先日の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の記者会見である記者が「この政府の自信の根拠は何か」と質問し大きな話題になった。文大統領は「われわれが進む道は正しい。そのため政策を見直すことはできない」とその直前に述べたのだが、これはその発言についての質問だった。原発の廃炉や所得主導成長について「誰が何を言ってもこのまま突き進む」という一方的で傲慢(ごうまん)な自信。この意地を張ったような態度は一体どこから..
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先日の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の記者会見である記者が「この政府の自信の根拠は何か」と質問し大きな話題になった。文大統領は「われわれが進む道は正しい。そのため政策を見直すことはできない」とその直前に述べたのだが、これはその発言についての質問だった。原発の廃炉や所得主導成長について「誰が何を言ってもこのまま突き進む」という一方的で傲慢(ごうまん)な自信。この意地を張ったような態度は一体どこから出てくるのだろうか。
現政権におけるこの「どうとでも言え」という態度は実は政策面だけではない。孫恵園(ソン・ヘウォン)議員による不動産登記疑惑、キム・テウ氏とシン・ジェミン氏による現政権の不正暴露、金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道知事に対する一審の有罪判決など、政権与党の道徳性が問題視される出来事が相次いでいるが、それでも今の政府は「お前らはほえてろ、われわれは行く」という態度を変えない。自信どころか今や唯我独尊の境地だ。この一方的な態度の根拠は本当にどこから来るのだろうか。もしかすると今の政府がすでに権威主義化していることを示す兆候と言えるのではないか。
彼らは「権威主義など右側の言葉で左側にはない」とでも言いたいだろうが、とんでもない話だ。米ハーバード大学のロバート・アルテメイヤー教授は1981年に右派権威主義の指数を考案し「保守的な右派は硬直して独断的になりやすい」と主張した。ところがその後、モンタナ大学のルシアン・コンウェイ教授は同じ方法で左派権威主義指数を考案した。左派でも権威主義はいくらでも出てくるし、それは右派権威主義に劣らず硬直し独断的になりやすいというのだ。
だとすればそもそも権威主義症候群とは左右という観点とは別に一体いかなるものだろうか。ハーバード大学ケネディ行政大学院のスティーブン・ウォルト教授は2017年7月27日付のフォーリンポリシー(インターネット版)に「権威主義の台頭を示す10の兆候」を提示し、トランプ大統領の政治手法を批判した。うち七つの項目は韓国にも該当すると思うので紹介したい。
第一はメディアに対する脅迫だ。韓国における自称「進歩」もグーグルに対し「フェイクニュースを削除せよ」と要求した。最近は「中国式のサイバー検閲に向かう」との懸念も出始めている。
2番目は官僚、軍、さらには治安機関を自分たちを後押しする政治勢力とすることだ。韓国の自称「進歩」も行政権や公権力の行使にとどまらず、司法に対しても「キャンドル」政治に組み込みたいという本音をあらわにしている。金慶洙知事が法廷で拘束されると、それを命じた裁判長に対して政権与党は「梁承泰(ヤン・スンテ)前大法院長(最高裁長官)系列の裁判官」として裁判から排除するよう要求し、司法の独立どころか「キャンドルによる裁判官弾劾」などと脅迫を始めた。
3番目は無差別かつ違法な査察だ。キム・テウ氏は大統領府の何を問題と思ったのか、特別検事によるドルイドキングの捜査状況を把握しようとしたことや、全羅南道の黒山島空港建設に反対する民間委員に対して査察が行われたことなどを暴露した。運動圏(左翼学生運動)はかつて自分たちを査察し、拘束して刑務所に送り込んだ敵を克服したのではなく、今やかつての敵と同じ行動をしているのだ。
4番目は不公正な法の執行だ。キム・テウ氏は「大統領府は現政権の有力者による不正に関する報告書を黙殺し、自分たちに対しては公務上機密漏えいを適用した」と主張した。キム・テウ氏は「権力機関の不正を暴露したのであり、機密を漏えいしたわけではない」とも主張している。5番目は大法院に自分たちの側の人間を送り込むことだ。今の政府も大法院と憲法裁判所にウリ法研究会や国際人権法研究会など自分たちに近いメンバーを送り込んだ。三権分立ではなく三権総括でもしようというのだろうか。
6番目は制度を不浄な形で操ることだ。金慶洙知事の一審裁判で裁判長は「金慶洙被告はドルイドキングの共犯」と断定した。前政権の国家情報院関係者を世論操作を理由に刑務所送りにした今の政権関係者が、選挙の時からコメント書き込みソフトを使って世論操作を行っていたのだ。そのため一審の判断が正しければ、これはネロナムブル(同じ失敗をしても、自分に甘く他人に厳しいの意)の極致だ。7番目は政治的な反対者に悪魔などとレッテル貼りすることだ。運動圏は自分たちに反対する者を「反民主・反民族・反民衆・反統一・反平和・事大売国・買弁資本」などと悪魔呼ばわりし、最近はこれらを一括して「積弊」と呼んで「壊滅させる」とまで言いだしている。
「進歩」権力者たちの自信とは、要するにこれら七つの権威主義症候群に基づく「傲慢と偏見」から来るものであり、政権交代よりも長期政権、永久政権の発想とも言うべきものだ。この意欲は今後2020年の国会議員選挙で有権者が彼らに改憲ライン以上の議席を与えるかどうかに懸かってくるだろう。
そのため保守系野党・自由韓国党における今回の代表選挙は非常に重要だ。有権者の多くが運動圏への支持は撤回しているが、だからといって自由韓国党の支持に回っているわけではない。このままでは自由韓国党は改憲阻止の議席数を上回れない可能性さえある。そうなると韓国社会は権威主義どころか、その先の全体主義に突き進むだろう。この最悪のシナリオにわれわれはどう対処すべきだろうか。自由韓国党がいかに適切なリーダーシップを示せるかに注目するしかない。
柳根一(リュ・グンイル)/ジャーナリスト
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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