▲韓国臓器組織寄贈院は先月28日、「ソウル大学病院で5歳のチョン・ソユルちゃんが心臓と左右の腎臓を臓器提供し、3人の命を救って『お空のお星様』になった」と発表した。写真=韓国臓器組織寄贈院
「うちの娘ですか? 元気で疲れ知らずの子でした。公園に行くと2-3時間遊んでいました。それに、とても明るくて素直な子でした。すれ違う子犬や猫、木にまで『こんにちは』とあいさつするような、そんな子でしたね」
5歳の娘ソユルちゃんを亡くした父親のチョン・ギソプさん(43)は2日、本紙とのインタビューでこのように淡々と話した。
韓国臓器組織寄贈院は同日、「チョン・ソユルちゃんが先月28日、臓器提供し、..
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▲韓国臓器組織寄贈院は先月28日、「ソウル大学病院で5歳のチョン・ソユルちゃんが心臓と左右の腎臓を臓器提供し、3人の命を救って『お空のお星様』になった」と発表した。写真=韓国臓器組織寄贈院
「うちの娘ですか? 元気で疲れ知らずの子でした。公園に行くと2-3時間遊んでいました。それに、とても明るくて素直な子でした。すれ違う子犬や猫、木にまで『こんにちは』とあいさつするような、そんな子でしたね」
5歳の娘ソユルちゃんを亡くした父親のチョン・ギソプさん(43)は2日、本紙とのインタビューでこのように淡々と話した。
韓国臓器組織寄贈院は同日、「チョン・ソユルちゃんが先月28日、臓器提供し、『お空のお星様』になった」と発表した。
ソユルちゃんは「天使」のようだった。ぬいぐるみを抱っこして笑う姿、ぶらんこに乗って喜ぶ姿に、両親はすべての幸せを手にしているような気持ちだったという。どの子どももそうだろうが、ソユルちゃんは両親にとって本当に大切な子どもだった。2013年に結婚したが不妊症と診断され、「子どもを産むのは難しいだろう」と言われた夫婦の間に、結婚3年目にして天からの贈り物のように自然妊娠で産まれてきたのがソユルちゃんだった。「バレリーナのようにバレエをまねて踊るのが好きで、ゆくゆくはでバレエを習わせようと言っていました」。目に入れても痛くなかったその子が3人の小児患者に心臓と左右の腎臓を提供して天国に召されたのは、2年前の事故のためだった。
「キッズカフェに連れて行き、ついていたシャワー施設で子どもにシャワーを浴びせていて、湯船に落ちたんです。意識不明になりました」。ソユルちゃんは2019年にキッズカフェでおぼれて心停止に至った。20分後に心拍は戻ってきたが、手遅れだった。脳機能は既にかなり損傷した状態だった。試練の時が訪れた。その時からソユルちゃんの闘病生活が始まった。父親のギソプさんはそれでも「ほかの子どもたちのように立ち上がって走り回るのは無理でも、ある程度でいいから回復するよう祈り続けました」と話す。しかし、鼻から管で栄養供給しても状況はさらに悪化し、胃から直接栄養供給できるようチューブをつなぐ胃ろう手術まで予定していたある日、ソユルちゃんは再び心停止に見舞われた。
「病院から『ソユルちゃんはもう持ちこたえられなさそうだ』と言って来たんです」。その時、「ソユルと一緒に過ごしていた入院中の子どもたちのことが頭に浮かびました」と父ギソプさんは言う。ソウル大学病院に入院していたが、病気の子どもがあまりにも多く、しばしば頭をよぎったそうだ。
「やっとのことで産まれてきた娘だから、その心臓を最後まで動かし続けたいと願わない父親はいないでしょう。ですが、考え方を変えて、『うちの子は長くてもあと数日しか生きられない。その代わりにほかの子どもが生きられるようにしてやれば、ソユルの心臓も動き続ける』と思ったのです。そうすれば私も娘の心臓の鼓動を感じられるような気がしました」。
そうしてギソプさんはソユルちゃんの心臓提供を決意した。実は、ギソプさん一家の試練はこれだけではなかった。ギソプさんの妻、つまりソユルちゃんの母親も今年6月に小細胞肺がんでこの世を去っていたのだ。ギソプさんは妻と娘を24時間世話し続け、つらい日々を過ごしていたという。「そうした時期を経験していたため、重度障害児などのための福祉サービスがあまりにも劣悪で、もどかしいと思いました」とギソプさんは語った。さらに、「妻の世話も子の世話もしなければならないため、仕事ができない。だから、支援が必要でしたが、そうしたサービスを教えてくれるところを探すのも、きちんとしたサービスを受けるのも難しかったです」「区庁でも政府福祉サービスのホームページでも支援が得られず、障害児関連のインターネット・コミュニティー・サイトに入り、いろいろ質問してやっと情報が得られました」「福祉の死角地帯にいる人々を助けてくれる福祉サービスがもっと増えてほしいです」とも語った。
娘ソユルちゃんの臓器提供について後悔はないという。「本当に大切にしてきた子でした。奇跡のように生まれた子どもだったし、かわいい盛りに事故が起きたじゃないですか。それでも考え方を少し変えて(臓器提供をしたから)慰めになります。今、ソユルは死んだのではないと思っています。ソユルの心臓はどこかでずっと動き続けていますから」。
金成謨(キム・ソンモ)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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