当局の関係者はAPに「われわれは、何か大きなこと(something big)が発生する可能性があると繰り返しイスラエルに伝えたが、イスラエルの人間は西岸地区にばかり気を取られてガザ地区の脅威は無視した」「爆発的な状況が浮上しつつあると警告したにもかかわらず、イスラエルはこれを過小評価した」と語った。パレスチナ地域のイスラム武装勢力との間で大小の紛争が数十年にわたって続く中、「危険な状況」に対する警戒が薄れた-という分析もある。NYTは「ハマスの武装勢力は最近、ブルドーザーで(ガザ地区とイスラエルの境界にある)壁を壊すなどの訓練を行ったが、イスラエル軍はこれを見ても『通常の脅威』程度にしか感じず、無視した」と伝えた。
キム・ジウォン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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