「フィンランド」という国の名称に英語の接尾辞「-ization」を付けた「フィンランディゼーション」(Finlandization、フィンランド化)という言葉が国際政治用語となったのは1953年のことだ。オーストリアの外務相、カール・グルーバーは、フィンランドのような対ソ連外交を展開してはならないという意味で「フィンランディゼーション」という言葉を初めて使った。「フィンランド化」とは「大国が、隣..
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「フィンランド」という国の名称に英語の接尾辞「-ization」を付けた「フィンランディゼーション」(Finlandization、フィンランド化)という言葉が国際政治用語となったのは1953年のことだ。オーストリアの外務相、カール・グルーバーは、フィンランドのような対ソ連外交を展開してはならないという意味で「フィンランディゼーション」という言葉を初めて使った。「フィンランド化」とは「大国が、隣接する弱小国の自決権に加えるあらゆる制限」と定義される(ラルース百科事典)。フィンランドがこの屈辱的な用語の主人公になったのは、第2次世界大戦のときに2度戦ったソ連と1948年に友好協力相互援助条約を締結し「親ソ中立路線」を歩んだからだ。西側諸国はこれを「強制された中立」と批判したが、フィンランドの首相は何度もモスクワのクレムリンを訪れてウォッカを飲み、ソ連の指導者と懸案事項について協議した。
遠い国の話のように思える「フィンランド化」が今、韓国でも取り上げられるようになっている。韓国の小説家、卜鉅一(ポク・コイル)氏は2009年の著書『韓半島(朝鮮半島)に垂れ込める中国の影』の中で、中国による韓国のフィンランド化について警告した。卜氏は「中国が韓国経済の重要なパートナーとなり、韓国の各企業は中国の機嫌を伺うようになった。これは韓国政府の外交・軍事政策にも影響を及ぼす」として「韓国が米国と中国の間で等距離外交を展開するならば、米国が同盟関係を続けるか疑問であり、韓国のフィンランド化の可能性は高まる」と指摘した。一方、延世大の文正仁(ムン・ジョンイン)教授は2年前「(中国の台頭という)北東アジアの秩序の変化が必ず『韓半島のフィンランド化』を招く、という不吉な確信にとらわれる必要はない」と述べた。
「韓国のフィンランド化」が起きるか起きないかを予測することはあまり意味がない。それよりも、フィンランドのケースからどのような教訓を得て、隷属化を防ぐために何をすべきか悟ることの方が重要だ。人口548万人のフィンランドは、人口規模26倍のロシア、15倍のドイツ、1.8倍のスウェーデンに囲まれている。中国・日本・ロシアという大国に囲まれた韓国と似ているのだ。フィンランドはソ連との貿易協定によってソビエト連邦という巨大な市場を手にしたが、対ソ貿易の割合は25-30%に達し、依存度が高い分モスクワからの圧力に弱かった。韓国も同様に対中輸出依存度が31%(香港を含む)に達し、フィンランドと状況が似ている。中国が弱いカードを切っただけでも韓国経済はぐらついてしまうのだ。
さらに、危機を克服する力という面では、韓国の国民がフィンランドより優っているとは言い難い。フィンランド人は終戦後、紙と木で作った靴で寒さをしのぎ、小麦粉に木くずを混ぜたパンを食べ、国民が一丸となって3億ドルの戦後賠償金をソ連に支払った。フィンランドの指導者たちは1975年、米ソなど35か国によって設立された全欧安全保障協力会議で「ヘルシンキ宣言」を導き出すなど、東西の懸け橋として外交力を発揮した。このようなフィンランドに比べ、北朝鮮の核問題や、在韓米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備をめぐって分裂・摩擦を繰り広げる韓国の姿は恥ずかしいとしか言いようがない。
「韓国のフィンランド化」を防ぐために、まずは中国との経済協力を続けながらも、高すぎる貿易依存度を引き下げなければならない。日本はインドや東南アジアに投資先をシフトし、リスクを軽減している。(中国への依存度を引き下げれば)北朝鮮の核問題やTHAAD問題でも、韓国の政界が意見を集約する際に中国がやたらと口を挟むこともできなくなり、韓国の国際的な発言権も強くなる。アジアで弱小国が大国の属国に転落すれば、世界の人々はその国の名前で新しい言葉を作るかもしれない。「コリア」がそのような笑いものになってはならない。
池海範(チ・ヘボム)北東アジア研究所長
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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