記者と民間人に対する通信照会の乱発で「メディア査察」疑惑が持たれている高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が自分たちの批判的な記事を書いたTV朝鮮のA記者について、記者本人だけでなく、その母親ときょうだいの通信記録まで照会していたことが20日までに判明した。公捜処はこれまで「捜査対象者の通話相手を確認するための適法な手続きだ」としてきたが、記者の家族は公捜処が捜査対象としてきた検事ら司法関係者と通話し..
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記者と民間人に対する通信照会の乱発で「メディア査察」疑惑が持たれている高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が自分たちの批判的な記事を書いたTV朝鮮のA記者について、記者本人だけでなく、その母親ときょうだいの通信記録まで照会していたことが20日までに判明した。公捜処はこれまで「捜査対象者の通話相手を確認するための適法な手続きだ」としてきたが、記者の家族は公捜処が捜査対象としてきた検事ら司法関係者と通話した可能性はない。
それでも公捜処は問題の記者について、通話記録を全てチェックし、そこに登場する家族の携帯電話番号に関する情報も通信事業者に照会したことになる。通信記録を照会した場合、特定の携帯電話の契約者名、住所、住民登録番号の開示を通信事業者から受ける。司法関係者からは「公捜処に不利な記事を書いたTV朝鮮記者への報復だ」とする批判が出ている。A記者は公捜処長が公用車を差し向け、李盛潤(イ・ソンユン)ソウル中央地検長(現高検長)から特別待遇で事情聴取を行ったとされるいわゆる「皇帝事情聴取」疑惑に関する記事を書いた人物。TV朝鮮ではA記者に加え、社会部長、映像記者ら12人の記者が計29回の通信記録照会を受けた。
また、本紙に対しては、公捜処が今年7月から11月にかけ、国民の力の大統領候補、尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏を担当している政治部与党番記者、オンライン配信の政治担当記者、未来企画部記者(現社会部記者)の3人の通信記録を照会していたことも確認された。これにより、本紙で通信記録の照会を受けた記者は12人に増えた。メディア全体に範囲を広げると、これまでに15社の記者50人余りが公捜処から通信記録の照会を受けた。
本紙の取材を総合すると、公捜処捜査3部と捜査課は今年6月から8月にかけ、TV朝鮮のA記者の母親の通信記録を4回照会。7月と8月にはA記者のきょうだいの通信記録を2回照会した。社会部司法チームで裁判所を担当していたA記者は公捜処の捜査対象になったことが判明した検事と通話した事実はないとしている。ジャーナリストは公捜処の捜査対象でもない。司法関係者は「それでもA記者の家族の通信記録まで照会されたというのは、公捜処が捜査対処でもないA記者に対する令状交付を受け、通話記録を抽出した後、無差別的に通信記録を照会したことを疑わせるものだ」と指摘した。法曹界とは無関係の外交専門家も通信記録を照会されたが、その人物もA記者の「取材源」の1人だったという。
A記者は今年4月、公捜処に決定的打撃を与えた金鎮ウク(キム・ジンウク)処長による李盛潤氏に対する「皇帝事情聴取」疑惑の証拠となる監視カメラ映像を入手して報じた。そして、6月には公捜処が問題の報道の経緯をひそかに調べたとする記事も書いた。当時公捜処は「金学義(キム・ハクウィ)氏に対する違法出国禁止事件」を調べている水原地検が問題の監視カメラ映像をメディアに流出させたとみて、公務上の秘密漏えいの疑いで内偵を進め、A記者はそれを記事化した。
こうした状況からみて、A記者とその周辺に対する通信記録照会は水原地検による「公務上の秘密漏えい」に対する内偵がきっかけだったと推定され、それは8月まで10回以上続いた。しかし、水原地検は早々と「監視カメラ映像は漏えいしていない」とする立場を示し、公捜処も疑惑を立証できなかった。公捜処に対し、「報復捜査」ではないかとする批判があるのはそのためだ。
一方、新たに通信記録照会を受けていたことが判明した本紙記者3人はいずれも司法担当記者ではなかった。政治部の与党番記者は国民の力の尹錫悦候補に対する取材が担当。オンライン配信の政治担当であるB記者は検察庁に出入りしたこともない。ただ、B記者はチョ・ソンウン氏がいわゆる「告発教唆」疑惑を指摘して以降、チョ氏に関する記事4本を書いていた。未来企画部所属だったC記者は司法担当として勤務した経験はあるが、昨年12月に異動していた。
他社では公捜処が文化日報政治部の与党担当記者1人の通信記録を照会していたことが新たに判明した。法曹界では「公捜処の通信記録照会が無差別的かつ広範囲で行われたことは事実上の査察だ」とし、「その過程に違法行為がないかどうか究明する必要がある」との指摘が広がっている。しかし、公捜処は「活動は適法な手続きに従い行われたもので、個別の事案については事実確認に応じられない」とした。
これに関連し、市民団体の庶民民生対策委員会は20日、金鎮ウク公捜処長を職権乱用と職務怠慢の疑いで警察庁国家捜査本部に告発した。同委はまた、公捜処が裁判所の令状なしで通信事業者に通信記録を要求できると定めた電気通信事業法はプライバシーと自由を侵害し、令状主義に違反しており違憲だとして、憲法裁判所に憲法訴願を提出した。
チェ・ジェフン記者
キム・ドンハ記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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