米国と北朝鮮は12日、板門店で6・25戦争(朝鮮戦争)で戦死した米兵の遺骨返還に向けた方法や日程などを話し合う実務協議を開催する予定だったが、北朝鮮側が姿を見せなかったため協議は行われなかった。この結果、米朝首脳会談で合意した遺骨返還問題はわずか1カ月で先送りされる見通しとなった。協議に参加しなかった北朝鮮は15日に将官級会談を開催することを改めて提案したという。
米側の代表を務める国連軍司令部..
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米国と北朝鮮は12日、板門店で6・25戦争(朝鮮戦争)で戦死した米兵の遺骨返還に向けた方法や日程などを話し合う実務協議を開催する予定だったが、北朝鮮側が姿を見せなかったため協議は行われなかった。この結果、米朝首脳会談で合意した遺骨返還問題はわずか1カ月で先送りされる見通しとなった。協議に参加しなかった北朝鮮は15日に将官級会談を開催することを改めて提案したという。
米側の代表を務める国連軍司令部の関係者5人はこの日午前10時ごろ、板門店の共同警備区域(JSA)内にある軍事停戦委員会小会議室に到着した。国連軍司令部側には北朝鮮から遺骨の返還を受ける際に使用される100個以上の棺が先月24日から準備されている。しかし北朝鮮はこの日、約束の時間に会場に姿を現さず、その後も2時まで何の連絡もなかった。国連軍司令部関係者は到着から4時間後にその場から撤収した。
米兵遺骨返還については6月12日の米朝首脳会談で米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が合意し、共同声明を通じて発表された。今月6-7日に訪朝した米国のポンペオ国務長官も「12日ごろに板門店で遺骨返還に向けた実務協議が行われるだろう」と伝え、米国もこの日は北朝鮮側が実務協議に参加すると信じていたが、北朝鮮は事前に何の連絡もないまま協議をキャンセルした形だ。シンガポールで米朝首脳会談が行われてからちょうど1カ月が過ぎたが、これまで非核化に向けた協議はもちろん、すでに約束した遺骨返還も全く進展がない。
国連軍司令部の関係者が電話をかけたところ、その時になって北朝鮮はこの問題に関する協議の格上げを求め、将官級会談の開催を改めて提案してきたという。国連軍司令部が北朝鮮から提案を受けた内容を米国防省に伝えたところ、15日に朝鮮人民軍と米軍の将校が代表として会談を行い、遺骨返還問題について協議を行う可能性が高まったようだ。朝鮮人民軍と国連軍司令部の間で将官級会談が実現すれば、2009年3月以来9年4カ月ぶりとなる。米兵遺骨返還に向けた実務協議はポンペオ国務長官が6-7日に3回目の訪朝を終えた際、記者団からの取材で明らかにした唯一の成果だった。北朝鮮側も米朝首脳会談で合意した内容のうち最も取り組みやすい遺骨の返還について、ポンペオ長官に実務協議開催に向けた話し合いを提案していたという。
北朝鮮が今回の実務協議に参加しなかった理由について、外交関係者の間では「日程の調整が行われていなかったのでは」だとか「北朝鮮がよく使う駆け引きの手口」などの見方が出ている。ある外交筋は「ポンペオ長官は7月12日を提案したが、北朝鮮が正式に回答する前に米国が公表したのでは」との見方を示した。ポンペオ長官は今月7日に実務協議の日程を公表する際「7月12日だが、1日か2日は変更されるかもしれない」と述べていた。これに対して北朝鮮は正式に日程を発表していない。
しかし「米国が日程の調整もしない状態で担当者を板門店に送ったとは考えられない」との指摘もある。北朝鮮が米国との交渉で高度の神経戦を展開しているとの見方だ。非核化交渉で米国は「完全かつ検証可能、不可逆的な核廃棄(CVID)」を要求しているが、そのハードルを下げさせるため北朝鮮は遺骨返還交渉を活用しているとも考えられる。実際に北朝鮮はポンペオ長官の訪朝直後「強盗」といった表現を使い米国を強く非難した。また米朝の非核化交渉は今後さらに難しくなるとの悲観論も根強い。交渉がさほど難しくない遺骨返還協議さえこのように複雑だとすれば、非核化に向けた交渉ではなおさら北朝鮮がそう簡単に協議に応じるとは考えられないからだ。
返還される遺骨の規模や費用について双方の主張に今も隔たりがあるとの見方もある。米兵遺骨は1990年から2005年までに334体が返還されたが、その際米国は1体当たりおよそ3万5000ドル(約400万円)を北朝鮮に支払った。そのため今回も費用全般や1回目に返還される規模などについて、双方の間でまだ合意に達していないというのが一部専門家の見方だ。米国は現時点で200体の返還を求めているが、北朝鮮はまず30-50体前後を提示したとの話も伝えられている。国連軍司令部に将官級会談を提案した理由も、返還される遺骨の規模や費用などについて北朝鮮が自分たちの主張を明確に伝えるためという見方だ。
これとは別に、北朝鮮が米朝首脳会談での合意の実行を引き続き先送りしていることに対し、米国では首脳会談の成果に対する疑念がさまざまな方面から出始めている。とりわけポンペオ長官に対しては「平壌まで行って手ぶらで帰ってきた」などの批判が強いため、今後ポンペオ長官の立場が苦しくなるとも予想されている。さらにポンペオ長官が「もうすぐ開催されるだろう」と明言した北朝鮮のミサイルエンジン試験場閉鎖に向けた実務協議についても、当初の予想よりかなり先送りされそうだ。
アン・ジュンヨン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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