韓国政府が液化天然ガス(LNG)による発電単価を原価よりとても低く設定し、韓国電力公社の子会社に巨額の損失を負わせていることが分かった。現政権が脱原発政策による電気料金引き上げ要因を強引に隠すため、「電気料金の爆弾」を押し付けたのではないかとする批判が起きている。
野党国民の力の韓茂景(ハン・ムギョン)国会議員が韓電の子会社から提出を受け、9日に公表した資料によると、発電5社(韓国南東発電、韓国..
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韓国政府が液化天然ガス(LNG)による発電単価を原価よりとても低く設定し、韓国電力公社の子会社に巨額の損失を負わせていることが分かった。現政権が脱原発政策による電気料金引き上げ要因を強引に隠すため、「電気料金の爆弾」を押し付けたのではないかとする批判が起きている。
野党国民の力の韓茂景(ハン・ムギョン)国会議員が韓電の子会社から提出を受け、9日に公表した資料によると、発電5社(韓国南東発電、韓国南部発電、韓国東西発電、韓国中部発電、韓国西部発電)がLNG火力発電所で発電した電気の原価は2019年時点で1キロワット時当たり平均154.5ウォン(約14.5円)だったのに対し、電気を韓電に販売して受け取る代金は118.7ウォンだった。カタールや米国から輸入した天然ガスを燃料として発電するのにかかった費用よりも23%(1キロワット時当たり35.8ウォン)安く電気を販売したことになる。これにより、韓電の発電子会社5社は2017-19年の3年間にLNG発電で被った損失は総額1兆6124億ウォンに達した。
発電子会社の韓電に対する売電価格(精算単価)は政府が決定する。発電子会社は政府の費用評価委員会が決定した金額通りに韓電に電気を販売するしかない構造だ。問題は発電子会社の損失が結局は国民に電気料金として転嫁される点だ。発電子会社5社の損失は親会社である韓電の財務構造に反映され、結局は韓電の負債増加につながり、原価割れで電気を販売しようとして生じた負担は結局国民の負担となることが避けられない。
韓議員は「現政権が脱原発に固執し、原発よりも2倍割高のLNG発電を増やしながら、電気料金の引き上げを避けようとして、公企業である韓電は子会社に損失を転嫁する手口を使った」とし、「当面現政権の任期内には電気料金引き上げはないと宣伝しているが、結局は次の政権に電気料金引き上げ負担を押し付けている」と批判した。
政府が原価をはるかに下回るLNG発電単価を設定した理由は、脱原発政策に対する批判をもみ消すためだったと指摘されている。与党は2017年に脱原発政策を推進した当時、「原発をなくせば電気料金の引き上げが避けられない」とする世論の批判を抑えるために電気料金引き上げの可能性を自ら遮断した。共に民主党の金太年(キム・テニョン)政策委員会議長(現院内代表)は17年7月、「はっきり言うが、脱原発をしても、電力需給には全く問題がなく、電気料金の爆弾もない」とし、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の任期末である22年まで脱原発政策による電気料金引き上げはないと断言した。
与党の大言壮語に歩調を合わせるため、政府は韓電の発電子会社から購入する電力の単価を原価以下に抑え、電力消費量の増加予測値も市場予想より抑えた。産業通商資源部は17年12月に発表した「第8次電力需給基本計画」で原発と石炭火力発電を減らす代わりに再生可能エネルギーとLNGによる発電を大幅に拡大すると発表した。当時専門家は「原発より約2倍割高な再生可能エネルギーとLNGによる発電拡大は電気料金の引き上げに直結する」と指摘したが、政府は「電気料金の引き上げ率は30年までに9.3-10.9%にすぎない」と主張した。
当時政府は電気料金算出の具体的根拠を示さなかったが、韓議員が最近、産業通商資源部から提出を受けた資料によると、当時政府は30年時点のLNG発電単価を1キロワット時当たり111.17ウォンと算出していた。これは17年当時の発電原価である1キロワット時当たり141.6ウォンに比べ21.5%(1キロワット時当たり30.43ウォン)、19年当時の発電単価である154.5ウォンに比べ28%(1キロワット時当たり43.33ウォン)低い額だ。昨年の発電単価を当てはめると、30年度にLNG発電部分の電力購入費用は政府が算出した12兆8000億ウォンから17兆8000億ウォンへと5兆ウォンも膨らむことになる。それだけ電気料金の引き上げ要因になる格好だ。
政府は脱原発費用の爆弾を転嫁しているが、電気料金の引き上げ要因は積み上がっている。16年に12兆ウォンを超えていた韓電の営業利益は17年に4兆9532億ウォンに減少。18年には2080億ウォンの赤字に転落した。昨年は赤字幅が1兆2765ウォンに増大した。韓電の負債は16年の104兆ウォンから昨年の128兆ウォンへと24兆ウォンも増えた。
政府は電気料金を引き上げていないが、既に脱原発政策の費用を国民に転嫁しようという動きを見せているとの批判が聞かれる。政府は毎月国民が支払う電気料金から3.7%を積み立てた電力産業基盤基金で月城原子力発電所1号機の閉鎖費用など脱原発費用と韓電工科大学設立費用を支援する内容の電力事業法施行令改正を進めている。韓議員は「電力産業の発展と電力需給安定のために使うべき電力産業基盤基金を政府が脱原発政策の後始末のためにへそくりのように使っている」と批判した。
崔賢黙(チェ・ヒョンムク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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