文在寅(ムン・ジェイン)政権の外交安保政策は道を迷っており、類を見ない乱調ぶりを見せている。その結果、大韓民国は四面楚歌に追い込まれており、世界第12位の経済大国の国際的存在感は消え失せた。
高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備に対する中国の反発を鎮めるため、国民の生命と安全を守る主権国家の基本権利を制限する「3不合意」を受け入れる、という屈辱を自ら招き入れた。こうした中国の覇権的な横暴に対抗..
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文在寅(ムン・ジェイン)政権の外交安保政策は道を迷っており、類を見ない乱調ぶりを見せている。その結果、大韓民国は四面楚歌に追い込まれており、世界第12位の経済大国の国際的存在感は消え失せた。
高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備に対する中国の反発を鎮めるため、国民の生命と安全を守る主権国家の基本権利を制限する「3不合意」を受け入れる、という屈辱を自ら招き入れた。こうした中国の覇権的な横暴に対抗するために手を取り合って協力していかなければならない日本とは、名分も実利も勝算もない血みどろの戦いを繰り広げている。韓米同盟は不通と不信で根幹が揺さぶられている。3度の南北首脳会談で、国民が平和の幻想に酔いしれている間、北朝鮮は平和を破壊する能力の強化に向け取り組んできた。このような北朝鮮のために制裁を解除しようと躍起になり、南北軍事合意書で北朝鮮軍の動向に対する監視・偵察までも放棄したにもかかわらず、北朝鮮は感謝するどころか露骨な軽蔑と嘲笑で報いている。一時、20カ国・地域(G20)の首脳会議と核安全保障サミットを主催した国の国際的地位と発言権は跡形もなく消え去ってしまった。
大韓民国の外交安保がこのように没落するようになった原因は多々あるが、脅威の認識(threat perception)に対する誤りが最も大きな原因とされている。脅威の認識とは、われわれの生存と安全に対する脅威がどこからやって来るのかを「認識」することだが、これに過ちが生じると敵と同志を混同し、警戒すべき国と親しくすべき国の区別が付かなくなる。外交安保政策を決めるのは実際の脅威ではなく、脅威に対する認識だ。そのため、実存する脅威と認識する脅威の間の開きが拡大すればするほど、政策は安保の利害関係と懸け離れた場所で決定されるようになる。
韓国に対する当面の脅威は北朝鮮からやって来るが、韓半島(朝鮮半島)を飛び越えて東アジア全体に視野を広げれば、歴史的に韓国の自主独立をじゅうりんしてきた勢力は、例外なく圏内にある新興覇権国家だった。豊臣秀吉の日本が、皇太極の清が、そして明治時代の日本が朝鮮を侵略したのは、彼らが当時の覇権を掌握するためには朝鮮の支配は必須であり、朝鮮が一国でこれに対抗する力がなかったためだ。「現在の東アジアの覇権国家は中国で、21世紀中に日本が覇権を掌握する可能性はない。韓国の安保利害関係は、構造的に中国とは対立せざるを得ず、この点では日本と一致するという意味だ。
中国の勢いにおびえ、親中屈従を追求することは、明治時代に親日を選択することと「大勢便乗(bandwagon)」という点では同じだが、決定的な違いがある。一つは、朝鮮が開放と開化の道を進む上で、明治の日本からは学ぶことがあったものの、現在の中国からは見習うべきことが一つもないという点だ。もう一つは、これからは同盟という強固な保険があり、中国の覇権に脅威を感じる他の国家と手を握ることもできるという点だ。朝鮮半島に領土的な野心のない圏外強国との同盟が不可能だった時代には、圏内の覇権勢力の属国や植民地に甘んじることが避けることのできない宿命だったが、今ではわれわれにも代案がある。21世紀の親中事大主義が、前世紀の親日よりも恥辱的な理由だ。
にもかかわらず、政府の外交安保政策が反対の方向に向かって進んでいるのは、日本に対する憎悪と復讐(ふくしゅう)心が、中国の脅威を直視する能力をまひさせ、韓国の認識の中では、日本に対する警戒心の方が中国の現実的脅威よりも高い地位を占めているためだ。これは、日本の略奪が残したトラウマが依然として韓国の精神世界を支配している上、朝鮮王朝時代の衛正斥邪思想(朱子学を正統として守り、西欧や日本の侵略を排除しようとする思想)の残骸が反日感情をあおる作用を引き起こしているためだ。
結局は、歴史の亡霊が脅威に対する認識を決定するようことを放置しているのであり、これを政治的に利用しようとする誘惑から、まずは捨て去らなければならない。でなければ、過去が未来への道をふさぎ、国民情緒が国益を支配するという害悪を防ぐことができず、韓国の外交安保政策を正すことはできない。
文在寅政権の対北政策が超現実的といった批判を免れることができないのも、誤った脅威の認識に基づいているためだ。口先では非核化が重要だとしながらも、実際には非核化を阻止する政策のとりことなっている。韓国政府が平和経済という名で制裁をやめ、経済協力を再開させ、北朝鮮の経済に活気を与えるようになればなるほど、北朝鮮の核を放棄する可能性が減り、非核化を拒否するための体力を付けさせるといった単純な道理を理解できないはずがない。朝鮮半島の平和に対する脅威が北朝鮮の核武装ではなく、これを元に戻そうとする米国の「対北敵対政策」から来ているという主体思想派による脅威認識の誤りが、結局対北政策を歪曲(わいきょく)し、韓米関係を破綻に追い込む根本的な原因となっているのだ。
チョン・ヨンウ韓半島未来フォーラム理事長・元外交安保首席
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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