▲趙儀俊ワシントン特派員
北朝鮮は2015年12月、平壌へ旅行に来た米国人大学生オットー・ワームビアさんを抑留した。北朝鮮は「オットー・ワームビアはオハイオ州ワイオミングの友情連合メソジスト教会(Friendship United Methodist Church)の指示を受けて1万ドル(現在のレートで約109万円。以下同じ)をもらい、政治宣伝のポスターをはがそうとした」と、抑留の理由を明かした。
問題は、オットーさんは..
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▲趙儀俊ワシントン特派員
北朝鮮は2015年12月、平壌へ旅行に来た米国人大学生オットー・ワームビアさんを抑留した。北朝鮮は「オットー・ワームビアはオハイオ州ワイオミングの友情連合メソジスト教会(Friendship United Methodist Church)の指示を受けて1万ドル(現在のレートで約109万円。以下同じ)をもらい、政治宣伝のポスターをはがそうとした」と、抑留の理由を明かした。
問題は、オットーさんはユダヤ人の血筋で、ユダヤ教の信者だということ。当然、プロテスタントの友情連合メソジスト教会へ行くことも、指示を受けることもない。しかしワームビア家は、北朝鮮のでたらめな主張にもかかわらず、ユダヤ教の信者だという事実を対外的に公表しなかった。北朝鮮を刺激しないためだった。イスラエルのメディアなどによると、米国の交渉チームもワームビア家の選択に従い、北朝鮮を驚かせないよう、交渉でこの事実には言及しなかった。息子が抑留された状況でも感情的対応をせず、極めて冷静さを保ったのだ。
しかしオットーさんが17カ月の抑留の末、2017年6月に昏睡(こんすい)状態で解放されてからわずか1週間で亡くなると、ワームビア家はあいくちを手にした。一家は「オットーは家への旅を完全に終えた」と、淡々とした声明を出した後、マイク・ペンス副大統領を顧客にしているワシントンのある有力コンサルタント会社と契約した。ワームビア家は議会で、北朝鮮を締め上げるための本格的なロビー活動に入り、裁判所では、息子を拷問した北朝鮮に賠償責任を問う裁判を起こした。
家族のたゆまぬ努力で、北朝鮮制裁を拡大・義務化するいわゆる「オットー・ワームビア法案」が、連邦議会上下両院の合意した2020年国防授権法に反映された。この法案は、定められた数量以上の石炭、鉱物、繊維、原油、石油製品の輸出入を北朝鮮との間で行った場合、義務的に制裁を科するよう定めた。また、北朝鮮制裁の対象になった個人と取引する海外金融機関に対しては米国内の資産を凍結し、口座の開設を制限するようにした。輸出入業者だけでなく金融機関がわが身を惜しむことで、北朝鮮としては制裁回避が一段と難しくなるのは避けられない。
またワームビア家は昨年末、北朝鮮が自分たちにおよそ5億ドル(約550億円)を賠償しなければならないとする判決を米国の裁判所で受けた。もちろん、米国の判決に北朝鮮が応じる可能性は全くない。しかしワームビア家はこの判決を根拠に、全世界に隠されてる北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)の秘密資金を追跡し、差し押さえることができる。仮に北朝鮮制裁が緩和されても、ワームビア家が北朝鮮の収益金に対する訴訟を起こしたら、北朝鮮の合弁企業はつらいことになりかねない。
これまでワームビア家が行ってきた北朝鮮圧迫は、韓国歴代のいかなる政権もやってのけることができなかったレベルだ。ワームビア家の緻密さに、北朝鮮もなすすべなくやられているのだ。今やワームビア家は世界を回り、北朝鮮の金正恩政権の野蛮さを暴露している。ひょっとすると歴史は、「22歳のユダヤ人青年の不幸な死が北朝鮮民主化の呼び水となった」と記録するかもしれない。
趙儀俊(チョ・ウィジュン)ワシントン特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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