▲写真=UTOIMAGE
今年4月、中国空母の勢力誇示は最高潮に達しました。中国初の国産空母「山東」は、4月8日から10日まで台湾東方370キロの海上で台湾包囲攻撃訓練を行いました。台湾の蔡英文総統が米国で連邦議会のケビン・マッカーシー下院議長と会談し、戻ってきた直後のことでした。
訓練が終わると、今度は南東へと向かいました。グアム西方710キロの海上まで進出して1週間、140回にわたりJ15(殲15)艦載機の離着艦訓練..
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▲写真=UTOIMAGE
今年4月、中国空母の勢力誇示は最高潮に達しました。中国初の国産空母「山東」は、4月8日から10日まで台湾東方370キロの海上で台湾包囲攻撃訓練を行いました。台湾の蔡英文総統が米国で連邦議会のケビン・マッカーシー下院議長と会談し、戻ってきた直後のことでした。
訓練が終わると、今度は南東へと向かいました。グアム西方710キロの海上まで進出して1週間、140回にわたりJ15(殲15)艦載機の離着艦訓練を行いました。有事の際に台湾を支援するルートを遮断する訓練をしたのです。中国国営の各メディアは「山東が遠距離総合作戦能力をアップグレードした」「台湾は今や袋のねずみ」と大々的な宣伝を打ちました。
■「手抜き工事」疑惑の中、西太平洋で初の訓練
これに対し米国は、大して気に留めない雰囲気です。台湾包囲訓練当時、山東と370キロの距離を保ちつつその訓練を見守った空母ニミッツ機動部隊は、訓練が終わると正反対の西方へと向かい、南シナ海に入りました。山東の監視は日本の海上自衛隊に任せました。
就役から4年を経て西太平洋に出てきた山東が「基礎体力訓練」をする様子を、わざわざ見守る理由はない、という意味でしょう。
中国にとって2隻目の空母となる山東は、2019年の就役後、一度も西太平洋に進出せず、「性能に問題があるのではないか」という見方がかなりありました。2021年6月には、造船所に入った山東の飛行甲板にぶすぶすと穴が開いている様子が衛星写真で捕捉され、手抜き工事疑惑が持ち上がったこともあります。
山東は、こうした疑惑を解消しようとするかのように一挙にグアム西方まで進出し、夜間の艦載機離着艦など、難度の高い訓練をこなしました。本国から2000キロ以上離れた遠洋まで進出して作戦を行う能力を備えたということを、立証してみせたかったのでしょう。
■空母ニミッツは山東を相手にもせず
米国が山東を「大したことはない」と感じているのは、相応の理由があります。旧ソ連の空母を手本に作ったこの空母は、性能や戦闘力の面で米空母機動部隊の相手にはならないのです。
中国は2012年、ウクライナから入手した旧ソ連の空母「ワリヤーグ」を改造し、初の空母「遼寧」を就役させました。山東は、このとき学んだ空母建造技術に基づいて独自に設計・建造した初の国産空母です。
山東は、外観は遼寧と似ていますが、甲板上の艦橋(アイランド)を大幅に縮小して戦闘機の搭載数を大幅に増やしました。また、飛行甲板の下にも艦載機を積む空間を作るなど、西側式の設計を導入しました。遼寧にはJ15戦闘機24機が載りますが、山東は36機積めるといいます。
しかし、艦首部分を高くして飛行甲板に12度ほど傾斜を付けて艦載機を発艦させる「スキージャンプ台」はそのまま残っており、空母の動力も原子力推進ではなくディーゼルエンジンを用いています。旧ソ連流のスキージャンプ方式が抱える最大の問題は、艦載機の発艦重量が大幅に落ちるということです。滑走路が短い空母で、スキージャンプ台のみを頼りに発艦させようとしたら、軽い機体でなければなりません。武装や搭載燃料を減らさなければならず、ずうたいの大きい早期警戒機や電子戦機などの搭載も困難です。
■出撃回数は米空母の6分の1
米空母はこの問題を解決するため、蒸気や電磁エネルギーを利用して時速250キロ以上に急加速するカタパルト(catapult、射出装置)を使っています。そのおかげで、南シナ海にローテーション配備される空母「ロナルド・レーガン」は、艦載機の最大発艦重量が45トンに達します。一方、山東の艦載機の最大発艦重量は28トンほどです。燃料や武装が減ると作戦半径は短くなり、戦闘力も低下します。
空母の戦闘力を測る尺度の一つ、ソーティ(sortie. 出撃回数)の面でも限界があります。山東は、グアム海域での訓練中に1日平均20回ほど戦闘機を出撃させたといいます。ニミッツの1日平均出撃回数が120回ほどなのと比べると、6分の1です。ほとんど小学生と大学生くらいのレベル差だと見ることができます。
通常動力を用いていることも問題です。山東が自艦の燃料で航行できる期間は15日ほどにすぎません。行き来に要る分の燃料を考慮すると、実際の作戦期間は7日前後です。逆に米国の原子力空母は、理論的には数年間、燃料補給なしで航行できます。
そのせいで中国の空母は、機動部隊の後方に補給艦が追随します。遼寧は昨年12月、グアム海域で訓練を行った際、補給艦から燃料補給を4回受けたといいます。
■「空母技術の発展は急速…『福建』は警戒対象」
黄曙光・元台湾軍参謀総長(退役海軍2級上将。海軍大将に相当)が面白いアイデアを出したといいます。中国の空母が作戦海域に到達する前、ミサイル高速艇などを利用して補給艦を撃沈すれば、空母の作戦能力が制限されることは避けられないといいます。山東としては、それなりに一生懸命力を誇示したのですが、弱点ばかりがあらわになった格好です。
こうしたさまざまな限界はあるものの、米国は中国の空母技術の発展スピードが速いことに緊張しています。昨年6月に進水した3隻目の空母「福建」は、米国のジェラルド・フォード級原子力空母に搭載している電磁式カタパルトを積んだといいます。まだ性能は未検証ですが、きちんと動くのであれば米軍にとって大きな脅威になりかねないといいます。米国の専門家らは、中国の空母がきちんとした作戦能力を備え、原子力空母まで開発するにはおよそ10年ほどかかるだろうとみています。
中国の軍事専門家らは、こうした格差を認めつつも、近海では中国の空母が米国に一方的にやられることはないと主張しています。陸上基地から発進する早期警戒機の支援を受けることができ、「空母キラー」ミサイルまで動員すれば、十分に米空母機動部隊をけん制する役割を果たせるのです。
崔有植(チェ・ウシク)東北アジア研究所長
チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版
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