▲全国鉄道労組の組合員らが9月16日午後、南営駅前(ソウル市竜山区)の大通りで開かれた全面スト勝利決意大会でスローガンを叫んでいる様子。/写真=ニュース1
ソウル警察庁が運営する「きょうの集会/デモ」というウェブページがある。ソウル警察庁に申告があった集会の内容を、場所と人員規模、そして管轄署を日付順に整理して公表している。9月16日土曜日の集会を調べてみると、さまざまな集会の申告がびっしり記されている。韓国大統領の執務室がある漢江大路、伝統的なソウルの中心地である世宗大路と鍾路、そして韓国国会がある汝矣島で、数万人が参加する集会が車道をふさいで行..
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▲全国鉄道労組の組合員らが9月16日午後、南営駅前(ソウル市竜山区)の大通りで開かれた全面スト勝利決意大会でスローガンを叫んでいる様子。/写真=ニュース1
ソウル警察庁が運営する「きょうの集会/デモ」というウェブページがある。ソウル警察庁に申告があった集会の内容を、場所と人員規模、そして管轄署を日付順に整理して公表している。9月16日土曜日の集会を調べてみると、さまざまな集会の申告がびっしり記されている。韓国大統領の執務室がある漢江大路、伝統的なソウルの中心地である世宗大路と鍾路、そして韓国国会がある汝矣島で、数万人が参加する集会が車道をふさいで行われた。
数万人がほぼ毎週、あふれるように街頭に出てきてデモをやる理由は、果たして何なのだろうか。韓国政府・政界に対する不満と不信が原因だと、多くの人が思っているが、OECD(経済協力開発機構)が最近発表した「図表で見る世界の行政改革2023(Government at a Glance)」を見ると、当のデモの原因は政府に対する信頼と共に、集団的な意思表示を通して要求事項が受け入れられるだろうという期待心理があるからだ-と分かる。
OECDの報告書によると、政府への信頼度が「高い」あるいは「普通」と回答した比率は、韓国の場合、2021年現在で48.8%を記録し、OECD平均の41.4%よりも高く出ている。ノルウェー(63.8%)、フィンランド(61.5%)など北欧諸国に比べれば低いものの、日本(24%)、フランス(28.1%)、英国(34.8%)よりは圧倒的に高い水準で、カナダ(44.7%)、オランダ(49.1%)と並ぶ水準になっている。韓国国民は基本的に、中央政府の効率性と問題解決能力を信頼しているのだ。
きちんと作動しない公共サービスがある場合、大勢の人が不満を提起すれば改善され得る、と回答した比率を見ると、韓国の場合はOECD平均の40.1%をはるかに上回る57.6%を記録した。関連の調査が行われた22カ国中、最高の水準を示した。日本(25.8%)はもちろん、フランス(38.1%)、英国(34.4%)、スウェーデン(40.6%)をもかなり上回るこうした回答は、韓国国民が過去数十年間、「陳情」を通してより高度な公共サービスを受けてきた経験に基づいている。集団的意思表示が問題解決への近道であることを、韓国人は皆理解しているのだ。
公聴会など公の意見集約(public consultation)プロセスを通して提示された意見が採択されたり反映されたりする可能性が高い、という回答の比率も、韓国では48.5%に達するが、これはOECD平均の32%をかなり上回る数値だ。日本(16.8%)はもちろん、意見集約がうまく行われていることで有名な英国(29%)、スウェーデン(32%)、オーストラリア(35%)よりもはるかに高い値が出ている。個人または集団が意見を表明すれば、どういう形であれ、一定程度影響を及ぼす-と韓国人は考えているのだ。
中央政府に対するこうした高い信頼水準に比べ、自治体に対する認識は異なる。自治体レベルの意思決定に影響を及ぼせるかという質問に対しては、「できる」と回答した割合は44%で、OECD平均の41%に近い。英国(50%)、メキシコ(51%)、アイルランド(52%)、オランダ(53%)と比べるとかなり低い水準だ。こうした結果は、韓国人の認識をよく示している。すなわち、中央政府に対する信頼は相対的に高く、多くの人が集団的に意思表示をして要求を行えば、それが受け入れられるだろうと期待している一方、自治体レベルで行われる意思決定に影響を及ぼすのは難しいと感じているのだ。
こうした意識構造により韓国社会は、どんな課題であれ、光化門、竜山、そして汝矣島という中央行政・中央政治の舞台にまずは上げることを望む。舞台に上げる方法の中でも、大規模に人員が動員される集会やデモが最も効果的かつはっきりしているので、それを選択する。効率的で問題解決能力を持つと感じられる中央政府、そしてここに影響力を行使している国会を、どういう形であれ当事者にしてこそ、望みのものが得られるというのが韓国の問題解決法なのだ。
もしかすると、こうした姿は韓国人のDNAに深く刻まれている本能的なものなのかもしれない。駐韓米国大使館に7年、外交官として務めたグレゴリー・ヘンダーソンが1968年に出版した『朝鮮の政治社会-朝鮮現代史を比較政治学的に初解明〈渦巻型構造の分析)』で読み解いた韓国の姿は、55年がたった現在も有効だ。ヘンダーソンが描写した韓国は、全ての問題を中央権力を通して解決しようとし、誰もが中央のイシューにしがみつく巨大な渦巻きのような姿だ。村落と王権の間に、制度的機構や自発的結社体などの中間媒体集団が形成されず、皆がソウルの権力を渇望、あるいは批判することに熱中している-というヘンダーソンの分析は、厳しいまでに現実的だ。中央政治に対しては絶えず関心を示すのに、当の自分が住み、生活している地元の政治に対しては関心を持たない矛盾を説明する上で、ヘンダーソンの分析は依然として最も有効だ。
誰もが中央政府と政界を見つめ、肝心の自分自身で解決しようとする意思と能力は次第に弱くなりつつある。政界と中央政府を通していっぺんに予算を引っ張ってきて、制度を変えさせ、組織と人員の配分を受けるのが最も効果的であって、そこでわざわざ自分の力と努力でもって何かをやる必要性を感じられないのだ。政府と政界もまた、何かをやろうと思ったら必ず予算と組織を確保しなければならないという観念にとらわれている。こうした視点で見ると、ニューヨーク・マンハッタンのセントラルパークがニューヨーク市ではなく民間によって構成された管理委員会によって日常的な管理が行われ、全体予算の80%以上を寄付などを通して調達している様子はひたすらなじみがない。韓国人は「自分のことは自分でやる」という自助の精神を失ってしまっているので、米国大統領のテーブルに周期的に載せられる干ばつモニター(US Drought Monitor)の地図が、実は連邦機構ではなくネブラスカ大学がボランティアと機関の協力を通して作っている、ということも容易には理解し難い。
いくら効率的で能力ある政府でも、全てを解決してやることはできない。自らの問題を当事者が解決していこうとする認識の転換が、相次ぐ大規模デモによる不便を最小化する、一番の早道なのだ。
チェ・ジュンヨン法務法人律村専門委員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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