▲写真=NETFLIX
他人に尻を見せるのは嫌だったが、カネのために仕方なく力士になった主人公は、相撲のあらゆる伝統を拒否する。取組では格闘技のまね事をする。「俺は俺のやり方で勝つ」と言ったものの、無残にやられる。同じ部屋の力士が彼に言う。「それって逃げてるだけだよ。相撲から」
7月末、韓国国内で公開された動画配信サービス「NETFLIX(ネットフリックス)」オリジナルシリーズ『リキシ』=原題:『サンクチュアリ -聖域..
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▲写真=NETFLIX
他人に尻を見せるのは嫌だったが、カネのために仕方なく力士になった主人公は、相撲のあらゆる伝統を拒否する。取組では格闘技のまね事をする。「俺は俺のやり方で勝つ」と言ったものの、無残にやられる。同じ部屋の力士が彼に言う。「それって逃げてるだけだよ。相撲から」
7月末、韓国国内で公開された動画配信サービス「NETFLIX(ネットフリックス)」オリジナルシリーズ『リキシ』=原題:『サンクチュアリ -聖域-』=の評判が口コミで広がっている。「リキシ」とは「力士」、つまり相撲取りのことだ。多額の借金ですし店も家庭も失った父親に、店を取り戻してやりたいと思った「札付きの不良」の主人公・小瀬清(おぜ きよし)がカネを稼ぐために相撲部屋に入り、力士「猿桜(えんおう)」として成長していく全8話の日本のドラマだ。「16歳以上視聴可」というレーティングに加え、テーマもなじみがないことから、それほど注目されてはいなかったが、海外評点サイト「Rotten Tomatoes(ロッテントマト)」でも専門家推薦率86%と高い評価を受けている。
典型的なスポ根の成長ドラマだと思って見始めた人も、期待以上の面白さが感じられるというのが大きな強みだ。主人公の不幸な家庭史が描かれる序盤は新派劇のようだが、家を出て相撲場所に出る中盤から爆笑ポイントが続く。札付きの不良だった主人公が保守的な相撲部屋で繰り広げる「反乱」に、ガクガクと手を震わせる者もいれば、ワクワクする者もいる。「笑い」のバトンを引き継いで後半部まで視聴者をつかんで離さないのは「サスペンス」要素のあるストーリー展開だ。主人公の最大のライバルである静内(しずうち)は子どものころに自分の母親と弟を殺した殺人犯かもしれない…という描写が、視聴者を退屈させることなく引き込んでいく。実際の元力士が演じた静内が主人公と取組をするシーンは、見ている側も一緒に体に力が入るほどリアリティーがある。主人公の態度が変化し、稽古に専念するようになる古典的な演出は後半部だけで、前半の活きの良さは保たれている。
登場人物同士の関係性も淡泊ながら密度がある。「好感度ゼロ」の主人公より目が行くのは、彼を「見守る人たち」だ。相撲部屋の猿将(えんしょう)親方や先輩力士の猿谷(えんや)、相撲新人記者の国嶋飛鳥、そして清の父・浩二などだ。彼らは登場するほとんどのシーンで主人公を見守っている。当たって砕けて前に進むことができるのは主人公自身だけなので、その少し後ろから見守っているだけで十分だ。体格が自分の5倍ほどある主人公のために、焼き餃子を一つだけ食べて残しておくという足の悪い父を演じた役者の演技は胸にしみる。韓国語タイトルは『リキシ』だが、原題は『サンクチュアリ -聖域-』だ。聖域とは、相撲の取組を行う「土俵」であり、自分の人生を懸けた対象のことでもある。ドラマの後半部ではそれぞれ自分の聖域に対する心構えについて語ろうとしているように感じる。相撲のベテラン記者は「力士が取組前に土俵に向かって頭を下げるときの腰の角度だけ見ても、どちらが勝つか分かる」と話す。態度で勝者か敗者かが分かれるということだ。主人公にもこうした態度や姿の変化が現れる。
決して相撲を美化するドラマではない。非人間的な稽古のやり方、誤った慣習、八百長のような恥部まですべて見せている。しかし、時代が変わったからといって、すべての伝統を壊す必要はないと語りかける。「土俵に女は入れない」と言われて怒る後輩記者の国嶋に、ベテラン記者はこう言う。「その異常(女人禁制という旧時代的な慣習)の先にしか見えてこない世界があるんだよ」。このような観点こそ、伝統を素材にした日本のドラマが着実に作られている力なのだろう。
キム・ミンジョン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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